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第1章 夜会
(5)やはり、周囲が見えていらっしゃらないようですね
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ディーデリヒ様の発言一つで貴族たちの中で拮抗していた第一王子派と第三王子派の勢力は一気に第三王子派へと傾いた。
ヘルムート殿下はそんな空気には気づいていないだろうけれど。
「それではヘルムート殿下、ご納得いただけましたか?」
「ならば誰がマヌエラを虐めたんだ」
「……不在にしていたわたしが知るはずもないことです」
「だがお前が裏で糸を引いていたのだろう」
どうしてそうなるのか。頭が痛くなってきた。
「わたしがマヌエラ様を虐める理由がありません」
「なにを言う。マヌエラの可愛らしさに嫉妬し、俺との結婚がなくなると思って焦ったのだろう」
危うく、はしたなくも「はぁ?」と声が出てしまうところだった。クラクラと目が回りそう。ディーデリヒ様の気遣わしげな視線が痛い。
「お前は婚約したものの俺に気に入られず、そこにマヌエラが現れたのだからな」
あれ? とわたしは気づいた。
時系列がおかしい。マヌエラ様が学院に編入されたのは一年前で、ヘルムート殿下とわたしの婚約が結ばれたのは一ヶ月前、それも十日前には解消されている。
「ヘルムート殿下、マヌエラ様と出会われたのはそんなに最近のことだったのですか……?」
「マヌエラとは、マヌエラが学院に編入してきたときに出会った。それがどうした」
「わたしとの婚約が結ばれたのは一ヶ月前でございますよね。マヌエラ様と出会われたあとではないのですか」
「一ヶ月前?」
わたしが北部セトレア共和国の学園の課程を修了し、帰国して試験と論文で学院の卒業を認められたのを機にヘルムート殿下との婚約は正式なものとなった。
けれど、その直後に情勢が急転し十日前に婚約は解消となったのだ。
「一ヶ月前、国王陛下の命で婚約となりましたが発表はされないまま解消となりました」
「王命だと?」
「はい。婚約については正式な発表は行っておりませんでしたし、ですので解消についてもとくに発表の必要はないとの国王陛下のご判断でございます」
「お前は王命で婚約したのか?」
引っ掛かるのはそこなの?
「えっと……そうでなくては、なぜヘルムート殿下と婚約するのですか……?」
隣でディーデリヒ様が下を向いて口許を押さえている。堪えようとはしているらしいけれど『ふっ…』とか『ククッ』とか呼気が漏れていた。
その向こうの少し離れたところでは一緒に入場した兄の背中が見える。後ろを向いている上にその肩の震えは笑いを堪えきれていないことを示していた。
わたし個人としては笑い事ではないのだけれど。
ヘルムート殿下はそんな空気には気づいていないだろうけれど。
「それではヘルムート殿下、ご納得いただけましたか?」
「ならば誰がマヌエラを虐めたんだ」
「……不在にしていたわたしが知るはずもないことです」
「だがお前が裏で糸を引いていたのだろう」
どうしてそうなるのか。頭が痛くなってきた。
「わたしがマヌエラ様を虐める理由がありません」
「なにを言う。マヌエラの可愛らしさに嫉妬し、俺との結婚がなくなると思って焦ったのだろう」
危うく、はしたなくも「はぁ?」と声が出てしまうところだった。クラクラと目が回りそう。ディーデリヒ様の気遣わしげな視線が痛い。
「お前は婚約したものの俺に気に入られず、そこにマヌエラが現れたのだからな」
あれ? とわたしは気づいた。
時系列がおかしい。マヌエラ様が学院に編入されたのは一年前で、ヘルムート殿下とわたしの婚約が結ばれたのは一ヶ月前、それも十日前には解消されている。
「ヘルムート殿下、マヌエラ様と出会われたのはそんなに最近のことだったのですか……?」
「マヌエラとは、マヌエラが学院に編入してきたときに出会った。それがどうした」
「わたしとの婚約が結ばれたのは一ヶ月前でございますよね。マヌエラ様と出会われたあとではないのですか」
「一ヶ月前?」
わたしが北部セトレア共和国の学園の課程を修了し、帰国して試験と論文で学院の卒業を認められたのを機にヘルムート殿下との婚約は正式なものとなった。
けれど、その直後に情勢が急転し十日前に婚約は解消となったのだ。
「一ヶ月前、国王陛下の命で婚約となりましたが発表はされないまま解消となりました」
「王命だと?」
「はい。婚約については正式な発表は行っておりませんでしたし、ですので解消についてもとくに発表の必要はないとの国王陛下のご判断でございます」
「お前は王命で婚約したのか?」
引っ掛かるのはそこなの?
「えっと……そうでなくては、なぜヘルムート殿下と婚約するのですか……?」
隣でディーデリヒ様が下を向いて口許を押さえている。堪えようとはしているらしいけれど『ふっ…』とか『ククッ』とか呼気が漏れていた。
その向こうの少し離れたところでは一緒に入場した兄の背中が見える。後ろを向いている上にその肩の震えは笑いを堪えきれていないことを示していた。
わたし個人としては笑い事ではないのだけれど。
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