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第一章

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寮の入口でヨランダ王女は目を覚まし、まだ赤い頬を両手で隠しながら転移陣で行っていったわ。
残された私達は、苦笑しながらお別れの挨拶をしてそれぞれ部屋へと戻ったの。

制服を着替え、メイド達に魔法科の説明をして大判のスカーフを用意してもらって終了。

『白銀』

『へい!』

『へいって何よ。そっちはどんな感じなの?』

『あー、タバサは初日やのにトラブルメーカーになっとるで。頭に花を咲かしとる王太子に近寄ろうとして令嬢らと喧嘩になっとる。ダイアクロスの子らは近寄らんけど、他国の令嬢はあの王太子のこと狙とるわ。第二王子も結構モテとるで。後なぁ、ニーナって奴も要注意かもしれんわ。自分はヒロインやとか言うとる』

『魔法科に来たのよ。ヒロイン補正とやらで転移陣が誤作動を起こしたみたいよ。リオンもショーン殿下も一言も話さなかったけどね』

『あー、あの女がおらんなったてこっちのがあわてとったわ。ほな、まだ見張るさかいまたなー!』

『ええ、よろしくね』

『おう!』

タバサがニーナに色々吹き込んだせいで、ヒロインとしての自覚が出て来てしまったようだけど、魔法科に来るなんてシーンはないからニーナの独断なのでしょうね。ウイルスが彼女にも手を伸ばせばめんどくさい事になるわね。

ゲームでは2年生から本格的に始まるから、それに忠実にするなら1年ある。
学年旅行がメインイベントで、3年生の卒業パーティーの席でヒロインが選んだ攻略対象がそれぞれの悪役令嬢を断罪する。

卒業パーティーでだなんて、他の生徒達に迷惑じゃない?お花畑ならやりそうだけど、考える事のできるリオンやショーン殿下はしないと思うわ。

タバサはゲームの世界だと信じきっているのは分かる。過去を遡って見てみると、お茶会の席でニーナに「あんたがヒロインね。その場所を私にちょうだいよ」と言ったのが6歳、「モブ令嬢が全員かっさらっていく話も人気があるのよ。私はそうしてみせるわ」と言ったのが13歳。

タバサはゲームを壊して攻略対象達を自分のものにしようとしているけれど、この世界はゲームに似ているだけの世界。この世界にいた誰かが、それを潜在意識の中でおぼえていてゲームにしただけ。

それが理解できないのなら、ウイルスがついていてもいなくても処罰の対象になるわね。
もしも改心しなければ、彼女も揚羽の従者にしましょう。人数が増えればあの子も喜ぶでしょうし。
そうね、それが一番いいわ。
色んな世界を見ていく過程で、彼女達の心に誰かを思いやる気持ちが芽生える事を祈って。

揚羽の事も愛してくれる事を祈って───。
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