ピッチャーになりたい僕とピッチャーをやりたくない君のお話

樹原 光

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1章 そこに立つ者は輝いて見える。

なんかおかしい。

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 なんか最近おかしい、何がって、自分が。

 学祭の時の試合を見て以来、自分の中の何かがおかしい。
 
 この前の利奈と学校で勉強してからの帰り、梅宮くんと北野くんと駅で遭遇した。利奈と男子2人はなんかいろいろ話していたけど、うまく話に入ることはできなかった。
 ここまでなら以前の私と同じなんだが、利奈と特に梅宮くんが話しているのを見るとなんだかモヤモヤする。
 電車がくると、当然梅宮くんと利奈は方向が一緒なので2人でその電車に乗り帰っていく。その姿を見てもなんだか嫌な気分になる。

 2人が帰っていくと、当然私と北野くんが取り残される。私に人並みのコミュ力があれば、普通に2人で話したりできるのだろうけど、何を話していいかわからず、沈黙が怖くてとりあえずイヤホンを耳にさす。すると北野くんも離れていく。
 こういうのもなんか感じ悪いと思われているのだろうか?
 

 「上野~~、う、え、の~~~!」

 「あ、はい、、、すいません。」

 「大丈夫か~?期末終わったからって気を抜くなよ?」


 うーん、なんだろうやっぱ変だ。

 「上野さん?大丈夫?なんか授業中上の空って感じだったけど、、」

 「あ、は、、はい、だ、大丈夫です。」
 後ろの席の梅宮くんから声をかけられると、どうしても変に意識してしまって上手く話せない。
 もともと人と話すのは苦手だけどこんなになるのは初めてで、どうしたらいいかわからない。

 「そう?なら良かった。」
 普段クラスでは私と同じように、目立ちもしないし、表情もあんまり変えない。なのに私にはなんだか少し微笑みながら声をかけてくれる。こんな私に。
 だけど上手く話せない。だからいつも逃げるように利奈のいるところに向かう。

 


 「はい!帰りのホームルームはじめまーす!」
 ソフト部の顧問であり、担任の伊藤先生のかけ声でみんな静かになる。

 「それで最初にお知らせだけど、7月の第二土曜日に野球部の大会があります。うちの高校ではそれを毎年1年生は学年行事として応援に行きます。まぁココ大事なところで、学年行事だからね、特別な理由のない限りは参加は強制となりますので、野球に興味なかったりする人もいるかもしれないけど、いつも遅くまで頑張ってる野球部のかっこいい姿を見に行きましょう。」
 
「あ、ちなみに我がクラスの梅宮くんと北野くんは何か言っておきたいことある?特に梅宮くんはなんか噂によると出場しそうな感じらしいけどどう?」

「いえ、、、あのぉ、チャンスがあれば頑張りたいです、、。」
 実に梅宮くんらしい。

「先輩達みんなかっこいいので、応援よろしくお願いします!!」
 北野くんがいい感じにフォローした。クラスではこんな感じで北野くんの方が目立っている。けれどいざグラウンドに立つと、
 ショートのポジションに立つと、
 梅宮くんは別人かと思うくらい輝く。
 少なくともあの試合では輝いていた。
(もう一度みたい、、、)

 

 部活の練習中に、早く1回戦の日にならないかとおもってしまっている。
 やっぱり今の私はおかしい。
 

「ねーねー、上野さんて誕生日いつなの?」
 利奈が梅宮くんと話していると、そこに北野くんもやってきて、突然質問された。

「え!?えっと8月20日ですけど、、、」
 突然の質問に少し返答も緊張してしまった。

「夏休み中か~、そっちも夏休みは結構部活あるんでしょ?」

「え、あの、、、、」
「多分それなりにはあると思うけど、野球部ほどじゃないと思うよ(笑)」

 口籠ってると、利奈が答えてくれた。

「それじゃあ、夏休み中に部活とかで一緒になったらなんかプレゼントあげるよ!」

「え、いやいいよ、忙しいだろうし、、、」
 なんとなく梅宮くんの方をうかがって見る。

「あーそんなに気にしなくていいよ。こいつこーやっていろんな人になんかあげて、自分の誕生日にお返しをもらうって考えだから。」

「あーなんでそういうこと言っちゃうかなー(笑)」




 部活の帰り道、この季節は夕暮れ時になってもまだまだ暑い。

「北野くんて、いい人だよね。」
ふと思っていることを口にしてしまった。

「どうしたのりっちゃん!?ああいうのがいいの?」
 利奈は驚いたような、嬉しいような表情をして、聞き返してきた。

「いやそういうのじゃなくてね、、、テスト期間の時とか、利奈と梅宮くんが一緒に帰っちゃった後、私と北野くんが2人で残ってたでしょ?その状況になるとね、私何話していいかわからなくなって、いつもすぐイヤホン耳につけちゃうの。そうすると北野くんは遠い方のベンチに行くんだけど、、、絶対嫌われたと思ってたけど、今日とかあんな感じで話しかけてくれるじゃん?だからいい人だなぁ~と思ってただけ。」

「なるほどね~、でも案外ああいうのがりっちゃんには合うのかもしれないよ?(笑)」

「だから、そういうのじゃないって、、、」

「じゃあさ、大ちゃんと北野くんだったらどっちが良いの?」

 突然かなり真剣な顔でそんな質問を言われ、なんで答えるのがいいのかわからなくなり、少し黙ってしまった。

「冗談、ジョーダン!今のは忘れていいよ。りっちゃんにはハードルが高い質問だったね。」
 利奈は表情がころっと変わり、焦るように訂正した。

 この質問にどんな気持ちがこもっているのか、私は全く理解できていなかった。
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