30 / 44
28話 七七
しおりを挟む「さて、クエストも終わったし、カリンの歓迎会でも兼ねてどっか食事でもする?」
ゴブリン討伐の完了をギルドに報告し、報酬を受け取るなりエマがそう提案する。
ちなみに『悪餓鬼』の連中はギルドに報告し、連行されていった。
彼らにはギルドからペナルティが課せられるようだ。
元々悪評が広まっていた上、今回の僕たちへの襲撃は完全にギルドの規律違反だもんね。
良くて冒険者ランクの降格や謹慎処分。
最悪、冒険者の資格が剥奪される可能性もあるだろう。
「ありがとう、エマ。……ただ、私は欠席させてくれないか?」
「ええー、なんでよ!? カリンの歓迎会なんだから主役がいなきゃ始まらないじゃない!」
「その……参加できない理由なんだが……金がないんだ」
「「えっ!?」」
金がないって……ついさっきクエスト報酬を受け取ったばかりじゃないか。
今回のクエストはEランククエストだけど、その中では報酬はいい方だ。
少なくとも今日の飲食代を心配するほどの金額じゃない。
ちなみに僕たち『灰狼』の報酬は自身がクエストの攻略に貢献したかは関係なく、経費を差し引いた金額を等分している。
もちろん今回の報酬もきっちり三等分してカリンに渡した。
『紅蓮の不死鳥』時代は何やかんや理由をつけられて報酬をピンハネされていたから、それに比べると信じられないくらいの高待遇だ。
ポーションとかも僕が自費で買っていたから、手取りだけなら今の方がいいかもしれないな。
「金が無いって……今受け取ったじゃない」
エマも僕と同じ疑問を抱いたようだ。
ちなみに今回の報酬を三等分すると、一人当たり金貨一枚と銀貨五枚になった。
「そうなんだが……この金は借金返済に充てないといけないんだ……」
「借金!?」
カリンに金遣いが荒いイメージがないから、借金があるのに驚いてしまった。
でもカリンはBランクのパーティーに所属していたくらいだし、僕みたいに報酬をピンハネされてなきゃそれなりの貯蓄はありそうだけど……。
「実は昨日暴れてしまった酒場の店主に、店の修繕費を払わないといけないんだ……」
……ああ、なるほどね。
確かに昨日のカリンの暴れっぷりは凄く、酒場の店内はほぼ壊滅状態になっていた。
その修繕費ってことは結構な額を請求されていそうだ。
それに、カリンがパーティーを組まずに、ソロでもいいからクエストに行きたがっていた理由も納得した。
借金があるなら、すぐにクエストに出て、少しでも稼いで返済に充てていきたいよね……。
「……そっか。……ねぇ、ノロワ、今日はアタシ達でカリンの分出してあげない?」
「うん、オーケー。カリンの歓迎会なんだしそれくらい僕たちで出そう」
親睦を深めるって意味でもカリンの歓迎会はやりたいしね。
「いや、パーティーに入れてもらっただけで充分なのに、そこまでしてもらう訳には……」
「遠慮しないでよ! アタシ達がカリンの歓迎会をしたいのよ!!」
「そうだよ。それに明日からのクエストや戦闘の作戦や陣形についても話し合いたいし、カリンが来てくれなきゃ困るよ」
「そう……か。それならお言葉に甘えさせてもらおう。……ありがとう」
「「どういたしまして!!」」
こうしてカリンが加わった新生『灰狼』で食事を行くことになった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
僕たちはギルドからはそこそこ近い酒場でカリンの歓迎会を兼ねた食事をしていた。
テーブルには八割方食べ終わった料理が並んでいる。
僕とカリンは麦酒。
エマは甘めのカクテルを飲んでいる。
歓迎会を始めてから1時間くらいが経っただろうか。
エマはほろ酔いになり少し顔が赤らんできた。
対してカリンの方は顔色が全く変わってないし、飲むペースも一向に下がらない。
……既にジョッキを九杯分は飲んでるだろうか?
「……カリン、大丈夫? あんまり飲みすぎないでね」
昨日の酒場のようにカリンが暴れて、もし、ここを破壊したら大変なことになる。
弁償のせいで借金が二倍になったら笑えないよね……。
「ああ、心配しないでくれ。麦酒くらいなら私にとって水みたいなものだ。何杯飲んでも大して酔わないよ」
そう言いながら十杯目のグラスを空ける。
か、かっけぇ……。
でも、麦酒のアルコール度数は5パーセントくらいはあったはずだよね?
そんなお酒をこんなペースで飲んでもほとんど酔わないなんて、本当にお酒に強いんだな。
「でも、今日の『悪餓鬼』との戦闘じゃすぐに酔ってたじゃない? あれ、何を飲んでたの?」
そういえばそうだった。
エマの言う通り、あの時はカリンが飲酒したらすぐに酔いが回っていた。
……どれだけ強い酒を飲んでたんだろう?
「あれはラッキーセブンってお酒だ。私はそれをストレートで飲んでいた」
「っ……ごふっ!? ラ、ラッキーセブンなんて飲んでたの!?」
思わず口にしてた麦酒でむせてしまった。
戦闘の前になんてもの飲んでるんだ、この子……。
「ラッキーセブンってそんなに有名なお酒なの? こういう酒場のメニューで見た事ないけど……」
どうやらエマは知らないらしい。
それにエマの言う通り、ラッキーセブンなんてメニューに載せてる店はごく少数だろう。
「ラッキーセブンってのは蒸留酒の一種で、名前の通りアルコール度数が77パーセントもあるお酒だよ」
「な、77パーセント!?」
エマが驚きの声を上げる。
うん、そうなるよね。
本来ラッキーセブンはストレートで飲むお酒じゃなくて、果汁や氷で多めに割るお酒だ。
「意外と飲みやすくて美味しいぞ。今度飲んでみるか?」
「飲まないよ!」
「飲まないわよ!」
アルコール度数が77パーセントもあったらそれは飲料ではなく、燃料に近い何かです!
多分アルコールの味しかしないし……。
お酒に強いからって、そんな度数の強いお酒を一気飲みしてあんなに暴れたら、そりゃ酔い潰れもするよ。
「そうか……残念だ」
カリンが残念そうな顔をする。
……本気でお薦めしてたのか。
「でも、ラッキーセブンは美味しいけど最近体が慣れてきたのか少し酔いにくくなっている気がするんだ。……そろそろ、もっと強い酒を飲んだ方がいいだろうか」
もっと強い酒って……、いくらバッカス流剣術を使うためとはいえ、そんなのものを飲み続けていたらカリンの内臓はボロボロになって早死にしてしまう。
「「絶対にやめなさい!!」」
僕とエマが声をそろえてカリンを止める。
どうやらエマも同じ考えだったらしい。
「「「……ぷっ……、あははははは」」」
それがなんだかおかしくて、三人でつい笑い合ってしまった。
……ああ、なんて良い夜なんだろう。
信頼できる仲間たちとこうしてなんて事ない雑談を交わす。
こんな当たり前の事が当たり前にできることが何より楽しいなぁ。
エマとカリンと仲間になれて本当によかった。
こんな幸せな時間がずっと続けば良いのに……。
そう願いながら、僕はまだグラスに残っているお酒を飲み干した。
20
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。
絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。
一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。
無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる