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エピローグ

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「とんだ暗殺者よねぇ」

「トンデモ武闘家に言われたくないわ」

中世のような街並みの中、旅装束のリクがウミのドエロファッションを見て溜息をつき、ウミはリクのゴスロリを冷たい目で見ている。

私、陸斗、海斗、そして瑛士は、ほんの数ヶ月前には神様に召喚されて異世界にいたの。
私は聖女、陸斗は武闘家、海斗はアサシン、瑛士はナイトとしてね。

召喚された日に戻れたのは良かったけど、異世界で授かった能力はそのままだし、神様からのご褒美に彼らが願ったのは「またこのパーティーで異世界で魔王討伐をしたい」だの「パーティーメンバーが不老不死になる」だので、私と瑛士が高校を卒業したら他の世界に召喚されては魔王や魔獣と戦う生活を送る事になってるし、学生の間はバイト聖女なの。

でも、勇者だけは別。

私達はどの世界にも順応する体を得てるけど、勇者はその世界の為だけに存在しないといけないから召喚されるか選ばれるか覚醒するかを待つしかない。
それも事前に分かるからいいけど。

「勇者が来る前に腹拵えしようか」

「買い物も!女の子は身嗜みが大切だものっ!」

「リクったらそればかり。緋奈様を困らせないでちょうだい」

「あら!ウミだって妖艶なお姉様な戦闘服ばかりじゃないのぉ」

「お嬢様が願ってくれたおかげで好きな服が着られて幸せね」

「ホントよね!緋奈様大好き!」

私の願いは海斗と陸斗が女性になれるようにで、元の世界では無理だけどリクとウミとしてなら大丈夫だと言われたの。

2人共が女性の心を持っていたが為に、鈴森家の護衛として認められずにいたのを私がもらった私だけの専属護衛。
リクが武芸に秀でているのもウミが隠密行動や暗殺に長けているのも元の世界と同じで、私は彼らの能力の高さも優しくて楽しい性格も全てが好きで愛おしい。

「全く、あの2人はいつも楽しそうだよね」

「そうね。瑛士もたまには自分で選べば?」

「僕は君達に選んでもらえるのが嬉しいから」

ニコニコ笑う瑛士は六平家ではスペア扱いで、8歳で馬鹿の身長を抜いたのにそれでもお古を着せられ続けた。

馬鹿の趣味は派手で、爽やかな瑛士には合わないものばかりな上に、今の瑛士は187cmで馬鹿は170cm。
着れる筈がないでしょうが!という事で、お直しとリメイクが私の趣味の一つになったわ。

私は私で一人娘、帝王教育的なものをやらされて抑うつした生活を送っていて·····婚約者はあの馬鹿だし、弟が生まれた途端お役御免でキレてたしね。

あの召喚で全員の全てが変わったから神様には感謝しかないし、卒業したらずっと4人でこの生活ができるから楽しみよ。

さて、新しい勇者が来る時間ね。

嫌な奴だったら、あの馬鹿とヒロインのように序盤のボスにしちゃいましょうか。

ふふ、私にはまだ秘密があるの。

私は小学4年生の時にストレス発散になると思って魔王として召喚される事を承諾し、何度も何度も勇者達と戦って来たけど、友人達が勇者パーティーで召喚されたから本物の聖女と立場を交換したの。
友達を傷つけるなんて嫌だもの。

本物の聖女があの佐藤佑美奈で、私と違って性別を変えられた事に魂が耐えられなかったせいで元の世界では佐藤優希也という男性になったわ。

六平家に恨みがあるというのは私が植え付けた嘘の記憶だけど、男でもあり女でもあるのは異世界のせいという事ね。


これは神々にも内緒の話。


これまで演じて来た魔王の力も、新たな魔王の力も全部吸収してるおかげで神々の力なんてぶっちぎっちゃってるから、バレても神様を吸収しちゃうだけよ───前の神様のようにね。




















「ようこそ、勇者」
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