天使達の憂鬱

樹林

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天使達の憂鬱

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「·····で?」

「恩寵を何とかして会議室に行ったら3人がいなくなってたのよ」

「どこに行ったの?」

「知る筈ないじゃない!私は今までここにいたのよ?」

「他の天使達は?」

「知らないって·····」

溜息をつくラジエルの肩をポンと叩いてから部屋を出て、天界中を見回して探したけどミカエル達は見つからなかった。

「完全に気配を絶ったわね·····さすが三大天使。私にも分からないわ」

天界の端まで一緒に来たラジエルにそう伝えると「やっぱりね」と深ーい溜息をまたついたわ。

「ウリエルを探しに行ったのかしら」

「それだけであの3人まで動くと思う?」

「·····思わない」

「あの3人·····ウリエルも合わせれば4人の共通点って何かないのかしら」

「共通点?」

「そう、彼らが好きな物、執着してるもの、何でもいいわ。ああ、父も黙認してるなら父のお気に入りとかも?」

そんなの1人しか思い浮かばないけど、彼女は堕天したし·····でも、もしも彼女が堕天ではなく下界にいるとしたら?

「ラミエルが人間になっていたら、彼らはすぐにでも動くでしょうね」

「ちょっと!ラミエルの話はダメよ?やっと落ち着いたのにまたどんよりするでしょ」

そうよ。

私もかなり落ち込んで、彼女と仲の良かったウリエルに依存してなんとか立ち直ったのだから。

「ラミエルが生きているならウリエルはいらない」

「ウリエルにお世話になったんだから、そんな事を言っちゃダメよ!?」

雲の切れ間からうっすらと見える下界を見下ろし、その身を投げ出した·····ラジエルをしっかりと掴んだままでね。

「な、何すんのよおおおおおお」

「2人で探した方が効率いいでしょ」

「アダムに渡した本を取られてから下界には行ってないの!」

「あはは、私は初めてよ?諦めて一緒にラミエルを探そうよ」

「いやあああああああ!」



その後、残された大天使と天使達は大混乱に陥ったのは言うまでもなく────。

「なあ、ミカエル様やガブリエル様はどこに行かれたんだ?」

「知る筈ないだろ·····」

「カシエル様がヤバい位にキレてるから僕も消えたい·····父まで消えたという噂もあるし、もしかして天界終了?」

「いや、チビ達が鳩の姿になった父が下界を飛んでる所を見たと言っていたぞ」

「まさか、全員下界にいるのか?」

「悪魔と戦ってるのかもしれないな·····」

「大天使が自ら戦いに行く 悪魔とはまさか!」

普段なら絶対にありえない勘違いをした天使達は、それをカシエルに報告してしまい、全員の仕事を負う事になり疲れ果てていた彼らもうっかりそれを信じてしまうという状況に陥っていた。

伝言ゲームのように伝わったそれは、最終的に「黙示録が始まる」とまでなったという。


「ラッパはいつ鳴るんだ!」

「それに備えて鍛錬しているんだろう!」

「急に始まったら困るよ」

「いつ来ても良いように備えないと」

「魂の受け入れ場所の確保は進んでるのか?」

「それは大丈夫」

「永遠に父に仕える事ができる場所なんだから、快適に過ごせるようにしないとね」

「「でもいつ来るんだろう·····」」

こんな風に天使達は毎日のように溜息をつき、ミカエル達の帰りを今か今かと待っているが、その帰りが2000年後になるというのはまだ知らない。

ミカエル、ガブリエル、ラファエルの3人は、信心深い人間の体を借りて学園に通い、魔王子となったウリエルと邪悪な魂を持つ人間と火花を散らしながらも彩未と共に楽しく毎日を過ごしていて、その彩未は6年毎のループ仲間が出来た事を素直に喜んでいるが、それはまた別のお話。


一方、アリエルとラジエルはというと、日本は数多の神が存在するからここにはいないだろうと見当違いの場所を探しているという。


「もう帰りたい·····」

「ダメよ!ラミエルを見つけるまでは絶対に帰らないんだから!」

「だからって鎖を巻く必要はないでしょうが!」

「すぐに逃げようとするからでしょ?」

「父よ·····この単細胞を何とかして下さいよ。あれだけウリエルウリエル言ってたくせにラミエルがいるという可能性だけで突っ走るとかありえないし!」

「ウリエルなんて堅物よりラミエルよ!」

「この子ひどすぎるうううううう!」


可哀想なウリエルが恩寵を取り戻す事ができたのか、彩未がラミエルとしての記憶を取り戻す事ができたのかは神のみぞ知る。
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