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3”日に火に
しおりを挟む「ねぇねぇ。君がこの家に引っ越して来た子なの?」
「うん。虐めるなら勝手にして‥」
「何で??。そんな事しなくちゃ行けないの?」
「‥‥‥??。」
「『家族』なんだから、そんな事する訳ないじゃ無いか。」
————————————。
「‥火。」
「持ってないよ俺。」
「俺はそもそも吸ってないからな。」
「チィ、使えねぇ。」
「‥‥コイツゥゥ!!!」
「落ち着け!落ち着け!!」
「だから電子タバコ吸ってる奴は嫌いなんだ。まともに火すら起こせない。何一つ、役にたたねぇ。」
「‥‥‥。」
「こいつぅぅ!!良い加減にしろよ!!」
「おいおい、なんで喫煙所じゃ無いお前がキレてんだヨォ!」
「ふふふ。」
結局、ライターを持っていたのか自分で煙草の火をつけて、尋常ではない煙を吐き出す。街灯の光が直接的に当たるこの場所では、煙の輪郭すらわかってしまうほど、雲の様な形をした煙が彼の顔を覆い隠す。
翔真と功輝が座っていたチェアーを無言のままひっくり返し、2人を落とすと、間その席にどしっと煙草を咥えながら寝転び出し何事も無かったかの様に目を瞑ってしまう。
「いててて、何すんだ!!」
「あぁ、酒がァァ。」
「‥‥‥。で、明日は朝からレディースミーティングがあるらしいぞ。」
「そうなんだ。ありがと、明日は早起きしないとね。」
「無視かよぉ!!」
「酒がァァ。」
葛霧くんは長い長い付き合いだけど、笑って話す様な友達でも、腹を割いて話せる親友でもない。たった1人の家族。でも血は繋がっていない。幼少期に僕の家にやって来て今まで共に過ごして来た。
僕が覚えている限り、初めて彼と対面した時は目付きが悪く、正気をまったく感じなかった。人を見れば直ぐに睨むし、簡単に暴力を振るう。口も悪く、礼儀もなっていない。
高校だった頃、葛霧君も同じ学校に進学。親の目から少しだけ離れたから平和に過ごせると思っていたのだけど、じっと出来なかった葛霧君は、問題行動を頻繁に起こしていた。
担任を殴るわ、生徒を殴るわ、女子生徒には脅迫するわ、他校生にも喧嘩を吹っ掛ける始末。噂は周りに周り、僕たちが通っていた学校に、多学年の輩達が集まって来た。
門を破り、バイクに跨り校内を走り回る。教員であり大人である人達が「警察を呼ぶぞ!」といっても聞く耳を持たない。数十人、いや、近辺にある学校の不良半数が僕の通う学校に押し寄せて来た為、数十人では収まりキレない程の夥しい数の不良が運動場を暴れ回った。
高校生と言う分際にも関わらず騒いではしゃぎ過ぎた。運動場で走り回る暴走族も、校内で物騒な物を持ち大声を張り上げる不良達も、口々に「葛霧はどこだ!!」そう叫んで居たらしい。残念ながら影の薄い僕は素通り、しかし。
「きゃあ!!」
「へっへっへ。これは別嬪さんだ。クズ‥なんとかって言う奴の事なんてどうでも良くなっちまった。なぁ?溜まってんだ??。分かるよな?」
「コラァァ!!怖がってる途中でしょうが!!」
「んぁ??何いってんだ?誰だお前。」
可愛い女の子が襲われていたんだ。こんな時、男はどうするかって?助けるの一択だ。助けて、芽生える恋もあるって物だ。そう思い立ち、直様涙を流す彼女の前に立ち、全力で助ける!!
「ぐふぁ!!」
と、そんな妄想も程々にしないといけない。勉強になったよ。かっこいいセリフでも放ってやろうかと、言葉を選んでいる最中、鳩尾には強烈な痛みが走り僕の小さな身体は吹き飛んだ。腹を膝で抉られて口から少量の血が出てくる。そして、飛ばされた勢いで壁に衝突して重症を負ってしまった。
周りを見れば夥しい数の不良達が教室を蹴破り侵入、怒号を放ち廊下ではこの学校の生徒の胸ぐらを掴む。
「‥‥‥。」
「ん?死んだか?まぁいいや。」
「ひぃ。」
この学校には悲鳴と怒鳴り声で支配されていた。錯乱状態の中、誰も止める事など出来ない。先生も運動場で暴れ回る不良達を止めるので必死。
僕も一発喰らってこのザマだ。気絶寸前の体、視界はボヤけて声を出そうにも音は出ない。僕の腹を蹴り上げた張本人は抵抗しようと手を動かす僕に見向きもせず、腰を抜かした女の子に近づけ、髪を引っ張る。
女性を敬う事すら出来ない、品性の欠片もない。
「なんだよ。恥ずかしいのか?、なら、あの部屋でやろうじゃねえか。へっへっ‥‥」
「いや‥‥いや‥。」
いた。
「へっへ‥‥‥へ??」
バリィィン!!!
女の子を襲う輩、かなりの図体をしていた。肥えた体つきで、その体重を乗せた攻撃は一溜りも無いはず。それに加えて膨れ上がった腹には、半端な攻撃すら通じない。そんな男が校内を暴れ回っていたんだ。
でも、そんな男は今、宙を舞っておりそのまま窓ガラスを突き破り、この三階の廊下から落ちていった。
図体だけが大きい不良がこの廊下から消えた後、同じくこの廊下が静かである事に気がつく。残るのは至る所に落ちる硝子の破片と腰を抜かした生徒達。
「‥‥おい。お前か?大河をやったのは?」
「え‥‥‥。え、あ。‥‥あぁ。‥‥え。」
「チィ、質問に答えろ。殺すぞ?‥‥ん?‥‥はぁぁ。」
間一髪の所で駆けつけてくれたのが葛霧君だった。あれだけ重そうな相手を軽々持ち上げて外に投げたのだ。それも、廊下に蔓延っていた不良達全て。
そして、あろう事か僕のボロボロになった身体を見て、顔色を変えて、座りこむ彼女に向けて眼光を開き問い詰めたのだ。
声が出ない僕は必死に、葛霧君に向かって首を振るうが此方に気づいてくれない。そして、
「鬱陶しな!!(バサァ!!)」
「きゃあ!!」
来ていた学服を脱ぎ、勢いよく彼女に向けて投げたのだ。
「チィ、おい大河。何やってんだお前も‥‥」
「‥パク‥‥‥パクパク。」
「ん?なんだって?」
おぉーーい!!いたぞ!!彼奴が葛霧だぁ!!
この廊下が揺れる程の足踏みを立てて、大勢の不良達が僕たちの元へ走って来た。
「チィ、お前らか?コイツを殴ったの?」
「んぁ?誰だそいつ?、そんな芋っぽい奴に興味ねぇよ。」
「‥‥。チィ。」
「まぁ、でも。片っ端から問い詰めてたからな。誰か殴ったんじゃねえか?‥‥それよりも‥‥」
「そうか。‥‥その中に居るんだな?‥‥」
「それよりもだ!!散々俺らの庭を荒らしてくれたじゃねぇ——グフゥ!!!
無数に居る不良達、その先頭に立つ丸刈りの男が何かを話そうとしたタイミング。少し離れた距離にいる葛霧は、体制を一気に下ろし、クラウチングスタートの構えをとると、風が立つ程の威力で地面を蹴り、丸刈りの男に急接近する。
「‥‥、お前らの中に居るんだろ?片っ端から聞いてやる。」
あれから数分後、この学校を支配していた悲鳴と怒号は聞こえなくなる。代わりに、絶叫だけがこの世界を覆った。
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