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第九章: サバンナ・ハバンナ
第十話
しおりを挟むジジジジジ……
複数の紙飛行機が舞ってるのが見える。その周りを飛ぶ人影。一人じゃなくて、複数の影だ。飛び交う影たちを眺めていると、紙飛行機の一つがこっちに近づいて来た。
『ハジメくん!』
うん?なんだ?誰だ俺の名前を呼んでるのは。俺は確か、カイトの記憶を見ていたはずだ。じゃあここは、、、
紙飛行機は、真っ直ぐ俺に向かって来ている。それも凄いスピードで。その後ろには人影があった。紙飛行機を追いかけてるみたいだ。
『起きて、ハジメ!』
『ハジメさん!』
『ハジメ!』
ハッ!
思い出したぞ、今の状況を。
俺たちはカイトと戦ってるんだ。じゃあ、この突進して来てる紙飛行機は、カイトのビーストだ!
気付いた俺は、白濁の剣を思い切り前に向けて振った。攻撃を受けたビーストはスパッと切れ、風に揺られながら、ひらひらと地面に落ちた。
「カイト!」
俺はそう叫んだ。コイツの記憶を見て、叫ばずにはいられない。
「僕のエレメントを見たんですか?」
俺の顔を見ながら、カイトは言った。
「ああ。お前も、お前の母親も何も悪くねえ」
「なら、尚更あなたのしようとしている事が無意味なのが分かるでしょう」
「そんなことはねえ!この戦争を終わらせるには、皆んなが変わらないといけねえんだ!お前はこの世界の法を恨んでるんだろ?なら、何で軍に手を貸すんだ?」
これは最初から思っていたことだ。カイトもヨハンも、軍に入る理由なんて無いんじゃないか?
「ええ、僕はヨードが憎い。サウスエンドが嫌いだ。でも、憎んでも、嫌でも、その感情だけでは何も変わらないんです」
「じゃあ尚更だ。俺たちに戦う理由なんてない!」
「甘い考えですね。お互いが協力し合えば、ヨードが良くなるとでも?ノースとサウスで分担したのは国王たちですよ。手を取り合うことなんか出来るはずがない。あなたも分かってるはずです。あなたがやろうとしてる事が、どれだけ無謀なことか!」
「分かってる、そんなこと。けどな、支配で手に入れた自由や安全なんて、本当の平和なんかじゃねえ!」
俺の言葉を聞き、カイトは少し黙り込んだ。
「理想論にすぎませんね」
俯いていた顔を上げ、カイトは数機の紙飛行機を俺の方へと飛ばした。
飛行機はとてつもないスピードで、真っ直ぐと俺を目がけて飛んで来た。
逃げ切れない、そう思った。でも何秒経っても飛行機は来なかった。もうとっくに俺の心臓を一突きしててもおかしくないぞ。前を見ると、その理由が分かった。
「お前……」
そこに立っていたのはサバンナだった。
俺を庇って攻撃を受けたのか?何で家から出て来たんだ?怪我はしてないか?頼むから死なないでくれ。
最悪のケースが頭の中でグルグルと回っていた。
「大丈夫」
俺の心配とは裏腹に、サバンナはしっかりと仁王立ちをしていた。
「この人は臭くないから」
臭くない?そう言えば、エレメントの量関係なしに相手がどんな奴か分かる能力を持ってたなコイツは。
サバンナの言った通り、紙飛行機の先端は彼女に胸に触れたまま、くしゃくしゃになっていた。
「これで分かっただろ、カイト。お前には支配なんか出来ねえんだ。お前は俺たち側の人間なんだ!」
「やめろ」
カイトは頭を抱えている。
「僕の、僕の邪魔をするな!!!」
やべ。爆発しちゃったよ、この子。
落ち着いてくれると思ったんだけどな。
崩れていた紙飛行機は形を戻し、また動き出した。
「お前も気づいてんだろ!協力しないとこの戦が終わんねえことを!」
徐々に飛行機が近付いてくるのが見える。
「上が変わんねえと、国は変わんねえんだよ!」
「決めたんだ、あの時。僕は迷わない、僕が守るって決めたんだ!だから、邪魔をするな!」
そうかよ。止める気も、変わる気もないんだな。
「下がってろ、サバンナ」
サバンナを後ろにやり、俺は白濁の剣を取り出し、構えた。
カイトのビーストは相変わらず、こっちに飛んで来ている。それを物ともせず、俺はカイトとの距離を詰めた。
飛行機型ビーストが近くになったとき、俺は身体を捻らせ、攻撃を避けた。そしてそのまま、カイトの場所まで全力で突っ走った。
俺が辿り着くとは思ってなかったのか、敵は驚きの表情を見せた。
「この分からず屋がああぁぁぁ!」
手に持っていた剣を捨て、俺はカイトの顔面を殴った。
殴られ地面に落ちたカイトだったが、すぐに立ち上がり殴り返して来た。
二人とも武器を捨て、周りからは何をやってるんだと思われたかもしれないが、俺には理解できた。
コイツは誰かに止めて欲しいんだ。この戦争を。そして自分を。
どれくらい殴りあっただろうか。お互いぼろぼろになった身体に鞭を打って、動きは遅いが戦い続けている。
周囲の皆んなも理解し始めたのか、俺たちの邪魔をする者は誰もいなかった。
「なぁ、そろそろ諦めたらどうだ?」
ここまで誰かと喧嘩したのは生まれて初めてだ。しかもその初体験が死後の世界でなんて、想像だにしなかった。
「そっちこそ、立ってるのがやっとなんじゃないですか?」
ヘっと笑いながらカイトが言う。この状況で良く笑ってられるな。
でもコイツの言う通りだ。俺ももう持ちそうにない。次の一発だ。それで終わらせる。
先に動いたのはカイト。それに反応するように俺も動いた。二人は対面するように直進している。
俺はさっきのビーストにしたのと同様に、向かってくるカイトを、身体を回転させながら避けた。そして着地と同時に後ろを向き、背後にいるカイトに最後の一発を入れた。
『グッ』という声と共にカイトは倒れた。カイトが操作していたのだろうか、紙飛行機型のビーストも次々と地上に落ち、ただの紙切れとなった。
そういう俺も全体力を使い、その場で倒れた。
「やるじゃねえか、お前」
「言っておきますが、僕はあなたのことが大嫌いです」
息切れしながら言ってるカイトの顔は笑っていた。何かが変わるかもしれない。長い呪縛のような生活から解放される可能性がある。それに気付いてくれたんだ。
「もうちょっと素直になれよな」
そんなカイトを見ながら、俺は呟いた。
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