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彼女は少ししか知らない
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私は朝日奈彩未。
16歳の時にお父さんから出生について説明されたわ。
「子供が欲しかったお母さんは心の中で妊娠してね、周囲にも赤ちゃんが出来たと言って回りお腹には詰め物をして出かけていたんだよ。でもね、中々生まれて来ないから皆が怪しみだして外に出れなくなった頃に、庭に生まれたばかりの彩未が現れたんだ」
「お父さん·····全然意味が分からない」
「うん、実際に見てたお父さんにも意味が分からないんだけど、家族が出来た事だけは理解したよ」
「それでいいの!?」
「いいんじゃないかな?皆が幸せ、これが一番だよ。お母さんは彩未を本当の娘だと信じてるし、3年後には龍樹も生まれた。お父さんは今の幸せは全部彩未のおかげだと思ってるんだよ」
う、うん。
それは良かったね?
自分が本当の娘ではない事よりも、庭に突然現れた事の方がよっぽど衝撃的で悲しむ余裕なんてなかったよ。
その時はね·····。
18歳の誕生日に私の世界は変わった。
空を飛ぶ天使に悪魔、お化けに妖精というような生き物が見えるようになり、その頃から姿が変わらなくなって妙な力が使えるようになったの。
こんな事を人に話し合たら頭がおかしくなったと思われるから、誰にも何も言わずに気のせいだと思い込んで普通の学生生活を送って、家から離れたら見えなくなるかと思ってこっちに出てきたけど、変わる事はなかったけどね。
大学を卒業して一般企業に就職して3年後、私を知る全ての人達の頭の中から私の存在が消えたの。
親に電話したら「どちら様ですか」だし、出社したら「関係のない方の立ち入りは禁止です!」って顔見知りの警備員に追い出され、仲良かった子達や慕ってた上司に声をかけたら「君はまだ高校生だろう。早く学校に行きなさい」って言われて、ガラスに映る自分を見たらこの沿線の有名な学園の制服を着た中学時代の私がいたわ。
ええ、今の私。
住んでいたマンションに帰ろうとしたら黒塗りの凄い車の前に運転手さんがいて「お嬢様、ここに何かご用が?」ですって。
それで会社の方を見たら、さっき追い出されたばかりだというのに、何事もなかったかのように出社して行くのよね。
変でしょ?
その日から私の名前は朝日奈彩未から紫之宮彩未になって、中等部の1年生からやり直して高等部の卒業式が終わってこの門から出るとね───みーんな私を忘れるの。
苗字とか大きな屋敷に一人暮らしなのとかの設定はそのままなんだけど、私の年齢だけが18歳から12歳に戻るのよ。
後輩は先輩になって、先生は同じだけどやっぱり私を忘れてるから初めましてよ。
これをね───もう121回も繰り返してるの。
そ、726年もね。
変わらないのはこの学園の名前だけでね、家すらも姿を変えるんだから面白いでしょ。
寂しくはないわよ?
なぜか皆が私の事を好きになってくれるから、6年間は楽しく過ごせるの。
街並み?それは凄く変わったわよ。
いつ生まれたのか·····それ聞いちゃう?
1999年10月5日、これが私の誕生日。
理由なんて知らないし、今更知ろうとも思わないわ。
さ、そろそろ門をくぐりましょうか。
トンと足を一歩踏み出すと、隣で泣いていた筈の友人達が不思議そうな顔で私を見る。
「あの·····中等部の子かな?今日は高等部の卒業式だから中には入れないわよ」
「はい、よく知ってます」
「ふふ、私達にもこんな頃があったわね」
「勉強は大変だけど、良い友達がたくさんできる事は保証するわよ」
「そうね、私達もここでたくさんの思い出ができたものね」
「皆さん、とても仲良しなんですね」
「ええ、そうなの。いつも5人一緒にいたわ」
「そうよね、5人で·····あら?4人しかいないわね」
「そういえばそうね。どうして5人だと思ったのかしら」
「まぁいいじゃない!もしかしたら学園の精霊と友達になったのかもだし!」
「そうね、そうだわ。じゃあそろそろ帰りましょうか。あなたも気をつけて帰ってね」
「ありがとうございます」
去って行く4人を見送り、私も車に乗り込む。
初めて会う運転手に指示をして真っ直ぐ屋敷に帰ると、和風だった家は最初の洋館になっていた。
お手伝いさん達も全員新しい人になっているのもいつもの事だから、動じる事は全くない。
不思議な事に小学生には戻らないのよね。
だから、この1ヶ月と少しは12歳の自分に慣れる事から始めるリハビリ期間。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「ただいま」
さあ、また新しい6年を始めないと。
私は何も知らない。
でも、この6年を過ごす事に何か理由がある事と、こうする事で私を守っている誰かがいる事だけは知ってる。
16歳の時にお父さんから出生について説明されたわ。
「子供が欲しかったお母さんは心の中で妊娠してね、周囲にも赤ちゃんが出来たと言って回りお腹には詰め物をして出かけていたんだよ。でもね、中々生まれて来ないから皆が怪しみだして外に出れなくなった頃に、庭に生まれたばかりの彩未が現れたんだ」
「お父さん·····全然意味が分からない」
「うん、実際に見てたお父さんにも意味が分からないんだけど、家族が出来た事だけは理解したよ」
「それでいいの!?」
「いいんじゃないかな?皆が幸せ、これが一番だよ。お母さんは彩未を本当の娘だと信じてるし、3年後には龍樹も生まれた。お父さんは今の幸せは全部彩未のおかげだと思ってるんだよ」
う、うん。
それは良かったね?
自分が本当の娘ではない事よりも、庭に突然現れた事の方がよっぽど衝撃的で悲しむ余裕なんてなかったよ。
その時はね·····。
18歳の誕生日に私の世界は変わった。
空を飛ぶ天使に悪魔、お化けに妖精というような生き物が見えるようになり、その頃から姿が変わらなくなって妙な力が使えるようになったの。
こんな事を人に話し合たら頭がおかしくなったと思われるから、誰にも何も言わずに気のせいだと思い込んで普通の学生生活を送って、家から離れたら見えなくなるかと思ってこっちに出てきたけど、変わる事はなかったけどね。
大学を卒業して一般企業に就職して3年後、私を知る全ての人達の頭の中から私の存在が消えたの。
親に電話したら「どちら様ですか」だし、出社したら「関係のない方の立ち入りは禁止です!」って顔見知りの警備員に追い出され、仲良かった子達や慕ってた上司に声をかけたら「君はまだ高校生だろう。早く学校に行きなさい」って言われて、ガラスに映る自分を見たらこの沿線の有名な学園の制服を着た中学時代の私がいたわ。
ええ、今の私。
住んでいたマンションに帰ろうとしたら黒塗りの凄い車の前に運転手さんがいて「お嬢様、ここに何かご用が?」ですって。
それで会社の方を見たら、さっき追い出されたばかりだというのに、何事もなかったかのように出社して行くのよね。
変でしょ?
その日から私の名前は朝日奈彩未から紫之宮彩未になって、中等部の1年生からやり直して高等部の卒業式が終わってこの門から出るとね───みーんな私を忘れるの。
苗字とか大きな屋敷に一人暮らしなのとかの設定はそのままなんだけど、私の年齢だけが18歳から12歳に戻るのよ。
後輩は先輩になって、先生は同じだけどやっぱり私を忘れてるから初めましてよ。
これをね───もう121回も繰り返してるの。
そ、726年もね。
変わらないのはこの学園の名前だけでね、家すらも姿を変えるんだから面白いでしょ。
寂しくはないわよ?
なぜか皆が私の事を好きになってくれるから、6年間は楽しく過ごせるの。
街並み?それは凄く変わったわよ。
いつ生まれたのか·····それ聞いちゃう?
1999年10月5日、これが私の誕生日。
理由なんて知らないし、今更知ろうとも思わないわ。
さ、そろそろ門をくぐりましょうか。
トンと足を一歩踏み出すと、隣で泣いていた筈の友人達が不思議そうな顔で私を見る。
「あの·····中等部の子かな?今日は高等部の卒業式だから中には入れないわよ」
「はい、よく知ってます」
「ふふ、私達にもこんな頃があったわね」
「勉強は大変だけど、良い友達がたくさんできる事は保証するわよ」
「そうね、私達もここでたくさんの思い出ができたものね」
「皆さん、とても仲良しなんですね」
「ええ、そうなの。いつも5人一緒にいたわ」
「そうよね、5人で·····あら?4人しかいないわね」
「そういえばそうね。どうして5人だと思ったのかしら」
「まぁいいじゃない!もしかしたら学園の精霊と友達になったのかもだし!」
「そうね、そうだわ。じゃあそろそろ帰りましょうか。あなたも気をつけて帰ってね」
「ありがとうございます」
去って行く4人を見送り、私も車に乗り込む。
初めて会う運転手に指示をして真っ直ぐ屋敷に帰ると、和風だった家は最初の洋館になっていた。
お手伝いさん達も全員新しい人になっているのもいつもの事だから、動じる事は全くない。
不思議な事に小学生には戻らないのよね。
だから、この1ヶ月と少しは12歳の自分に慣れる事から始めるリハビリ期間。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「ただいま」
さあ、また新しい6年を始めないと。
私は何も知らない。
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