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第一章

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宮ノ森君は常に百合と一緒で、宮ノ森君と仲の良い鷹司君と私はもその流れで一緒に行動するようになった。

「桜純が来てくれて良かったよ。こいつ、長年の片想いが実ってうるさくて仕方なかったんだよ」

「私は彼氏ができたなんて聞いてなかったから、とても驚いているの。ね、百合」

「驚かそうと思って、ごめんね?」

そう言って笑う百合の隣には、椅子をくっつけて百合の肩を抱く宮ノ森君。これは相当惚れ込んでるのね。
女子生徒の目は怖いけど・・・。

「初等部の入学式で一目惚れして10年だぞ?うるさくて何が悪い」

ふんぞり返る宮ノ森君は、見た目は軽そうだけど中身はとても純情みたい。鷹司君は黒髪で爽やかなイケメンだけど、中身はどうなのかしらね。

「それは凄いわね。百合は知っていたの?」

「全然。しょっちゅうからかってくるから嫌われてると思ってたわよ」

「小学生男子はそういうものなんだよ。好きな子程いじめるってやつな」

「そんなのいらないわよ!」

「そうね、優しい人がいいわよね」

「なんでだよ」と頭を抱える宮ノ森君を見て笑っていると、鷹司君が私をジッと見ていた。百合もそれに気付いてニヤニヤしてるし、とてもやりづらい。
チャイムが鳴って話は終わったけど、その時の私は女子生徒達の視線には気付いてなかったの。

翌日は体育祭の競技決めがあったのだけど。

「はい!竜宮桜純さんがいいと思います」

「そうよね、竜宮さんって足が早そうだし3つくらい出れそうよね」



既に200m走、400m走と推薦されてるのに、今は男女混合リレーも推薦されていて、嫌われたんだろうなと苦笑を浮かべながら断ろうとした時、百合が立ち上がったの。

「サーヤは混合リレーと二人三脚、三角さんは400mと仮装リレー、朝原さんは200mと仮装リレーで決定ね。他の走る競技もサーヤを推薦した子達でよろしく。仮装リレーのテーマは動物園なんてどう?三角さんはブタ、朝原さんはカバが似合いそうよね」

「竜宮様、それは横暴ではないですか?」

「そっそうよ。推薦しただけじゃない!」

「ひどいわ、竜宮さん」

前に立つクラス委員と私を推薦した2人が言うと、百合はクスッと笑ってからバンッと音をさせて両手を机に置いた。

「サーヤが3つも推薦されたのに何も言わなかったあなたがそんな事を言う権利ある?サーヤとは血の繋がりはないけど、うちの娘で私の妹なのよ?母が聞いたら怒るでしょうね。サーヤは私の命の恩人だから溺愛してるのよ」

百合は前の席だから表情は見えないけれど、キラキラした瞳で百合を見つめる宮ノ森君以外の生徒達は顔色をなくしてるから、きっと怖い顔をしてるんでしょうね。

ところで、命の恩人ってどういう意味なのかしら。

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