文字の大きさ
大
中
小
31 / 59
30.昼食
「ふぅ、ジェルマン王太子が来てくれて助かったわ」
食事を取ってきてテーブルに着くと、ため息と共にアレクシアがそう零した。
「あの、でも……第2王子にあのような態度をとって後でお叱りを受けたりしない?」
「大丈夫よ、ジェルマン様が何とかしてくれるわ。それにもし何か言ってくるようなら王妃様に言いつけてやるもの」
心配そうに瞳を揺らすレティシアをよそに、ケロリとした顔でリリアンが言う。
「そうだな、ジェルマン様はアレクシアに感謝していると言っていたし」
「感謝ですか?」
感謝されるような事をした心当たりが無くて、セザールの言葉にアレクシアは首を傾げた。
「ああ、両親以外は大抵思い通りになると思っているところがあったが、アレクシアは思い通りにならないし、思ってもみない反応をするからテオドール様にとっては良い経験になると言っていたからな」
「うふふ、そうね、普通の令嬢なら友人より王子にすり寄ろうとするのが普通だわ。だけどわたくしはアレクのそういう媚びないところも好きよ、見てて気持ちいいもの」
セザールとリリアンはアレクシアを褒めたが、その褒められた本人はヒョイと肩を竦めた。
「だって下手に気に入られて婚約者候補にでもなってしまったら大変じゃない。無駄に嫉妬されたり王族になる心得とか勉強させられたり、公務のお手伝いさせられたり。ただでさえ侯爵家の令嬢という立場でも重責だと思っているのに絶対嫌」
そんなアレクシアの主張を聞いてリリアンとレティシアは苦笑いを浮かべたが、セザールだけは複雑な表情をしていた。
(入学するまでずっとお茶会に呼ばれていたというのに、どうしてアレクシアは自分が王子達の婚約者候補でないと思っているんだろう。既に王妃様の中ではリリアンとアレクシアは婚約者候補筆頭と言っても過言では無いはず。それにしても侯爵家でも重責と思っているのなら公爵家の嫡男である私にも嫁ぐ気は無いと言われた様なものなんだが……本人はその事に気付いていないようだな)
セザールのそんな思いに気付かず、アレクシア達は既に違う話題で盛り上がっている。
ただでさえ細い目を更に細めて楽しげに笑いながら話す姿に、セザールは気付かれないようにそっとため息を落とした。
「それにしてもアレクったら、平民向けの薄味の食事で大丈夫なの? 物足りなくない?」
「私は香草や香辛料の多い料理が苦手なの。家では私とエミールだけ薄味の物を食べていたんだけど、学園ではどうしようかと思っていたら、貴族向けと平民向けの2種類の味付けがあって助かったわ」
学園では平民もいる為、料理は同じだがあまり香辛料慣れしていない平民の為に香辛料控えめな味付けが用意されていた。
高位貴族であるアレクシアが平民向けの味付けの場所から食事を持ち出した時には慌てて料理人が出てきて平民向けだと説明するという一幕があった。
「それに……、あまり味付けが濃いと少ししか食べられないというか……」
何気なくポロリと零したひと言で周りの視線がアレクシアに集まった。
「え……? 味が薄いと多く食べれるの?」
瞳孔が開いたような目を見開いて聞いてきたレティシアに動揺しつつ頷く。
「ええ……と。考えてみたら濃いと少ししか食べられないって事は、逆に言えば薄味の方が多く食べられるって事になる……かしら? あ、そうか、レティは普段あまり食べられないって言っていたものね。平民向けの薄味なら今より食べられるようになるかしら、お行儀悪いけど味見してみる?」
そう言ってチキンの香草焼きを切り分けてフォークに刺すと差し出した。
「はい、あ~ん」
「え、あの、いいの……?」
「もちろんよ、ほら、あ~ん」
「あ~ん、んぐ、もぐもぐ……ごくん。これは……! 物足りないけれど確かにこちらの方が多く食べられそうだわ」
そのひと言で周りが騒ついた、今よりも太りたいと思っている人は多いのだ。
残念ながら既に薄味になっている平民は食堂では、更に薄味の食事は提供されない。
暫く経っても食堂内は騒ついたままだったので、アレクシアは不安になった。
「あの……、セザール様」
「ん? 何だ?」
「先程の話を聞いていた人達は明日から平民向けの食事をするかもしれません、料理人に平民向けの味付けを多めに作るように言っておいた方が良いのでは……。それともこの事は生徒会を通して伝えた方が良いでしょうか?」
(貴族が平民向けの食事食べたせいで、平民が貴族向けの濃い食事食べる羽目になったら可哀想やもんな。薄味が余ったら香辛料追加して濃ぉ出来るし)
アレクシアに話しかけられて嬉しそうにしていたサゼールだっだが、アレクシアの言葉を聞いて真面目な顔になって考え込んだ。
「ふむ、先に料理長に助言しておいて、生徒会長には私から報告しておこう」
「ありがとうございます、お願いしますね」
セザールはホッと胸を撫で下ろすアレクシアの笑顔に思わず見惚れ、やはり諦める事はできないと再確認する事になった。
食事を取ってきてテーブルに着くと、ため息と共にアレクシアがそう零した。
「あの、でも……第2王子にあのような態度をとって後でお叱りを受けたりしない?」
「大丈夫よ、ジェルマン様が何とかしてくれるわ。それにもし何か言ってくるようなら王妃様に言いつけてやるもの」
心配そうに瞳を揺らすレティシアをよそに、ケロリとした顔でリリアンが言う。
「そうだな、ジェルマン様はアレクシアに感謝していると言っていたし」
「感謝ですか?」
感謝されるような事をした心当たりが無くて、セザールの言葉にアレクシアは首を傾げた。
「ああ、両親以外は大抵思い通りになると思っているところがあったが、アレクシアは思い通りにならないし、思ってもみない反応をするからテオドール様にとっては良い経験になると言っていたからな」
「うふふ、そうね、普通の令嬢なら友人より王子にすり寄ろうとするのが普通だわ。だけどわたくしはアレクのそういう媚びないところも好きよ、見てて気持ちいいもの」
セザールとリリアンはアレクシアを褒めたが、その褒められた本人はヒョイと肩を竦めた。
「だって下手に気に入られて婚約者候補にでもなってしまったら大変じゃない。無駄に嫉妬されたり王族になる心得とか勉強させられたり、公務のお手伝いさせられたり。ただでさえ侯爵家の令嬢という立場でも重責だと思っているのに絶対嫌」
そんなアレクシアの主張を聞いてリリアンとレティシアは苦笑いを浮かべたが、セザールだけは複雑な表情をしていた。
(入学するまでずっとお茶会に呼ばれていたというのに、どうしてアレクシアは自分が王子達の婚約者候補でないと思っているんだろう。既に王妃様の中ではリリアンとアレクシアは婚約者候補筆頭と言っても過言では無いはず。それにしても侯爵家でも重責と思っているのなら公爵家の嫡男である私にも嫁ぐ気は無いと言われた様なものなんだが……本人はその事に気付いていないようだな)
セザールのそんな思いに気付かず、アレクシア達は既に違う話題で盛り上がっている。
ただでさえ細い目を更に細めて楽しげに笑いながら話す姿に、セザールは気付かれないようにそっとため息を落とした。
「それにしてもアレクったら、平民向けの薄味の食事で大丈夫なの? 物足りなくない?」
「私は香草や香辛料の多い料理が苦手なの。家では私とエミールだけ薄味の物を食べていたんだけど、学園ではどうしようかと思っていたら、貴族向けと平民向けの2種類の味付けがあって助かったわ」
学園では平民もいる為、料理は同じだがあまり香辛料慣れしていない平民の為に香辛料控えめな味付けが用意されていた。
高位貴族であるアレクシアが平民向けの味付けの場所から食事を持ち出した時には慌てて料理人が出てきて平民向けだと説明するという一幕があった。
「それに……、あまり味付けが濃いと少ししか食べられないというか……」
何気なくポロリと零したひと言で周りの視線がアレクシアに集まった。
「え……? 味が薄いと多く食べれるの?」
瞳孔が開いたような目を見開いて聞いてきたレティシアに動揺しつつ頷く。
「ええ……と。考えてみたら濃いと少ししか食べられないって事は、逆に言えば薄味の方が多く食べられるって事になる……かしら? あ、そうか、レティは普段あまり食べられないって言っていたものね。平民向けの薄味なら今より食べられるようになるかしら、お行儀悪いけど味見してみる?」
そう言ってチキンの香草焼きを切り分けてフォークに刺すと差し出した。
「はい、あ~ん」
「え、あの、いいの……?」
「もちろんよ、ほら、あ~ん」
「あ~ん、んぐ、もぐもぐ……ごくん。これは……! 物足りないけれど確かにこちらの方が多く食べられそうだわ」
そのひと言で周りが騒ついた、今よりも太りたいと思っている人は多いのだ。
残念ながら既に薄味になっている平民は食堂では、更に薄味の食事は提供されない。
暫く経っても食堂内は騒ついたままだったので、アレクシアは不安になった。
「あの……、セザール様」
「ん? 何だ?」
「先程の話を聞いていた人達は明日から平民向けの食事をするかもしれません、料理人に平民向けの味付けを多めに作るように言っておいた方が良いのでは……。それともこの事は生徒会を通して伝えた方が良いでしょうか?」
(貴族が平民向けの食事食べたせいで、平民が貴族向けの濃い食事食べる羽目になったら可哀想やもんな。薄味が余ったら香辛料追加して濃ぉ出来るし)
アレクシアに話しかけられて嬉しそうにしていたサゼールだっだが、アレクシアの言葉を聞いて真面目な顔になって考え込んだ。
「ふむ、先に料理長に助言しておいて、生徒会長には私から報告しておこう」
「ありがとうございます、お願いしますね」
セザールはホッと胸を撫で下ろすアレクシアの笑顔に思わず見惚れ、やはり諦める事はできないと再確認する事になった。
感想
あなたにおすすめの小説
異世界推し生活のすすめ
八尋 現代で生粋のイケメン筋肉オタクだった壬生子がトラ転から目を覚ますと、そこは顔面の美の価値観が逆転した異世界だった…。
この世界では壬生子が理想とする逞しく凛々しい騎士たちが"不細工"と蔑まれて不遇に虐げられていたのだ。
身分違いや顔面への美意識格差と戦いながら推しへの愛を(心の中で)叫ぶ壬生子。
異世界で誰も想像しなかった愛の形を世界に示していく。
完結済み、定期的にアップしていく予定です。
完全に作者の架空世界観なのでご都合主義や趣味が偏ります、ご注意ください。
作者の作品の中ではだいぶコメディ色が強いです。
誤字脱字誤用ありましたらご指摘ください、修正いたします。
なろうにもアップ予定です。
転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!
ゴルゴンゾーラ三国 異世界転生をするものの、物語の様に分かりやすい活躍もなく、のんびりとスローライフを楽しんでいた主人公・マレーゼ。しかしある日、転移魔法を失敗してしまい、見知らぬ土地へと飛ばされてしまう。
全く知らない土地に慌てる彼女だったが、そこはかつて転生後に生きていた時代から1000年も後の世界であり、さらには自身が生きていた頃の文明は既に滅んでいるということを知る。
そして、実は転移魔法だけではなく、1000年後の世界で『嫁』として召喚された事実が判明し、召喚した相手たちと婚姻関係を結ぶこととなる。
人懐っこく明るい蛇獣人に、かつての文明に入れ込む兎獣人、なかなか心を開いてくれない狐獣人、そして本物の狼のような狼獣人。この時代では『モテない』と言われているらしい四人組は、マレーゼからしたらとてつもない美形たちだった。
1000年前に戻れないことを諦めつつも、1000年後のこの時代で新たに生きることを決めるマレーゼ。
異世界転生&転移に巻き込まれたマレーゼが、1000年後の世界でスローライフを送ります!
【この作品は逆ハーレムものとなっております。最終的に一人に絞られるのではなく、四人同時に結ばれますのでご注意ください】
【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『Pixiv』にも掲載しています】
今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです!
文月 私の理想の容姿は「人形の様な整った顔」。
クールビューティーっていうの? 華やかで目を引くタイプじゃなくて、ちょっと近寄りがたい感じの正統派美人。
皆の人気者でいつも人に囲まれて‥ってのじゃなくて、「高嶺の花だ‥」って遠巻きに憧れられる‥そういうのに憧れる。
そりゃね、モテたいって願望はあるよ? 自分の(密かな)願望にまで嘘は言いません。だけど、チヤホヤ持ち上げられて「あの子、天狗になってない? 」とか陰口叩かれるのはヤなんだよ。「そんなんやっかみだろ」っていやあ、それまでだよ? 自分がホントに天狗になってないんなら。‥そういうことじゃなくて、どうせなら「お高く留まってるのよね」「綺麗な人は一般人とは違う‥って思ってんじゃない? 」って風に‥やっかまれたい。
‥とこれは、密かな願望。
生まれ変わる度に自分の容姿に落胆していた『死んで、生まれ変わって‥前世の記憶が残る特殊なタイプの魂(限定10)』のハヅキは、次第に「ままならない転生」に見切りをつけて、「現実的に」「少しでも幸せになれる生き方を送る」に目標をシフトチェンジして頑張ってきた。本当の「密かな願望」に蓋をして‥。
そして、ラスト10回目。最後の転生。
生まれ落ちるハヅキの魂に神様は「今世は貴女の理想を叶えて上げる」と言った。歓喜して神様に祈りをささげたところで暗転。生まれ変わったハヅキは「前世の記憶が思い出される」3歳の誕生日に期待と祈りを込めて鏡を覗き込む。そこに映っていたのは‥
今まで散々見て来た、地味顔の自分だった。
は? 神様‥あんだけ期待させといて‥これはないんじゃない?!
落胆するハヅキは知らない。
この世界は、今までの世界と美醜の感覚が全然違う世界だということに‥
この世界で、ハヅキは「(この世界的に)理想的で、人形のように美しい」「絶世の美女」で「恐れ多くて容易に近づけない高嶺の花」の存在だということに‥。
神様が叶えたのは「ハヅキの理想の容姿」ではなく、「高嶺の花的存在になりたい」という願望だったのだ!
この話は、無自覚(この世界的に)美人・ハヅキが「最後の人生だし! 」ってぶっちゃけて(ハヅキ的に)理想の男性にアプローチしていくお話しです。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…
宵森みなと異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。
いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。
しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。
だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。
不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。
差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、
彼女は“自分のための人生”を選び初める。
これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらんストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って?
いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!