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第六章: メトロポリタン・ラブストーリー
第一話
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ん‥‥‥
眩しいな。どこだここは。ああ、そう言えば、ゴンゾウと一騎打ちして気を失ったんだっけな。じゃあここは病院か?その割には騒がしいな。遠くではしゃぎ声が聞こえるし、何だか自然の光を感じる。まるで外にいるみたいだ。それに、頭に感じる柔らかい感触が、また不思議な感じだ。
「あっ、目が覚めた‥‥‥?」
誰かが俺の顔を覗き込んでいる。しかも相手の顔が逆さまに見える。少しぼやけて見えたが、目が慣れてきて段々はっきりと見えるようになった。
そこにあったのは、いつもの慣れ親しんだカンナの顔だった。
何だ、ただのカンナか。うん!?何でカンナの顔がこんな近くにあるんだ!?しかも逆さまに俺の顔を見てる。それにこの感触‥‥‥
恐る恐る、手を頭の下にあった物の所まで持って行った。そして確認するようにそれを触った。
もみもみ。何だこれ。すべすべしてて、メチャクチャ気持ちいい。
「ちょ、ちょっと、くすぐったいわよ‥‥‥」
アッッッ。開いた口が塞がらない。このモチモチですべすべの弾力のある物は、カンナの太ももだ。というか、何だこの状況。俺の頭がカンナの太ももの上にあると言うことは、膝枕して貰ってるってことだよな。
どうやったら、こんなシチュエーションになるんだ!?前の露店風呂と言い、ラッキースケベが多過ぎるだろ!こんなんじゃ、俺の身が持たねえよ!!!
「顔赤くなってるわよ、大丈夫?」
「だ、大丈夫じゃねえよ!」
俺はバッと起き、正面からカンナを見た。
「な‥‥‥なに?」
今度はカンナの顔が赤くなった。今二人を見た人には、きっと俺たちがカップルに見えるだろう。でも実際には、俺は軽くパニックを起こしていた。そりゃ気絶して起きたら、好きな女の膝枕で寝てたとか、ご褒美なのと同時にパニックにもなるわ。
「な、な、な、何でこんなことに!?」
「あー、えーっとね」とカンナは頭を掻きながら言った。照れているのはこっちにも伝わって来て、それがまた俺の照れ度を倍増させる。
「一騎打ちに勝った後、ハジメが倒れたのね。まあ、疲れて寝ちゃってただけみたいで良かったんだけどね。それで、アーロンさんがハジメを担いでここまで来たの。今は皆んな休憩中だよ」
そう言うことか、さっきのはしゃぎ声は。きっとアナがはしゃいでる声が聞こえたんだろう。でもそれじゃ、膝枕する理由にはならん!
「‥‥‥膝枕は?」
カンナはシャツを伸ばし、隠せる訳もないのに自分の脚を隠そうとした。
「こ、これはね!違うの!私がこの木で休んでたら、ハジメを見ててくれって言って来たの。そこまでは良かったんだけど、その後アナちゃんが来て、ハジメを膝枕してって強制的にやらされたの!そ、それに、あまりにも気持ち良さそうに寝てたから、起こすのも悪いかなと思って‥‥‥」
何だ、そう言うことだったのか。っじゃねえよ!
流石の俺でも恥ずかしいわ!でも、グッジョブだアナ。
「あれ?もう起きちゃったのー?」
アナが小走りで来た。その後ろには、ゆっくりだがヴァンが来ていた。
「お前なあ、変な気を使うなよ。でも、グッジョブだ」
俺はカンナに聞かれないように、アナに言い、二人でグーサインをした。そして、やっとアナに追いついたヴァンを見た。少し緊張してるみたいだな。まあ、村であんなことがあったんだから、当たり前っちゃ当たり前か。どうにか馴染んで貰いたいな。
「なあ、ヴァン。調子はどうだ?」
「ねえ、ハジメ、聞いて聞いて。ヴァンね能力をコントロール出来るようになったんだよ!これもお姉ちゃんである私のおかげだね!」
ちょっと、ヴァンに話してんだけど。お姉ちゃんになって嬉しいのは分かるが、はしゃぎ過ぎだ。でも、ヴァンが能力を制御出来るようになったのは、本人の力もあるだろうけど、アナやノアの協力も必要不可欠だったのは事実だろう。
何だかんだ言って、コイツら良い兄弟じゃねえか。
「これからよろしくな、ヴァン」
「は、はい。よろしくお願いします、ハジメさん」
モジモジしながら言ってるのが、まだ不慣れな感じだな。
「ハジメでいいぜ。ほら、そんなに固くならないで、リラックスして行こうぜ」
そう言いヴァンの肩を揉んだら、さっきより固まってしまった。あれ、これでフレンドリーな感じになれると思ったんだけどな。
「ハジメって、こう言うの下手くそだよね」
アナが茶々を入れてくる。
「カンナのこともそうだしねー」
その追加の茶々は余計だ!35才のオッサンに、何を求めてんだアナは。そんなコミュ力があったら、テクノブレイクなんかで死んでないっつーの。
「おっ。怪我の調子はどうだい、ハジメ君」
アーロンとノアも戻って来た。これで全員集合か。皆んなと一緒なのもいいんだけど、もうちょっとカンナと二人きりで居たかったな。
「ほお?そんなに二人がいいなら、良い情報を教えてやろう。アーロン」
ノアに心の声を聞かれるのに慣れて来たが、何の話をしてるんだ?ノアに呼ばれたアーロンが話し始めた。
「えー、さっき兄さんに電話をしたんだけど、二つのメッセージを受けました」
何でちょっと畏まってんだ?真面目な話をしようとしているんだろうか?
「神の子の保護、ご苦労。ハジメも強くなったな。引き続き神の子の保護に当たって貰いたいのだが、聞いた話では次の神の子はサウスエンドに居るらしい。なので、これからは潜入任務となるが、連続で任務を与える訳にもいかない。皆んな疲れていることだろう。なので、三日間休暇を与えることにした。以上!」
アルバッドの伝言をそのまま読んだアーロンだったが、その内容を聞いた俺はポカーンとしていた。ゴンゾウとの一騎打ちで疲れてるのは確かだが、休んでる暇なんて無いんじゃないのか?休暇中に、サウス軍に先を越される可能性だってある。
考えていた俺の側にアーロンが来た。目を合わせられ、ジーッと見つめられた。
「ハジメ君が考えていることは、大体想像がつくよ。休んでる場合じゃないだろって事だろう?でもね、休むことも立派な仕事さ。だって、今の状態でサウス軍と戦っても、十中八九負けちゃうよ。だったら、休んで万全の状態で挑みたいでしょう?」
あー、何でこうアーロンは母さんっぽいことを言うんだ。とてつもない母性を感じるぞ。でも言ってることは間違ってない。今の俺は正直言って皆んなの足手まといになる。それに数日休むだけなら問題ないだろう。
「で、どこで休むんだ?外で三日間休む訳じゃないだろ?」
その問いを聞き、アーロンとアナが何やらニヤニヤし始めた。そして二人は、俺に顔を近付け、「気になる?」と聞いて来た。
「そりゃ、まあ」
素っ気ない返事だったが、二人は満足したみたいだった。
「今回はここに行きまーす!」
アーロンとアナが声を合わせて行った。アナは分かるが、アーロンがこう言うことをすると、色々誤解を招くと思うんだが。
アーロンの事に集中し過ぎていて、二人が手に持っていたポスターを見ることを忘れていた。何て書いてんだ?
「メトロポリス‥‥‥?」
「はいー!」これもまた二人同時に言った。でも、何でこんなにはしゃいでるんだ?
ポスターには都会の街の写真が載っていた。ただのビル群に見えるが、観光地として有名なんだろうか?
「ここって有名なのか?」
「知らないの!?」
そうアナが言ったが、逆に何でお前が知ってるんだよ、とツッコミを入れたくなった。やっぱ女子だから流行とかには敏感なんだろうか?
「メトロポリスはね、サウス地方にある、ノースエンド最大の都市なんだ。ポスターの表紙にはビルしか写ってないけど、裏には他にもたくさん載ってるよ。ほら!」
本当だ。ポスターの裏側には、メトロポリスでおすすめの観光スポットが記載されていた。噴水広場、ショッピング街、博物館、カフェなどが紹介されていた。
「へえー、楽しそうだな」
「でしょ、でしょ」と言うアーロンとアナを無視し、俺はヴァンの方を見た。分かりにくいが、ヴァンも興味を持ってるみたいだ。これで少しでも元気を取り戻してくれたら、いいな。
「よし!じゃあ皆んなで行くか!」
「え?」
その反応は何だよ。皆んなでワイワイ楽しんで行こうって言ってんのによ。もしかして、声が小さかったか?
「よっしゃ!皆んなで行くか!!!」
どうだ。今の俺に出せる最大音量、テンションMAX状態で言ってみたぞ。
俺のテンションとは裏腹に、アーロンとアナ、いや、カンナとヴァン以外の皆んなが俺を白い目で見てきた。カンナに至っては、少し悲しそうに見える。一体どうなってんだ、これは。
「それはないよ、ハジメ君」
「流石だな」
「鈍チン」
え?俺、何か悪いこと言いました?あんまりだろ、この言われようは。
「何なんだ、お前らは!皆んなで楽しむんじゃねえのかよ!」
「皆んなで楽しむよ?でも、『それぞれ楽しむ』ね」
どういうこと?ちゃんと説明してくれよ、アナちゃん。俺のキョトンとした顔を見て、アナが痺れを切らした。
「だーかーらー」
アナは俺の身体全体を振り向かせ、背中を押した。押されて辿り着いたのは、カンナが休んでいた所だった。そう言うことか。ようやく理解出来たぞ。
俺にカンナをデートに誘えってことだな、お前ら。こんなことしたことないから、少し恥ずかしいが、出来るだけ頑張ってみるか。断られても俺は挫けないぞ。
ノアのクスクス笑う声が聞こえて来たが、俺が睨むと、どこか違う方を向いた。
「どうしたの?」
少し首を傾げるカンナを見て緊張しながらも、俺は大きく一歩前に出た。
「カンナさん!」
「なに畏まってんのよ」
怖気付くんじゃないぞ、俺。俺なら出来る。チキンハートには生前に何回もなっただろう。死んでからは変わったんだ。今の俺になら言える!
「カンナさん!!」
さっきより声量を上げたことにカンナは驚いていたが、
「はい?どうしたんですか、ハジメさん」
と乗ってきてくれた。これは俺が言いやすい空気を作ってくれたのか?ありがとう、カンナ!
「お、お、俺と一緒に観光しませんか!!!!」
い、言えたぞ。これで伝わるだろうか?もっとストレートに『デートしませんか』とかの方が良かっただろうか?
「うん、いいわよ」
やっぱり、ダメだったか。クソォォォ。うん?今なんてった?いいわよって言った?
「ってことはオッケーってことですか?」
「何でまだ敬語で話してんのよ」
フフッとカンナは笑ってみせた。ヤバイ。告白した訳じゃないのに、心臓がバクバクしてる。まさか、初デートが死後の世界でなんて、全く想像してなかった。
それにあっさりした返事とは逆に、カンナの顔が真っ赤になっていたことが、さらに鼓動を早くした。きっと無理をしていたんだろう。そりゃ、人前でデートに誘われたら恥ずかしいよな。
「やったね、ハジメ!」
ちょっと離れた所からアナが言った。
「ああ、お前らのおかげだ!サンキューな!」
アナがグーサインで返事をして来た。すかさず、俺もグーサインをして答えた。
こうして、休日の三日間、俺はカンナと過ごすことになった。
眩しいな。どこだここは。ああ、そう言えば、ゴンゾウと一騎打ちして気を失ったんだっけな。じゃあここは病院か?その割には騒がしいな。遠くではしゃぎ声が聞こえるし、何だか自然の光を感じる。まるで外にいるみたいだ。それに、頭に感じる柔らかい感触が、また不思議な感じだ。
「あっ、目が覚めた‥‥‥?」
誰かが俺の顔を覗き込んでいる。しかも相手の顔が逆さまに見える。少しぼやけて見えたが、目が慣れてきて段々はっきりと見えるようになった。
そこにあったのは、いつもの慣れ親しんだカンナの顔だった。
何だ、ただのカンナか。うん!?何でカンナの顔がこんな近くにあるんだ!?しかも逆さまに俺の顔を見てる。それにこの感触‥‥‥
恐る恐る、手を頭の下にあった物の所まで持って行った。そして確認するようにそれを触った。
もみもみ。何だこれ。すべすべしてて、メチャクチャ気持ちいい。
「ちょ、ちょっと、くすぐったいわよ‥‥‥」
アッッッ。開いた口が塞がらない。このモチモチですべすべの弾力のある物は、カンナの太ももだ。というか、何だこの状況。俺の頭がカンナの太ももの上にあると言うことは、膝枕して貰ってるってことだよな。
どうやったら、こんなシチュエーションになるんだ!?前の露店風呂と言い、ラッキースケベが多過ぎるだろ!こんなんじゃ、俺の身が持たねえよ!!!
「顔赤くなってるわよ、大丈夫?」
「だ、大丈夫じゃねえよ!」
俺はバッと起き、正面からカンナを見た。
「な‥‥‥なに?」
今度はカンナの顔が赤くなった。今二人を見た人には、きっと俺たちがカップルに見えるだろう。でも実際には、俺は軽くパニックを起こしていた。そりゃ気絶して起きたら、好きな女の膝枕で寝てたとか、ご褒美なのと同時にパニックにもなるわ。
「な、な、な、何でこんなことに!?」
「あー、えーっとね」とカンナは頭を掻きながら言った。照れているのはこっちにも伝わって来て、それがまた俺の照れ度を倍増させる。
「一騎打ちに勝った後、ハジメが倒れたのね。まあ、疲れて寝ちゃってただけみたいで良かったんだけどね。それで、アーロンさんがハジメを担いでここまで来たの。今は皆んな休憩中だよ」
そう言うことか、さっきのはしゃぎ声は。きっとアナがはしゃいでる声が聞こえたんだろう。でもそれじゃ、膝枕する理由にはならん!
「‥‥‥膝枕は?」
カンナはシャツを伸ばし、隠せる訳もないのに自分の脚を隠そうとした。
「こ、これはね!違うの!私がこの木で休んでたら、ハジメを見ててくれって言って来たの。そこまでは良かったんだけど、その後アナちゃんが来て、ハジメを膝枕してって強制的にやらされたの!そ、それに、あまりにも気持ち良さそうに寝てたから、起こすのも悪いかなと思って‥‥‥」
何だ、そう言うことだったのか。っじゃねえよ!
流石の俺でも恥ずかしいわ!でも、グッジョブだアナ。
「あれ?もう起きちゃったのー?」
アナが小走りで来た。その後ろには、ゆっくりだがヴァンが来ていた。
「お前なあ、変な気を使うなよ。でも、グッジョブだ」
俺はカンナに聞かれないように、アナに言い、二人でグーサインをした。そして、やっとアナに追いついたヴァンを見た。少し緊張してるみたいだな。まあ、村であんなことがあったんだから、当たり前っちゃ当たり前か。どうにか馴染んで貰いたいな。
「なあ、ヴァン。調子はどうだ?」
「ねえ、ハジメ、聞いて聞いて。ヴァンね能力をコントロール出来るようになったんだよ!これもお姉ちゃんである私のおかげだね!」
ちょっと、ヴァンに話してんだけど。お姉ちゃんになって嬉しいのは分かるが、はしゃぎ過ぎだ。でも、ヴァンが能力を制御出来るようになったのは、本人の力もあるだろうけど、アナやノアの協力も必要不可欠だったのは事実だろう。
何だかんだ言って、コイツら良い兄弟じゃねえか。
「これからよろしくな、ヴァン」
「は、はい。よろしくお願いします、ハジメさん」
モジモジしながら言ってるのが、まだ不慣れな感じだな。
「ハジメでいいぜ。ほら、そんなに固くならないで、リラックスして行こうぜ」
そう言いヴァンの肩を揉んだら、さっきより固まってしまった。あれ、これでフレンドリーな感じになれると思ったんだけどな。
「ハジメって、こう言うの下手くそだよね」
アナが茶々を入れてくる。
「カンナのこともそうだしねー」
その追加の茶々は余計だ!35才のオッサンに、何を求めてんだアナは。そんなコミュ力があったら、テクノブレイクなんかで死んでないっつーの。
「おっ。怪我の調子はどうだい、ハジメ君」
アーロンとノアも戻って来た。これで全員集合か。皆んなと一緒なのもいいんだけど、もうちょっとカンナと二人きりで居たかったな。
「ほお?そんなに二人がいいなら、良い情報を教えてやろう。アーロン」
ノアに心の声を聞かれるのに慣れて来たが、何の話をしてるんだ?ノアに呼ばれたアーロンが話し始めた。
「えー、さっき兄さんに電話をしたんだけど、二つのメッセージを受けました」
何でちょっと畏まってんだ?真面目な話をしようとしているんだろうか?
「神の子の保護、ご苦労。ハジメも強くなったな。引き続き神の子の保護に当たって貰いたいのだが、聞いた話では次の神の子はサウスエンドに居るらしい。なので、これからは潜入任務となるが、連続で任務を与える訳にもいかない。皆んな疲れていることだろう。なので、三日間休暇を与えることにした。以上!」
アルバッドの伝言をそのまま読んだアーロンだったが、その内容を聞いた俺はポカーンとしていた。ゴンゾウとの一騎打ちで疲れてるのは確かだが、休んでる暇なんて無いんじゃないのか?休暇中に、サウス軍に先を越される可能性だってある。
考えていた俺の側にアーロンが来た。目を合わせられ、ジーッと見つめられた。
「ハジメ君が考えていることは、大体想像がつくよ。休んでる場合じゃないだろって事だろう?でもね、休むことも立派な仕事さ。だって、今の状態でサウス軍と戦っても、十中八九負けちゃうよ。だったら、休んで万全の状態で挑みたいでしょう?」
あー、何でこうアーロンは母さんっぽいことを言うんだ。とてつもない母性を感じるぞ。でも言ってることは間違ってない。今の俺は正直言って皆んなの足手まといになる。それに数日休むだけなら問題ないだろう。
「で、どこで休むんだ?外で三日間休む訳じゃないだろ?」
その問いを聞き、アーロンとアナが何やらニヤニヤし始めた。そして二人は、俺に顔を近付け、「気になる?」と聞いて来た。
「そりゃ、まあ」
素っ気ない返事だったが、二人は満足したみたいだった。
「今回はここに行きまーす!」
アーロンとアナが声を合わせて行った。アナは分かるが、アーロンがこう言うことをすると、色々誤解を招くと思うんだが。
アーロンの事に集中し過ぎていて、二人が手に持っていたポスターを見ることを忘れていた。何て書いてんだ?
「メトロポリス‥‥‥?」
「はいー!」これもまた二人同時に言った。でも、何でこんなにはしゃいでるんだ?
ポスターには都会の街の写真が載っていた。ただのビル群に見えるが、観光地として有名なんだろうか?
「ここって有名なのか?」
「知らないの!?」
そうアナが言ったが、逆に何でお前が知ってるんだよ、とツッコミを入れたくなった。やっぱ女子だから流行とかには敏感なんだろうか?
「メトロポリスはね、サウス地方にある、ノースエンド最大の都市なんだ。ポスターの表紙にはビルしか写ってないけど、裏には他にもたくさん載ってるよ。ほら!」
本当だ。ポスターの裏側には、メトロポリスでおすすめの観光スポットが記載されていた。噴水広場、ショッピング街、博物館、カフェなどが紹介されていた。
「へえー、楽しそうだな」
「でしょ、でしょ」と言うアーロンとアナを無視し、俺はヴァンの方を見た。分かりにくいが、ヴァンも興味を持ってるみたいだ。これで少しでも元気を取り戻してくれたら、いいな。
「よし!じゃあ皆んなで行くか!」
「え?」
その反応は何だよ。皆んなでワイワイ楽しんで行こうって言ってんのによ。もしかして、声が小さかったか?
「よっしゃ!皆んなで行くか!!!」
どうだ。今の俺に出せる最大音量、テンションMAX状態で言ってみたぞ。
俺のテンションとは裏腹に、アーロンとアナ、いや、カンナとヴァン以外の皆んなが俺を白い目で見てきた。カンナに至っては、少し悲しそうに見える。一体どうなってんだ、これは。
「それはないよ、ハジメ君」
「流石だな」
「鈍チン」
え?俺、何か悪いこと言いました?あんまりだろ、この言われようは。
「何なんだ、お前らは!皆んなで楽しむんじゃねえのかよ!」
「皆んなで楽しむよ?でも、『それぞれ楽しむ』ね」
どういうこと?ちゃんと説明してくれよ、アナちゃん。俺のキョトンとした顔を見て、アナが痺れを切らした。
「だーかーらー」
アナは俺の身体全体を振り向かせ、背中を押した。押されて辿り着いたのは、カンナが休んでいた所だった。そう言うことか。ようやく理解出来たぞ。
俺にカンナをデートに誘えってことだな、お前ら。こんなことしたことないから、少し恥ずかしいが、出来るだけ頑張ってみるか。断られても俺は挫けないぞ。
ノアのクスクス笑う声が聞こえて来たが、俺が睨むと、どこか違う方を向いた。
「どうしたの?」
少し首を傾げるカンナを見て緊張しながらも、俺は大きく一歩前に出た。
「カンナさん!」
「なに畏まってんのよ」
怖気付くんじゃないぞ、俺。俺なら出来る。チキンハートには生前に何回もなっただろう。死んでからは変わったんだ。今の俺になら言える!
「カンナさん!!」
さっきより声量を上げたことにカンナは驚いていたが、
「はい?どうしたんですか、ハジメさん」
と乗ってきてくれた。これは俺が言いやすい空気を作ってくれたのか?ありがとう、カンナ!
「お、お、俺と一緒に観光しませんか!!!!」
い、言えたぞ。これで伝わるだろうか?もっとストレートに『デートしませんか』とかの方が良かっただろうか?
「うん、いいわよ」
やっぱり、ダメだったか。クソォォォ。うん?今なんてった?いいわよって言った?
「ってことはオッケーってことですか?」
「何でまだ敬語で話してんのよ」
フフッとカンナは笑ってみせた。ヤバイ。告白した訳じゃないのに、心臓がバクバクしてる。まさか、初デートが死後の世界でなんて、全く想像してなかった。
それにあっさりした返事とは逆に、カンナの顔が真っ赤になっていたことが、さらに鼓動を早くした。きっと無理をしていたんだろう。そりゃ、人前でデートに誘われたら恥ずかしいよな。
「やったね、ハジメ!」
ちょっと離れた所からアナが言った。
「ああ、お前らのおかげだ!サンキューな!」
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