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能天使の苦悩
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あの方のおこした戦争のせいで能天使の仲間達の多くが堕天してしまい、残った私達も上から常に監視されてる。
悪魔と実際に戦う役目を担う能天使は悪魔との接触が最も多くて、今でも監視に耐えきれずに堕天する仲間はいるからね。
私達の次に悪魔との接触が多いのが、魂を途中まで迎えに行くチビ達。
その護衛をするのも私達の役目なんだけど、最近は重い魂が多くて中々上がって来ない魂が多いから気付けば悪魔に取り囲まれてるなんて事もある。
────今のように。
3人の能天使で8人のチビ達を囲むようにして悪魔に対峙したんだけど、今日の相手は最悪すぎる。
「パイモン様·····」
「やあ君達。久しぶりだね」
私達を率いていた方とこんな所で会うなんて最悪すぎるけど、今は天使と悪魔よ!
「あなたがわざわざ出てくるという事は、相当な大物の魂という事なのでしょうね」
「ふふ、それはどうかな?ねえ、ミルリム。君はまだ私の所へと堕ちて来てくれないのかな?」
「いい加減に勧誘するのはやめて頂けませんか?そのせいで要注意天使としてラファエル様とカマエル様に鈴まで付けられてるんですからね!ラジエル様にはいつも見られてるし散々ですよ!」
「おや、私の物に2人がかりで鈴をつけたのかい?最初に君に鈴をつけたのは私なのに酷いなあ」
「は?」
「堕天する直前に、君に可愛い鈴をつけたんだけど気付かなかったみたいだね」
そんなものがどこにあるのかと、つけられそうな場所を探しても見つからない·····騙された?
「私がここに来たのはね、今日こそ君を連れて行こうと決めたから。さ、諦めて私と共に行こう」
「絶対に嫌です!」
守りながら悪魔と戦うのは難しいけど、魂にチビ達の光さえ当たればその時点で私だけの勝ちだと知っているから、パイモン様を除いて20体はいる悪魔達と戦い倒して行く───てか、ニヤニヤとこっちを見るのはやめてもらえませんかね!
最後の悪魔を倒して仲間と共にパイモン様に斬り掛かろうとしたその時、チビ達の光が魂に届いてくれたからホッとして其方を見ると、人間の魂ではあるのだけどよく知る気高さを持つ魂が上がって来て私達は息を呑んだ。
その隙をついたパイモン様は、私と·····ウリエル様によく似た気高さを持つ魂を掴んで一気に魔界へとかけ戻る。
「ちょ、離してよ!チビ達の光が当たった魂を連れ去るのはルール違反でしょうが!」
「其方が勝手に決めたルールを悪魔に押し付けられても困るな。守るべきであっても、欲しいものが2つ共手に入る機会を私が逃す筈はないだろう」
「意味が分かりません!」
「妻にしたいとずっと願った者と恩寵を捨てて人間になった友人だよ。君は分かっているのだろう?この魂はウリエルだよ」
「ウリエル様が恩寵をお捨てになる筈がありません!」
「正確にはアリエルに呑み込ませたんだけどね。それを罪人達から聞いて歓喜したよ。しかも、彼の魂を迎えに行ったら君もいるし、父は私の味方をしたと思ったね」
「そんな事がある筈ないわ」
そうよ、父がそんな事をする筈がないもの。
私をお見捨てになるなんて事は·····いえ、本当にそうなの?
私は今日の任務に参加する予定はなかった。
担当者がラファエル様に呼ばれたから、カマエル様が私に行けとお命じになって急遽来る事になったのよ。
あの方達は私と人間になったウリエル様を天界に入れない為に、パイモン様に私達を引き渡したの?
其れを命じる事ができるのは父だけ。
「ああ、翼が良い色になってきたね」
パイモン様の嬉しそうな声に自分の翼を見ると、片翼が漆黒に染まっていて思わず悲鳴をあげた。
「これまで盲目に信じて来た父に、君が不信を抱いたという証拠だよ。なんて美しい黒なんだ───」
うっとりと漆黒に染った方の翼を見ていたパイモン様は私達を抱いたまま魔界に入り、そして大きな城へと案内したわ。
「ようこそ、四界王の1人にして西の王たる我が城へ。これから悠久の時を私とここで暮らす君達には敬意を表するよ」
美しい女性の顔で笑うパイモン様は、ウリエル様の魂から記憶を奪いどこから出したのか肉体を与えて自分の息子とした───その母は私。
ユーリィと名付けられた聡明で気高いウリエル様は、地獄の罪人達は彼の足音を聞くだけで怯え、魔界の住人達は歓喜する、そのように完璧な美しき魔王子に成長したけれど、善と悪の狭間にいる私の翼は黒と白のままでそれを不審がるユーリィの進言により彼から遠ざけられる事になった。
パイモン様は、これでやっと自分だけの物にできると喜んで私を遠ざけたの。
元天使で人間で現在は魔王子となった貴方がどんな存在になるのか、私はそれを見る事はできないけど·····願わくば彼の魂に救いを。
アリエル様に呑み込ませた恩寵がウリエル様の元へと戻りますように───。
この暗闇の中から祈っているわ。
悪魔と実際に戦う役目を担う能天使は悪魔との接触が最も多くて、今でも監視に耐えきれずに堕天する仲間はいるからね。
私達の次に悪魔との接触が多いのが、魂を途中まで迎えに行くチビ達。
その護衛をするのも私達の役目なんだけど、最近は重い魂が多くて中々上がって来ない魂が多いから気付けば悪魔に取り囲まれてるなんて事もある。
────今のように。
3人の能天使で8人のチビ達を囲むようにして悪魔に対峙したんだけど、今日の相手は最悪すぎる。
「パイモン様·····」
「やあ君達。久しぶりだね」
私達を率いていた方とこんな所で会うなんて最悪すぎるけど、今は天使と悪魔よ!
「あなたがわざわざ出てくるという事は、相当な大物の魂という事なのでしょうね」
「ふふ、それはどうかな?ねえ、ミルリム。君はまだ私の所へと堕ちて来てくれないのかな?」
「いい加減に勧誘するのはやめて頂けませんか?そのせいで要注意天使としてラファエル様とカマエル様に鈴まで付けられてるんですからね!ラジエル様にはいつも見られてるし散々ですよ!」
「おや、私の物に2人がかりで鈴をつけたのかい?最初に君に鈴をつけたのは私なのに酷いなあ」
「は?」
「堕天する直前に、君に可愛い鈴をつけたんだけど気付かなかったみたいだね」
そんなものがどこにあるのかと、つけられそうな場所を探しても見つからない·····騙された?
「私がここに来たのはね、今日こそ君を連れて行こうと決めたから。さ、諦めて私と共に行こう」
「絶対に嫌です!」
守りながら悪魔と戦うのは難しいけど、魂にチビ達の光さえ当たればその時点で私だけの勝ちだと知っているから、パイモン様を除いて20体はいる悪魔達と戦い倒して行く───てか、ニヤニヤとこっちを見るのはやめてもらえませんかね!
最後の悪魔を倒して仲間と共にパイモン様に斬り掛かろうとしたその時、チビ達の光が魂に届いてくれたからホッとして其方を見ると、人間の魂ではあるのだけどよく知る気高さを持つ魂が上がって来て私達は息を呑んだ。
その隙をついたパイモン様は、私と·····ウリエル様によく似た気高さを持つ魂を掴んで一気に魔界へとかけ戻る。
「ちょ、離してよ!チビ達の光が当たった魂を連れ去るのはルール違反でしょうが!」
「其方が勝手に決めたルールを悪魔に押し付けられても困るな。守るべきであっても、欲しいものが2つ共手に入る機会を私が逃す筈はないだろう」
「意味が分かりません!」
「妻にしたいとずっと願った者と恩寵を捨てて人間になった友人だよ。君は分かっているのだろう?この魂はウリエルだよ」
「ウリエル様が恩寵をお捨てになる筈がありません!」
「正確にはアリエルに呑み込ませたんだけどね。それを罪人達から聞いて歓喜したよ。しかも、彼の魂を迎えに行ったら君もいるし、父は私の味方をしたと思ったね」
「そんな事がある筈ないわ」
そうよ、父がそんな事をする筈がないもの。
私をお見捨てになるなんて事は·····いえ、本当にそうなの?
私は今日の任務に参加する予定はなかった。
担当者がラファエル様に呼ばれたから、カマエル様が私に行けとお命じになって急遽来る事になったのよ。
あの方達は私と人間になったウリエル様を天界に入れない為に、パイモン様に私達を引き渡したの?
其れを命じる事ができるのは父だけ。
「ああ、翼が良い色になってきたね」
パイモン様の嬉しそうな声に自分の翼を見ると、片翼が漆黒に染まっていて思わず悲鳴をあげた。
「これまで盲目に信じて来た父に、君が不信を抱いたという証拠だよ。なんて美しい黒なんだ───」
うっとりと漆黒に染った方の翼を見ていたパイモン様は私達を抱いたまま魔界に入り、そして大きな城へと案内したわ。
「ようこそ、四界王の1人にして西の王たる我が城へ。これから悠久の時を私とここで暮らす君達には敬意を表するよ」
美しい女性の顔で笑うパイモン様は、ウリエル様の魂から記憶を奪いどこから出したのか肉体を与えて自分の息子とした───その母は私。
ユーリィと名付けられた聡明で気高いウリエル様は、地獄の罪人達は彼の足音を聞くだけで怯え、魔界の住人達は歓喜する、そのように完璧な美しき魔王子に成長したけれど、善と悪の狭間にいる私の翼は黒と白のままでそれを不審がるユーリィの進言により彼から遠ざけられる事になった。
パイモン様は、これでやっと自分だけの物にできると喜んで私を遠ざけたの。
元天使で人間で現在は魔王子となった貴方がどんな存在になるのか、私はそれを見る事はできないけど·····願わくば彼の魂に救いを。
アリエル様に呑み込ませた恩寵がウリエル様の元へと戻りますように───。
この暗闇の中から祈っているわ。
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