テクノブレイクで死んだおっさん、死後の世界で勇者になる

伊藤すくす

文字の大きさ
34 / 86
第五章: アイスブレーカー

第二話

しおりを挟む
今俺は、好きな女(そして神さま一名)の裸を覗こうとしている。だが、誤解はしないで欲しい。たまたまこうなっただけで、ワザとではない。と言いたい所だが、このチャンスを逃す訳にはいかない。そう、一人の男として。

今は二人の後ろ姿しか見えねえ。それに湯けむりが邪魔でちゃんと見えないな。

「カンナ、ナイスバデー」
アナがグーサインをしているのが見えた。そんなにナイスバデーなのか、カンナは。そのナイスバデーを早く拝みてえぜ。と、俺はダメだな。死んでもこのオッサンな性格が直らない。だからテクノブレイクなんかで死ぬんだ。

「もう、恥ずかしいよアナちゃん!」
いいぞ、アナ。もっとカンナを恥ずかしがらせるんだ!そして、恥ずかしがってる声もいいぞ、カンナ!

はっ!俺は我に帰った。ついつい前のめりになってしまってた。覗くなら落ち着かなければ。じゃないと鼻息でバレるかもしれない。というか、今の俺、完全に変質者だな。

「アナちゃんは大きくなったりしないの?」
そんなことはどうでもいい。俺が知りたいのはそんなことじゃない。でも気になるかもしれない。神さまも成長するんだろうか?

「うーん、多分ならないと思う。だって私、生まれた時からこの姿だもん」
そうだったのか。ってことは、アナも天使と似てるんだな。天使も神に創られたときの姿から成長しないらしいからな。

「でも私、カンナみたいなナイスバデーに憧れるなあ」
俺も憧れるぜ。見る方だがな。

「そんなに大したことないよ」
何という謙遜の言葉。そう言う人は大抵大きい。何が大きいかはあえて言わないが。

さてと、会話を聞くのはこれくらいにして。そろそろ本番に行くとするか。塀の隙間から覗き、目を見開いた。湯けむりも丁度いいくらいに無くなって来ている。これならいける。これなら見えるぞ!

だが見えたのは風呂に浸かっている二人だった。それに水の色は乳白色だった。何でだ、アーロン。何で濁り湯にしたんだ!これじゃ見えるのは肩より上だけじゃねえか!

と思っていた矢先、カンナが動いた。

「ちょっと暑くなって来ちゃった」
こっちも暑くなって参りましたー!俺は自分の中で実況を始めた。ちゃぽん、と言う音と共にカンナが風呂から出た。

「やはりくだらない事をしていたか」
え!?振り向くと、そこには腕を組んでこっちを睨んでいるノアが居た。

「あれ、ノア様じゃないですか。ど、どうかなさいましたか?」
「変態の声が聞こえたから来ただけだ。アーロンが呼んでる。早く戻るぞ」

え?え?今からいい所なのに!

「黙れ」
ガチトーンで言われ、俺は渋々戻った。あんなトーンで神さまに言われたら、言うことを聞かない訳にはいかない。もし逆らったら、きっと殺されるだろう。

はあーあ、見たかったなあ。

「黙れ」
はーい。このテレパシーも便利に思えて来たぞ。

「それに聞けばいいんじゃないか?」
どう言うことだよ。何の話してんだ?

「裸を見せろと」
はあ!?何だよ。じゃあカンナに直接、『裸見せてください』って頼めって言うのか?本当に神さまは常識知らずだな。

「覗いてたのは、どこのどいつだ」
はい、すみません、僕が常識知らずでした。どうか皆んなには内緒にしてください。ついでに、僕の死因も内緒でお願いします、ノア様。

「後で肩を揉め」
かしこまりました、ノア様。

戻ると、アーロンがエプロンを着けて夕飯を作っていた。あれ?俺たち腹減らないはずなのに、何で作ってんだ?

「おかえり、ハジメ君。散歩はどうだった?」
「微妙だった。邪魔が入ったからな」

ノアの肘鉄を食らった俺だったが、何とか文章を終わらせることが出来た。ノアは、俺が発言する前に何を言おうとしてるか分かるからな。

「それより何で飯を作ってんだ?俺たち食べなくても良かったよな」
「うん、でも折角だしね。それに美味しい物は美味しいと感じるからね。エレメントの回復も兼ねて、皆んなで食べよう」

変な思い出し方だが、アーロンを見ていると俺の母さんを思い出す。夕飯が何か気になってキッチンに行って、つまみ食いして怒られたっけな。ってアーロンは男だったな。でも本当にオカンみたいな奴だな、コイツは。

「ふう、お風呂お先です」
カンナとアナが戻って来た。ブホッ。二人共パジャマ姿じゃないですか。それに上下おそろの本格的なパジャマじゃないですか。

メチャクチャ似合ってる。何か修学旅行に来てるみたいだな。

「そ、そのパジャマ似合ってるじゃねえか」
「そ、そう?あ、ありがと」
「アーロンが用意してくれたんだー」

アーロン、グッジョブ!でもこれでアーロンのオカン度がまた上がったな。女と話すとき照れるのに、こう言う事はしっかりするんだな。気が利くとは、こう言うことのことを言うんだろうな。

「はい、ご飯が出来たよ」
今日の献立は肉じゃがと焼き魚、そして貝の味噌汁に白飯。アーロンって日本人だったのか‥‥‥

この世界に来てから腹も減らないし、何も食ってないが、アーロンの料理を見ると何か腹が減って来た気がしてきた。

「いただきます」
皆んなで言い、飯を食べ始めた。すごいな。正におふくろの味って感じだ。そして味噌汁も貝の出汁が出てて美味い。

「今すぐ軍を辞めて料理屋をするべきだと思うぞ」
「そこまで褒められると、照れちゃうなあ」
「私もそう思います!」
「私もー。肉じゃが美味しいー」
「うん。とても美味しい」
「そ、そうかな?料理屋しちゃおっかな?」

アーロンの女性に対する人見知りも、少しずつだが良くなってる気がする。談笑しながら飯を食べ、俺たちは風呂に入って、寝る時間になった。

アーロンとノアと俺とで川の字になって寝てたが、どうにも寝付けなかった。

この世界に来てから暫く経つが、軍に無理矢理入れられて、どうなるのか心配だった。でも今日みたいに楽しいこともあると分かり、少しずつだが俺も変われてる様な気がする。

最初は毎日戦って休暇なんかないと思っていたが、信頼出来る仲間も増えて、今はここに来て、軍に入って良かったと思えるようになった。

やっぱ寝る前に考え事をするもんじゃねえな。全く寝れない。ちょっと外の空気にでも当たって来るかな。

あっそう言えば、アーロン自慢の露天風呂があったじゃねえか。誰もいない露天風呂とか最高じゃねえか。温くなってても、エレメントで温め直せばいいな。よし、入ろっと。

俺は衣服を脱ぎ、風呂場に行った。あれ?まだ湯けむりが出てるな。結構持つんだな。そう思い、ジャポーンと入った瞬間、声がした。

「誰?」
幽霊か!?ってここが死後の世界じゃねえか。湯けむりで見えなかったが、確かにそこには人影があった。

「ハジメだけど?」
「え。え?ええええええ!何やってんのよアンタ!!!」

ええええええ!そこに居たのはカンナだった。何このラッキースケベ。でもカンナはタオルを巻いていた。チェッ。いやいや、チェッじゃない。俺も隠さないとヤバイ。俺は瞬時にエレメントで白濁のタオルを作り、大事な所を隠した。今以上にクラフティングが便利だと思ったことはない。

「ご、ごめんな。誰も入ってると思わなくて。すぐ出るわ。また出たら教えてくれよ」
俺が出ようとした瞬間、カンナは俺の腕を掴み、小声でこう言った。

「いいわよ‥‥‥」
へ?今何て?

「一緒に入っていいわよって言ってるの!」
うそん。夢じゃないよな、これ。

「もう入ってるし、それに今出たら風邪引いちゃうでしょ」
良いのか、これは。俺はこのまま入ってて良いんですか!ヤバイ。覗きをしてたのがアホくさくなって来た。それにこんな展開、想像もしてなかったぞ。

「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」
「でもこっち見えないでよね!」
「ああ、見ないよ、お前の身体なんて」

ダアアアア。俺は何を言ってんだ!見たいに決まってるだろ!そうさ、舐め回すように見たいさ!でも恥ずかしさと気まずさが混ざって、変なことを言っちまった。あれ?俺もツンデレみたいになってない?

「ハジメも寝れなかったの?」
「あ、ああ。ちょっと考え事をな」
「ふーん」

何この沈黙。気まずさマックスなんだけど。何か話さないと。

「そっちは何で寝れなかったんだ?」
「うん?ちょっとね」
「アニマンデスのことか?」
「う、うん。私、何の役にも立たなかったな、って思って」

そんなことを思ってたのか。

「心配すんな。それに、俺たちを育てるためにアルバッドが小隊を組んだんだろ?だから、まだまだこれからだろ」
「うん。ありがと、ハジメ‥‥‥」

ヤバイ。カンナの目がとろんってとろけてる。どういう表情なんだ、それは。そんな顔してこっち見るな!風呂の暑さじゃなくて、違う意味で暑くなっちまうだろ!

「お、俺もうでるわ!」
出てしまった。もう少し一緒に居たかったな。でも、カンナと話せて良かった。人生初のラッキースケベも体験出来たしな。

その後、俺は爆睡した。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

湖畔の賢者

そらまめ
ファンタジー
 秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。  ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。  彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。 「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」  そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。  楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。  目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。  そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

処理中です...