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第二章

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「桜純は自分の場所に帰った」

白しかない場所で、僕と創星は桜純がもういない事を告げられた。
何も知らない創星は薄紅さんに掴みかかり、その理由を聞き出そうとしているけど、僕にはもう桜純に会えないという予感めいたものがあった。
学園長室の近くで別れた時、桜純は泣きそうな顔で笑って僕から離れて行ったからね。

そして、僕は彼にも思う所がある。

「何故なんですか!僕はまだ桜純に謝罪もできていないのに」

そう言って涙を流す創星を初めて見た時、僕はなぜか「あれは僕だ」と感じ、その考えを打ち消す為に桜純を急かして先を急いだ。

「薄紅さん、聞きたい事があります」

その時、創星が初めて僕を見たんだけど、その瞳に驚愕が浮かんでいるから、多分僕と同じ事を思っているんだろう。

「なんだ」

「僕と創星は同じ人間ですか?」

薄紅さんはポリポリと頭を掻きながら、何と言おうか悩んでいるようだったけど、僕と創星を見てから後ろを向いてブツブツ言い始めた・・・。

「あの?」

「お前らは魂を引き裂かれたんだ。全部教えてやるよ。そこに座れ」

薄紅さんが指をさした先には白い椅子ができていて、僕らは隣の席に座って薄紅さんを見た。

「蒼は聞いてるよな。お前が徳を積んだ魂だと」

「はい」

「それは半分正解で半分不正解なんだ」

「どういう意味でしょうか?」

「お前達は神になる資格を得て、この世界の神になる予定だったんだが、それを妬んだある女がお前達が魂となり神となるべく眠っていた時に2つに裂いた。人間の部分だった蒼は向こうの世界へ、神になっていた部分はこの世界の半神として産まれたんだ。で、その女は堕とされて悪となし、今回の諸悪の根源となってるんだ」

「僕達はまた1つに戻ってその女を倒すんですか?」

「桜純は無意識にその女が関わった世界に行くから自ずとそうなるだろうな。そこでお前達に選択肢をやろう。神になるか人として生き人して輪廻の輪に戻るかだ」

「「神になる為に使います」」

「だってよ、恵比寿」

そう呼ばれて出てきたのは僕の祖父だったけど、分かっていた事だから驚く事はなかったよ・・・本来の姿になるまでは。
創星は椅子から落ちそうになっていた位だから、相当なインパクトがあると思う。

「すまんな、ここではこっちの方が楽でな。それで、蒼生は神になるのだな?」

「同じ名前?」

「そうだ、漢字は違うがな」

ここに来て、まだ名乗りあってもいない事に気付き、僕らは改めて名乗りあい、話を進めてもらったけど。

神になる間も、桜純の産まれる時代へ行けるのも、同じ歳の似たような身分に産まれるのも嬉しいけど、記憶が戻る条件が厳しすぎないかな?

僕と創星は顔を見合わせて溜息をついた。


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