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序章

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私達は庭園の裏から回って逃げようとしたのだけど、もう少しというところで、王太子に心酔している唯一の側近が現れた・・・彼はプリシラの天敵でもあるの。

「おや、ネイト。コーラルバイン公爵令嬢もご一緒ですか。こんな所からどこへ行くつもりですか?」

「ごきげんよう、ビクター・コランザム様。貴方は招待状をお持ちなの?招待状もなくこんな所まで入り込むのは無作法ですわよ?コランザム男爵家ではそういう躾をされませんの?」

いくら王太子と一緒に来たと言えど、招待客でもないのにこんな奥にまでホイホイ入って来るのはおかしい。

ビクターは眉と口元をヒクヒクさせながら私を睨みつけてきたけれど、プリシラが私の横に並んでニヤリと笑った事で完全に頭にきたみたいね。

「王太子殿下のお供として参りましたので、あなた方に招待状の心配をして頂く必要はありませんよ」

「まあ、王太子殿下は招待状をお持ちなのね!ビクター様はお供ですのよね?王太子殿下から離れていてもよろしいのですか?お供なのに役に立たないなんてお笑いですわね!そういえば、剣をふるう事もできないのでしたわよね。オーホホホホ」

プリシラが悪役令嬢笑いをするのはビクターの前でだけ。この2人の仲の悪さの始まりは、ビクターがプリシラに振られた事からで逆恨みしたビクターがプリシラの悪口を吹聴したり、自分が振ったと言ったりと最低男世界代表という感じになったせい。
自由恋愛が推奨されているとは言え、高位貴族と下位貴族はそんなに簡単にはお付き合いできないのに、そういう事も理解できないのかしら。

プルプルと肩を震わていたビクターは、プリシラに掴み掛かろうとしたけれど、アンナにあっさり取り押さえられた挙句、多くの貴族達に目撃されるという情けない状況にあるにも関わらず、ガーガー喚き続けていたの。

こんなのがルチル学園の同級生だなんて、考えたくもないわ。
第二王子は成長すれば何とかなるだろうけど、側妃のシーナ様が王妃様の暗殺を計画してるという噂もあるから近寄りたくはないわね。

「アリスティア様、遅くなって申し訳ありません。イレーヌ様より警護を仰せつかりましたので裏口に案内します。皆様も静かに移動をお願いします」

カイヤ公爵家の騎士が来てくれたから、私達はとっとと退散する事にしたわ。ビクターは不法侵入者として連れて行かれたから安心ね。

学園に入学すれば寮生活が始まるし、数年は大人しくするように提案する方がいいわね。

入学すればゲームの開始だけど・・・。

遠隔操作で管理できるようにしてきたのだから、人としての寿命を全うしたいし、なるべく穏便に終わらせないとね。
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