【全59話完結】転生騎士見習いの生活

酒本 アズサ

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27.家族との団欒

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 先触れを出したおかげで実家に着いた時にはエミーリア義姉ねえ様と家令や使用人達が出迎えてくれた。


「カール様、クラウス様、おかえりなさい」
「「「「「おかえりなさいませ」」」」」


 エミーリア義姉様に続いて皆が頭を下げる、なんだかとても長い間会ってなかったみたいに懐かしさがこみ上げて来た。


「「ただいま」」


 カール兄様も久々の帰宅で嬉しそうだ。


「あ、そうだ。 ブリジット姉様の所で一緒にコレを作ったんです、明日のお茶請けにして下さい」


 マジックバックからパウンドケーキを取り出して家令に渡す。


「え? クラウス様が作られましたの?」


 目を瞬かせてパウンドケーキと俺を見比べる。


「いえ、ブリジット姉様とカール兄様も一緒に作ったんですよ」


「ああ、お菓子作りというのは意外に体力が必要で驚いたよ」


 どこか誇らしげに言うカール兄様に、屋敷の皆が驚いていた。
 見た目が如何にも騎士然とした立派な体格の伯爵家の次男がケーキを作ったというのだから。


「ふふ、明日いただくのが楽しみですわ、ありがとうございます。 もうすぐ夕食ですし、アドルフ様も帰って来ますから居間で寛いで下さいませ」


 今まで見た事のない義弟の無邪気な様子に笑みを浮かべ、中へと促す。


 三人で話をして寛いでいると、家令が「旦那様のお帰りです」と報せに来た。
 出迎えようと玄関へ向かおうとすると、家令が開いたまま待っていた扉から俺と同じ紅い髪をしたアドルフ兄様が入って来て、この家を出るまで当たり前だった事…、俺を縦に抱き抱えて頬にキスをした。


「ただいま、いや、おかえりかな?」


 俺もつい今までの様に首にしがみつく形で抱っこされたまま頬にキスをして微笑む。


「おかえりなさい、アドルフ兄様。 入団式以来ですね」


「ずるいぞクラウス、俺にはもう子供扱いするなと言ったクセに…。 アドルフ兄様おかえり」


「ハハ、ただいまカール」


 これはもう習慣みたいなものだったので仕方ないと思う、実際入団する前まで習慣だったし。
 前世を思い出すまではどこの家でも同じだと思っていたくらいだ。
 他所の家族だけの時間なんて見た事も無ければ当然ネットなんて無いから情報もなく、周りに大人達が居るお茶会で家族に抱っこされてるかなんて話題出せなかったし。


「アドルフ様? いくら久しぶりに可愛い弟に会ったからって妻を忘れてしまってはクラウス様に嫉妬してしまいますわよ?」


 ワザとらしく唇を尖らせて拗ねるフリをするエミーリア義姉様、可愛い人だ。


「愛しい君を忘れたりするもんか、ただいまエミーリア」


 俺を片手で抱っこしたままエミーリア義姉様の腰に手を回して引き寄せ、唇にチュッとリップ音を立ててキスをする。
 至近距離で見せられるこっちの身にもなって欲しい。


「アドルフ兄様、せめて俺を降ろしてからにして下さい…。 カール兄様やブリジット姉様にも言いましたが、もう小さい子供ではないのです」


 途端にシュンとしてしまい、寂しいと訴える目を向けてくる。
 その目に「ぅぐっ」と怯んでしまったが、ここで負けたらずっとこのままだと気合いを入れる。


「抱っこしなくなってもアドルフ兄様達の愛情は無くならないとわかっていますから、もちろん俺もずっと愛してますよ? でもこの腕はエミーリア義姉様や今後生まれて来る子供を抱きしめる為に使って下さい」


 両手で頬を挟んで真っ直ぐダークブラウンの瞳を見据えながら言うと、聞き分けの無い子供を見る様な顔で溜め息を吐いて降ろしてくれた。


「クラウスも立派に成長しているんだなぁ、嬉しい様な寂しい様な…」


 グリグリと頭を撫でながらしみじみと呟く。
 大人しく撫でられているとメイドが夕食の準備が出来たと呼びに来た。


 夕食は俺とカール兄様の好物ばかりだったので、久しぶりの我が家の味をじっくり味わいながら食べた。


 アドルフ兄様は騎士団寮での生活を色々聞きたがったので、アルフレートと和解した事や友人が出来た事、サミュエル先輩にお世話になってる事を話した。
 途中からカール兄様がドヤ顔でブリジット姉様に話した噂の事やパウンドケーキを差し入れて貰った事、一緒作って今日持って来た事を話した。


「野営交流会の事なら専門部からの報告書で知っているよ、クラウスの名前が書かれていて驚いたんだ。 しかし、咄嗟に気付いて行動できるなんて凄いな、偉いぞクラウス」


 良かった、どこで知ったとか突っ込まれなくて。
 俺に関しては兄馬鹿フィルターが掛かっているのか褒める事に集中してあまり追求するという考えにならない様だった。


 皆で食後のお茶を居間で飲んでいると、ブリジット姉様からのメッセージカードが届いた。
『クラウスの言う通りだったわ、お兄様達にも教えていいからね』
 との事。


 その事を伝えようとした時、アドルフ兄様が恥ずかしそうに口を開いた。


「二人共…、次の冬にはお前達は叔父さんになるぞ」


 そう言うとエミーリア義姉様の手を握って見つめ合う。


「おめでとうございます! 春頃には従兄弟も産まれそうですし、めでたいですね!」


 にっこり笑ってブリジット姉様からのメッセージカードをヒラヒラさせた。


「まぁ! ブリジット様も妊娠を!?」


「歳の近い従兄弟が居れば良い遊び相手になるだろう、ブリジットも母親になるのか…」


 アドルフ兄様とブリジット姉様も結構歳が離れていて可愛がってたので、感慨深そうに目を細めた。


 控えていた執事に手紙の準備を頼み、四人でブリジット姉様へのお祝いのメッセージと、エミーリア義姉様も妊娠して冬に出産予定だと報せる事にした。


 その後久しぶりにカール兄様と一緒にお風呂に入った。
 家なので当然江戸っ子スタイルで。


「……クラウス? もしかして寮の風呂もその格好で入って行くのか?」


 カール兄様が動揺している。
 やっぱり普通は腰にタオルを巻いて入るのが普通な様だ。
 どうやら今までは家族だけだった事と、俺が小さい子供だったから気にされて無かっただけの様だ。


「他の人がいる時はちゃんと腰にタオルを巻いてますよ」


 初日に江戸っ子スタイルで入って行ってヨシュア先輩に笑われた事は黙っておこう。
 改めてカール兄様の身体を見ると余分な贅肉とは無縁な引き締まった身体に体格に相応しい均整の取れた筋肉、なんて羨ましい。


「俺もカール兄様みたいに逞しい身体になれるでしょうか…?」


 心の中でいつか使う日が来るであろう俺のエクスカリバーも…と、洗い終わった自分の身体を見下ろしてため息を吐く。


「ははは、クラウスはまだ十歳なんだからそんな事で悩むにはまだ早いぞ! まずはよく食べ、よく寝て、よく動け!」


 笑いながらお湯を掛けて泡を流してくれた。
 ヒョイと抱き上げ浴槽に移動させられ、後ろから抱きしめる形になる。


「こうやって一緒に風呂に入れるのも小さい今の内だけだろう、大きくなるまでは可愛いお前を堪能したい。 いつかは腕の中にスッポリ収まらなくなるくらい大きくなるだろうし、この浴槽に二人で入ったら狭く感じる程になるだろうよ」


「それくらい俺も大きくなれるかな?」


 カール兄様が二人この浴槽に入っているのを想像したら笑ってしまった。
 今入っている浴槽は日本の一坪タイプより二回り程大きくて深さもちょっと深い。


 夫婦二人で入るのに丁度いい大きさというところか。


 お風呂から出ると久々の自室のベッドへダイブした。
 石鹸と太陽の香りがする。
 ウチのメイドは優秀だなぁと考えながら意識が睡魔に飲み込まれていった。
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