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第九章: サバンナ・ハバンナ
第九話
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何かがおかしい。
この景色と空気は完全にヨードの物だ。でも、ここはアカツチじゃない。赤土で作られた家も見当たらないし、何せ今俺は木々に囲まれている。
それに、さっきまでカイトの百体くらい居るビーストに囲まれてたはずだ。
じゃあ、ここはいったいどこなんだ?
まあ、ここに居ても仕方ないな。適当に歩いてみるとするか。
「ここに置いとくよ」
森の中を歩いていると、人の声が聞こえて来た。その声に向かうと、見慣れた顔が目に入った。
「ありがとね」
カイトと、その母親だ。
こんなとこで何やってんだ?いや、状況が飲めてきたぞ。俺はまだカイトの記憶を見てるんだ。つまり、ここはカイトと母親が死んだ後の、ヨードでの記憶なんだ。
それにしても、こんな森奥の小さな小屋で暮らしてるとはな。汗をかきながら斧で薪を割る。似合ってるけどちょっと意外だな。でも、こう見ると二人とも幸せそうに見える。
うん?いや、待てよ。この二人のエレメントを見る限り、闇が勝ってるな。ってことは、ここはサウスエンドなのか。まあ、あんなことがあったんだ、当たり前と言えば当たり前か。
この光景が映ってるとすると、俺はカイトの光エレメントを見てるんだろうか?それとも‥‥‥
その答えが判明するのに、そう時間はかからなかった。
「薪を割る姿も板について来たわね」
「こんなの簡単だよ、母さん」
「何言ってるの、最初はろくに斧も持てなかったじゃない」
「違うよ、あれはエレメントの使い方をちゃんと分かってなかっただけだよ」
少し照れながらカイトが言い、そそくさと薪を持って家の中へと入って行った。
母親はそれを笑いながら、手紙が入っていないか家の前にあるポストを見に行った。中には封筒が一つ。何やら手紙のようだ。
「ど、どうして‥‥‥」
そう言う母親の後ろから、俺は手紙を覗いた。
『ナガト・カイト様、あなたの父上、ナガト・ヨシカズ様がヨードに辿り着きました。サウスエンドへの入国を許可致しましたので、間も無く到着すると思われます』
嘘だろ。あの父親、死んでもまだカイトに固執するのか。ヨードでは入り口でエレメントの量を測り、サウスエンドかノースエンドに行くかが決まるが、どの親族の所へ行くかは決めれるはずだ。ということは、あの父親はワザとカイトたちがいるここを選んだんだ。許してくれるとでも思っているのだろうか。
呆然と立ち尽くしている母親を見て、カイトが小屋から出て来た。
「どうしたの?」
そう言いながら、カイトは手紙に気付いた。手紙の内容を読んでいく内に表情が強張って来たのが見えた。読み終わったカイトは、何も言わずに小屋へと戻った。
「ああ‥‥‥本当に居たのか‥‥‥」
父親が現れたのは、カイトが小屋に戻ってすぐだった。元妻を見て放った言葉だ。見られた本人は、生前のように生気を失っていた。まさか、あの男に再び会う日が来るとは思っていなかったのだろう。
項垂れいた母親だったが、今回は少し様子が違った。しばらくすると母親は顔を上げた。
「何で、なんで貴方がここにいるの?」
彼女の震える手と話し方で、辛うじて冷静さを保っているのが分かる。
「死んだんだ。色々とあってな。そしたら、ここにカイトが居ると聞いて、ここまで来たんだ」
この世界のことをあまり理解してないみたいだ。自分がサウスエンドに入れられた理由も知らないんだろう。
それにしても、カイトが優先事項なのか、元妻にはあまり興味を示さなかった。
「で、カイトはどこに居るんだ?」
母親には目もくれず、男は家に入ろうとした。しかし、母親が入り口に立った。
「カイトには会わせない」
彼女の目は、さっきの精気がないのとは違い、威圧感さえあった。男も少し怖気付いていたが、諦めなかった。
「会わせろと言ってるんだ!」
やはり癖というのは、そう簡単には治らない。男は母親の胸ぐらを掴み、いとも簡単に持ち上げた。だがこの時、俺は異変に気付いていた。
カイトは父親の後ろに居たのだ。そして次の瞬間、さっきまで薪を割っていた斧で男の背中に一撃を喰らわせた。
声にならないような叫び声をあげ、男は倒れた。徐々に灰になって行く男を、カイトは見ていた。
「やっと守れた」
カイトはそう言った。
この景色と空気は完全にヨードの物だ。でも、ここはアカツチじゃない。赤土で作られた家も見当たらないし、何せ今俺は木々に囲まれている。
それに、さっきまでカイトの百体くらい居るビーストに囲まれてたはずだ。
じゃあ、ここはいったいどこなんだ?
まあ、ここに居ても仕方ないな。適当に歩いてみるとするか。
「ここに置いとくよ」
森の中を歩いていると、人の声が聞こえて来た。その声に向かうと、見慣れた顔が目に入った。
「ありがとね」
カイトと、その母親だ。
こんなとこで何やってんだ?いや、状況が飲めてきたぞ。俺はまだカイトの記憶を見てるんだ。つまり、ここはカイトと母親が死んだ後の、ヨードでの記憶なんだ。
それにしても、こんな森奥の小さな小屋で暮らしてるとはな。汗をかきながら斧で薪を割る。似合ってるけどちょっと意外だな。でも、こう見ると二人とも幸せそうに見える。
うん?いや、待てよ。この二人のエレメントを見る限り、闇が勝ってるな。ってことは、ここはサウスエンドなのか。まあ、あんなことがあったんだ、当たり前と言えば当たり前か。
この光景が映ってるとすると、俺はカイトの光エレメントを見てるんだろうか?それとも‥‥‥
その答えが判明するのに、そう時間はかからなかった。
「薪を割る姿も板について来たわね」
「こんなの簡単だよ、母さん」
「何言ってるの、最初はろくに斧も持てなかったじゃない」
「違うよ、あれはエレメントの使い方をちゃんと分かってなかっただけだよ」
少し照れながらカイトが言い、そそくさと薪を持って家の中へと入って行った。
母親はそれを笑いながら、手紙が入っていないか家の前にあるポストを見に行った。中には封筒が一つ。何やら手紙のようだ。
「ど、どうして‥‥‥」
そう言う母親の後ろから、俺は手紙を覗いた。
『ナガト・カイト様、あなたの父上、ナガト・ヨシカズ様がヨードに辿り着きました。サウスエンドへの入国を許可致しましたので、間も無く到着すると思われます』
嘘だろ。あの父親、死んでもまだカイトに固執するのか。ヨードでは入り口でエレメントの量を測り、サウスエンドかノースエンドに行くかが決まるが、どの親族の所へ行くかは決めれるはずだ。ということは、あの父親はワザとカイトたちがいるここを選んだんだ。許してくれるとでも思っているのだろうか。
呆然と立ち尽くしている母親を見て、カイトが小屋から出て来た。
「どうしたの?」
そう言いながら、カイトは手紙に気付いた。手紙の内容を読んでいく内に表情が強張って来たのが見えた。読み終わったカイトは、何も言わずに小屋へと戻った。
「ああ‥‥‥本当に居たのか‥‥‥」
父親が現れたのは、カイトが小屋に戻ってすぐだった。元妻を見て放った言葉だ。見られた本人は、生前のように生気を失っていた。まさか、あの男に再び会う日が来るとは思っていなかったのだろう。
項垂れいた母親だったが、今回は少し様子が違った。しばらくすると母親は顔を上げた。
「何で、なんで貴方がここにいるの?」
彼女の震える手と話し方で、辛うじて冷静さを保っているのが分かる。
「死んだんだ。色々とあってな。そしたら、ここにカイトが居ると聞いて、ここまで来たんだ」
この世界のことをあまり理解してないみたいだ。自分がサウスエンドに入れられた理由も知らないんだろう。
それにしても、カイトが優先事項なのか、元妻にはあまり興味を示さなかった。
「で、カイトはどこに居るんだ?」
母親には目もくれず、男は家に入ろうとした。しかし、母親が入り口に立った。
「カイトには会わせない」
彼女の目は、さっきの精気がないのとは違い、威圧感さえあった。男も少し怖気付いていたが、諦めなかった。
「会わせろと言ってるんだ!」
やはり癖というのは、そう簡単には治らない。男は母親の胸ぐらを掴み、いとも簡単に持ち上げた。だがこの時、俺は異変に気付いていた。
カイトは父親の後ろに居たのだ。そして次の瞬間、さっきまで薪を割っていた斧で男の背中に一撃を喰らわせた。
声にならないような叫び声をあげ、男は倒れた。徐々に灰になって行く男を、カイトは見ていた。
「やっと守れた」
カイトはそう言った。
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