テクノブレイクで死んだおっさん、死後の世界で勇者になる

伊藤すくす

文字の大きさ
48 / 86
第七章: ロスト・イン・ライトニング

第三話

しおりを挟む
「近付いたら殺すって、相当殺気立ってんだな」
「だから前も言っただろう。手が付けられない者もいると」
「でも、これでサウス軍も迂闊に近付けないね」
「そうですね。私たちも近付けませんが‥‥‥」
「そんなことよりもご飯ー」
「ぼ、僕もご飯食べたいな‥‥‥」

おいおい、最後の二人は能天気すぎるだろ。ヴァンに至っては、姉ちゃんの言ったことに乗っかってるだけじゃねえか。

それはさておき、キルティの雷によって俺たちは足止めを食らっていた。今日の所はここで休憩して、キルティに近付けるように計画を立てるしかないな。

「そうだね。ご飯にしようね、二人とも」

たまにアーロンが聖母に見えるんだが、俺だけか?任務中に、それも死と隣り合わせの場面で、ご飯が食べたいと言うアナとヴァンに怒りもせず、ご飯を作ろうとするとか。聖母か神、いや仏か?まあ、俺も任務中に私事でゴタゴタしてたし、文句は言えないか。

前回とは違い、今回はシンプルにテントを二つ作り、今日の寝床とした。それと今は火を焚いていた。

テントの割り当ては、俺、ノア、アーロン。そしてもう一つのにカンナ、アナ、ヴァン。もう死んでるんだが、正直言って、カンナと一緒に寝れるヴァンが死ぬほど羨ましい。

「今日のご飯はなーにー?」
晩飯を作っていたアーロンに向けて、アナが言った。丸で腹を空かせた子と、それを相手する母親みたいだ。

「アナちゃんたちにはお子様ランチを作ったよ。他の皆んなにはオムライスを作りましたー」

アーロンの作ったお子様ランチは、アナとヴァンだけでなく、ノアの前にも置かれた。

「私はもうお子様ではないのだが‥‥‥」

文句を言いつつも、美味そうに食べるノアが微笑ましかった。アナは『すごーい』と声を上げながら喜び、ヴァンも無言ながらも笑顔だった。

確かに、このお子様ランチのクオリティは凄かった。皿はお子様ランチでよく見る三つの仕切りのあるヤツで、ケチャップライスはドーム型になっていて、その上には『アーロン特製お子様ランチ』、とポップ調のフォントで書かれた旗が刺さっていた。

そして皿の左上にはケチャップ付きのハンバーグが乗っていて、その横にはデザートのプリンがあった。しかも、そのプリンは車のデザインの容器の上に乗っていた。

俺たち用に作ってくれたオムライスも、ケチャップがかかっているのではなく、アーロン特製デミグラスソースがかかっていて、これが超絶美味かった。

これ、母さんが作った料理というか、もはやシェフレベルじゃねえか。ってかどんだけスペック高いんだよ、アーロン!

「いつも悪いな、アーロン。今度は俺たちで作るよ」
「いやいや、好きでやってるんだし、気にしないでいいよ」

アーロンの料理が美味すぎて、全員が無言で頬張っていた。すると、お子様ランチを眺めていたとき、ある考えが俺の頭をふと過ぎった。これなら行けるんじゃないか?これなら、キルティの雷を掻い潜れるんじゃないか、と。

でも、「これ」を作れる奴が、果たしてこの中に居るだろうか。俺は無理だし、アナたちも無理だろう。じゃあ、頼みはアーロンとカンナか。

「皆んな、ちょっと聞いてくれるか」
全員がご飯を食べ終わった所で、話しを切り出した。

「何だ、畏まって」
「どうしたの、ハジメ?具合でも悪いの?」
「具合が悪いなら、僕が診てあげるよ」
「ハジメがマジメ?」
「ハジメさん‥‥‥っぽくない‥‥‥」

お前ら、そんなに俺が真面目な話しをするのが不思議か。おっ?やんのか、おっ?

「キルティの雷を回避する方法が分かったんだ」
それぞれの顔に驚きが見えたが、ノアも驚くとはな。お子様ランチに夢中で、俺の声を聞いてなかったんだな、きっと。

皆んなが聞く中、俺はその方法を明かした。

「車を作るんだ」
お子様ランチのプリンが乗っていた、車の容器を見て浮かんだ案だった。だが、車だったら雷に当たっても流すことが出来るはずだ。それも、乗ってる人には害はない。

「ただ、問題が一つあるんだ。それは、俺たちで作るれるのかってことだ」

そうだ。車なんて物は、イメージで外面だけは作れても、内部は専門知識の無い俺たちには作れっこない。しかし、他の方法が浮かばない限り、車を作るしかない。いったい、どうすればいいんだ。

「それなら僕が作れるよ」
声がした方向を見ると、アーロンが手を挙げながら、ニコニコしていた。何でも出来んのかよ、お前は‥‥‥

晩飯の後片付けも終わり、皆んなは各々のテントに入った。アーロンはさっそく車を作る準備をするみたいだ。テーブルの上には図面や部品が散りばめられていた。

「何か手伝えることあるか?」
「うーん、内部の作り方を知ってるのは、僕だけみたいだから。でも、ありがとうね。明日までには作っとくから、皆んなは休んどいて」
「何から何まで任せっきりで悪いな」
「こう見えても、このチームのリーダーだからね。任せてよ」

アーロンのお言葉に甘えて、テントに入ろうとしたら、カンナがテントから出て来た。

「アーロンさん、大丈夫そうだった?」
「ああ、多分な。任せとけってよ」
「そっか。それなら良いんだけどね。私たちも頑張らないと」
「そうだな。じゃあ、今日はゆっくり休めよ。明日は忙しくなるぞ」
「う、うん。あの、ハジメ!ちょっと歩かない?」

何だ、散歩のお誘いか。行くに決まってるじゃねえか!

少し歩き、近くにあった木の側で止まった。さすがは沼地。ロマンチックのかけらも無い。

「ごめんね」
「何謝ってんだ?」
「だって、付き合ってるのに、私素っ気なくて。だから謝ってるの!それに、付き合い始めての初デートが沼地で散歩だし‥‥‥」
「何だ、そんなこと気にしてたのか。しょうもないな」
「人が悩んでるのに、しょうもないって何よ!」
「すまん。でもよ、時間はたんまりあるんだし、急ぐ必要はないんじゃないか?何せ、俺たちもう死んでるんだしよ」
「うわあ、不謹慎。でも、そうね。ありがとう、ハジメ。話したらスッキリしたわ。私も頑張るから!じゃあ、おやすみね」

そう言いながら、カンナは自分のテントまで戻って行ったが、数秒後に戻って来た。

まだ木の下に立っていた俺に近付き、『頑張るって言ったもんね。おやすみなさい、ハジメ』と言い、頰にキスをして来た。そして、カンナは早歩きで去って行った。

言うまでもないが、俺はその夜、一睡も出来なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...