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第4章 別れ、そして再び
無言の帰宅
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「ただいま~」
既に暖簾をしまった入口のドアを開け中に入ると、そこには久しぶりの清三とトヨの姿があった。
「清三さん! トヨさん! 」
声を弾ませ、駆け寄るゆう子。
「清三さん、退院したんですね。あぁ~良かった! 二人がいなくて、寂しかったんですよ」
清三もトヨも嬉しそうに笑うだけで何も言わない。
「どうしたんですか」
そう言いながら厨房を伺うと、そこには泣きはらし目を真っ赤にさせた清子の姿があった。
「清子さん、何かあったんですか」
慌てて清子の元に走り寄り、ゆっくりと背中をさするゆう子。
「大丈夫ですか」
「ごめんね。ゆう子ちゃん、落ち着いて聞いてね。さっき病院から電話があって、じぃちゃんの容体が急変して亡くなったって」
「えっ。おじいさんって……? 」
「清三じぃちゃんが亡くなったの」
「ちょっと冗談はやめてくださいよ。清三さんは目の前にいるじゃないですか。ねぇ、トヨさん」
トヨの顔を見ると、困った顔でこちらを見ている。
「ゆう子ちゃんは気付いてないみたいだったから、言わなかったけど……トヨばぁちゃんはもう何年も前に亡くなってるのよ」
「えっ、何言ってるんですか。ちょっと、清三さんもトヨさんも何とか言ってくださいよ」
そう言い二人の顔を見るが、清三もトヨもやっぱり困った顔でゆう子を眺めてくるだけだった。
「私、そもそも霊感なんてないですし……そんなこと言われたって信じられるわけ……」
「ゆう子ちゃん。私も霊感はないんだけど、何故だかトヨばぁちゃんのことだけは見えたのよ。でもね、清三じぃちゃんには見えなかったの。ゆう子ちゃんにもトヨばぁちゃんが見えてるって分かった時にはびっくりしたわ」
ゆう子は清子の話を聞きながら、ふとトヨが話すのを見たことがない事に気付く。
「もしかして…… 姿は見えるけど話せないんですか」
そっとうなずく清子。
「じぃちゃんは私やゆう子ちゃんから、ばぁちゃんの様子を聞くのを楽しみにしていたの。だから毎日この食堂に来ていたのよ」
うまく話が飲み込めなかったが、からかっている様子もない。ゆう子は半信半疑ながら、清三の体に触れてみた。ゆう子の伸ばした手は清三の肩にはとまらず、清三の体を通り抜けた。慌ててトヨの手を掴もうとしたが、その手もむなしく空を掴むだけだった。
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「清三さん! トヨさん! 」
声を弾ませ、駆け寄るゆう子。
「清三さん、退院したんですね。あぁ~良かった! 二人がいなくて、寂しかったんですよ」
清三もトヨも嬉しそうに笑うだけで何も言わない。
「どうしたんですか」
そう言いながら厨房を伺うと、そこには泣きはらし目を真っ赤にさせた清子の姿があった。
「清子さん、何かあったんですか」
慌てて清子の元に走り寄り、ゆっくりと背中をさするゆう子。
「大丈夫ですか」
「ごめんね。ゆう子ちゃん、落ち着いて聞いてね。さっき病院から電話があって、じぃちゃんの容体が急変して亡くなったって」
「えっ。おじいさんって……? 」
「清三じぃちゃんが亡くなったの」
「ちょっと冗談はやめてくださいよ。清三さんは目の前にいるじゃないですか。ねぇ、トヨさん」
トヨの顔を見ると、困った顔でこちらを見ている。
「ゆう子ちゃんは気付いてないみたいだったから、言わなかったけど……トヨばぁちゃんはもう何年も前に亡くなってるのよ」
「えっ、何言ってるんですか。ちょっと、清三さんもトヨさんも何とか言ってくださいよ」
そう言い二人の顔を見るが、清三もトヨもやっぱり困った顔でゆう子を眺めてくるだけだった。
「私、そもそも霊感なんてないですし……そんなこと言われたって信じられるわけ……」
「ゆう子ちゃん。私も霊感はないんだけど、何故だかトヨばぁちゃんのことだけは見えたのよ。でもね、清三じぃちゃんには見えなかったの。ゆう子ちゃんにもトヨばぁちゃんが見えてるって分かった時にはびっくりしたわ」
ゆう子は清子の話を聞きながら、ふとトヨが話すのを見たことがない事に気付く。
「もしかして…… 姿は見えるけど話せないんですか」
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「じぃちゃんは私やゆう子ちゃんから、ばぁちゃんの様子を聞くのを楽しみにしていたの。だから毎日この食堂に来ていたのよ」
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