6 / 59
6.洗濯
しおりを挟む朝食後裏庭で同室の先輩とペアで洗濯する為に昨日脱いだ服を持った同期が十人全員集まった。
入団式では緊張していたので、まともに同期の顔も名前も覚えていない。
その中で一人だけ知っている人物が居た、アルフレート・フォン・オレインブルク、伯爵家の四男で俺より一つ上の十一歳。
親が伯爵同士という事もあり、四歳くらいから家族ぐるみで交流があるが、現在は呪詛をかけそうな眼で俺を睨んでいる。
幼少の頃の俺はブリジット姉様の希望で髪を伸ばして男が着るにはちょっとヒラヒラした服を着せられていた、ベタな展開だが女の子と間違えて四歳の俺に一輪の花を渡したのがアルフレートだ。
俺が男と知って以来、顔を合わす度に「初恋を踏みにじった」「髪を伸ばして女みたいで紛らわしい」と難癖をつけてきたので八歳のある日、俺はキレてアフルレートの目の前で縛ってあった髪をテーブルにあった果物ナイフで結び目の上からザックリ切り、髪の束を投げつけてやったのだ。
その時えらくショックを受けた顔をしていたが、その日から文句を言わなくなったが恨みがましい眼でじっと見てくる様になった。
きっとブリジット姉様からたっぷり文句を言われたに違いない。
睨まれるのはいつもの事なので放置して訓練官の話に集中する。
「よし、皆集まったな。 俺はアルバン三十六歳の訓練官だ。 お前達がウチの長男と同じくらいの年齢だからって事で去年から訓練官の任についている。」
短い緑の髪にトパーズの様な黄色い瞳を細めて笑う、とても優しそうな人だ。
「早速だが新人で水魔法が使える奴~?」
聞かれてスッと手を挙げる、アルフレートも水属性を持っているので手を挙げていた。
「ふむ、今年は三人か…。 この三人は清浄魔法を覚えてもらったら同期の服の洗浄係になってもらうからそのつもりでいてくれ、他の者も適性に合った係が割り振られるから見習いの間は頑張れよ」
先輩達が桶を新人達の前に置く。
「水魔法使えるやつは皆の桶に水を半分くらい溜めてくれ」
その言葉に水魔法が使える先輩達と俺とアルフレートはウォーターボールを唱えて次々桶に水を溜めていく。
どうやら同期の一人は属性は持っていても魔力操作ができない様だった。
「えーと、お前名前と歳は?」
「あっ、パウルといいます、十二歳です」
水を出せずにオロオロしている姿を見たアルバン訓練官に聞かれて、弾かれた様に顔を上げて答える。
「まだ魔力操作ができないのか、まぁ平民は家庭教師から習ったりする事は滅多にないもんな、学校でも教えてもらえるから安心しろ」
その言葉を聞いてパウルはホッとした様だった。
「じゃあ、同室の者は洗濯の仕方を各自教えてやってくれ、特に水魔法組は汚れの落ちる過程をしっかり見るように、その様子のイメージ次第で清浄魔法の効率や汚れの落ち具合が変わってくるぞ」
桶に洗剤になる木の実を数粒入れ、先輩達が揉み洗い、振り洗い、擦り洗い、足で踏み洗いなどの洗い方を教えてくれる。
正直汚れの落ち方のイメージは前世の洗剤CMのCGを思い出せば完璧だと思う。
「サミュエル先輩、ちょっと清浄魔法を試してみたいんですけど、いいですか?」
「お、やる気だな、いいぞ試してみろ」
コッソリと先輩に相談してみたら、意外にあっさり許可してくれた。
イメージするのは酵素の力で汚れを浮かせて繊維の奥までキレイに…と、水の性質を変える様に魔力を練り込んで水を弾き飛ばして乾燥までするように…。
「清浄魔法」
ホワリと仄かな光が衣類を包み込む。
「おお、凄いじゃないか! 一発で成功したな!」
パサリと腕の中に落ちて来た衣類は靴下の落ちにくい汚れすら綺麗になって乾いていた。
サミュエル先輩は自分の事の様に喜んでくれて、それがとても嬉しかった。
「お、もう清浄魔法を覚えたのか、優秀だな!」
アルバン訓練官が気付いて褒めてくれた。
「とりあえず魔法は覚えるまでイメージと練習あるのみだ、水魔法使えない奴も洗濯の仕方をしっかり覚えておけよ、じゃないと将来的に朝イチでパンツだけ清浄魔法かけてもらう、なーんて恥ずかしい事になるかもしれないからな? ハハハハ」
ああ、第二次成長期の朝の生理現象ですね、学校に通えば可愛い女の子も沢山いるだろうし。
俺にはまだ先の事だろうから気付かないフリしとこう。
何人かが首を傾げていたので、それに倣って俺もキョトンとした顔で首を傾げておいた、だってまだ俺自身は性教育されてないもんね。
「さ、もう九時半になったから学校へ行く者は片付けて向かう様に、それ以外の者は十時半まで休憩したら基礎訓練をするから中庭に集合だ」
パンパンと手を叩いたアルバン訓練官の合図で各々片付けや移動を始める、俺も片付けたら部屋でゆっくり休もう。
学校はちょっと離れた屋敷から通う貴族もいるので十時からとちょっと遅めの時間に始まる、日本の学校より教科が少ないせいもあるのだろう。
騎士寮から徒歩十分程なのでまだ先輩達も余裕そうだ。
学校へ行く先輩を見送り、清浄魔法を成功させたあたりから今朝よりも鋭い視線を送ってくるアルフレートに気付いたが、難癖つけられる前にそそくさと部屋に戻った。
50
あなたにおすすめの小説
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる