21 / 21
第4章 その後
(番外編)マヌエラのその後
しおりを挟む
夜会での事件についてマヌエラは情状酌量の余地があることと、学院の教師や教授たちからの嘆願もあって四年次への進級が認められた。
成績が優秀であることに加え、マヌエラが女子学生から孤立していたのに対策が講じられなかったためである。
後日、マヌエラへの苛めについても改めて調査が行われることになった。
貴族議員にも名を連ねる学院長の後押しもあった。当然ながら公にはされていないが、入学前の寄付金が多額になるほど、入学試験の得点が加算されるようになっている。
学院全体の学力を担保するための大切な成績優秀者の一人でありながら、男爵位の家とはいえ一応の貴族のマヌエラを逃すのが惜しかったのだ。
成績順とされているクラス分けも、高額寄付の成績優秀者、高額寄付だが成績がそこまで優秀でない者、寄付が少ないが成績優秀者と学費免除の平民とで自然とクラスが分かれる。
三つ目のグループが学力がもっとも高い。もちろん高額寄付できるほどの家の人間も良い家庭教師が付けられる分は有利だ。なのでそれなりに成績を修められるものもいた。
学生寮も寄付金と成績によって部屋が分かれるが、マヌエラのように寄付金が少額なのに手狭とはいえ一人部屋になれるのは稀なのである。
一応の学院からの処分としてマヌエラは少し広めの二人部屋となった。学費免除の特待生で平民だと聞いた。
「私みたいなのと同室にさせてごめんなさい。迷惑をかけるかもしれないのに……」
「ああ、別にいいの。今までより広い部屋に移れたし。うち寄付金納めるどころか学費免除だからね!」
広い方の部屋に二人部屋とはいっても、それ手狭だったらしい。新しい部屋はこれまでよりもさらに広いということだった。
寄付金がかなり高額だが成績があまり良くない学生に与えられる部屋だと聞いて、マヌエラは部屋の種類がそんなに細かく分かれていることすら知らなかったことに気づいた。
「マヌエラさんは将来伯爵夫人になること確定でしょ?」
現在、一番上の兄が継いだばかりのレーヴェン男爵は近く伯爵に陞爵予定だ。そしてマヌエラの卒業を待ってヘルムートと結婚し、ヘルムートがレーヴェン伯爵を継ぐ。
マヌエラにとって、大好きな兄が二年と待たずに当主を引退させられることが一番堪えた。
「それに私、穀物栽培の研究をしているの」
マヌエラの論文も読んでくれたらしい。編入試験のときの論文は薬草の栽培がテーマだった。植物の栽培という点で興味を持ってくれたという。穀物栽培といえばマヌエラも論文を読ませてもらったことがある。
「あの、私……学院に来るまで両親とお兄ちゃんたち四人と、あと家庭教師くらいしか話したことなくて」
「もしかして、それで女子たちと話さなかったの!? ただの人見知りじゃん!」
笑われたマヌエラが恥ずかしくて顔を押さえていると「じゃあ、私がマヌエラさんの最初のお友達というわけね」と手を差し出された。
おずおずと手を重ねれば、ぎゅっと握られて「はい、握手」と言われる。
「よろしくね!」
「う、うん! こちらこそ、よろしくおねがいします」
初めての友だちに泣きそうになりながら、マヌエラは何度も頷いたのだった。
成績が優秀であることに加え、マヌエラが女子学生から孤立していたのに対策が講じられなかったためである。
後日、マヌエラへの苛めについても改めて調査が行われることになった。
貴族議員にも名を連ねる学院長の後押しもあった。当然ながら公にはされていないが、入学前の寄付金が多額になるほど、入学試験の得点が加算されるようになっている。
学院全体の学力を担保するための大切な成績優秀者の一人でありながら、男爵位の家とはいえ一応の貴族のマヌエラを逃すのが惜しかったのだ。
成績順とされているクラス分けも、高額寄付の成績優秀者、高額寄付だが成績がそこまで優秀でない者、寄付が少ないが成績優秀者と学費免除の平民とで自然とクラスが分かれる。
三つ目のグループが学力がもっとも高い。もちろん高額寄付できるほどの家の人間も良い家庭教師が付けられる分は有利だ。なのでそれなりに成績を修められるものもいた。
学生寮も寄付金と成績によって部屋が分かれるが、マヌエラのように寄付金が少額なのに手狭とはいえ一人部屋になれるのは稀なのである。
一応の学院からの処分としてマヌエラは少し広めの二人部屋となった。学費免除の特待生で平民だと聞いた。
「私みたいなのと同室にさせてごめんなさい。迷惑をかけるかもしれないのに……」
「ああ、別にいいの。今までより広い部屋に移れたし。うち寄付金納めるどころか学費免除だからね!」
広い方の部屋に二人部屋とはいっても、それ手狭だったらしい。新しい部屋はこれまでよりもさらに広いということだった。
寄付金がかなり高額だが成績があまり良くない学生に与えられる部屋だと聞いて、マヌエラは部屋の種類がそんなに細かく分かれていることすら知らなかったことに気づいた。
「マヌエラさんは将来伯爵夫人になること確定でしょ?」
現在、一番上の兄が継いだばかりのレーヴェン男爵は近く伯爵に陞爵予定だ。そしてマヌエラの卒業を待ってヘルムートと結婚し、ヘルムートがレーヴェン伯爵を継ぐ。
マヌエラにとって、大好きな兄が二年と待たずに当主を引退させられることが一番堪えた。
「それに私、穀物栽培の研究をしているの」
マヌエラの論文も読んでくれたらしい。編入試験のときの論文は薬草の栽培がテーマだった。植物の栽培という点で興味を持ってくれたという。穀物栽培といえばマヌエラも論文を読ませてもらったことがある。
「あの、私……学院に来るまで両親とお兄ちゃんたち四人と、あと家庭教師くらいしか話したことなくて」
「もしかして、それで女子たちと話さなかったの!? ただの人見知りじゃん!」
笑われたマヌエラが恥ずかしくて顔を押さえていると「じゃあ、私がマヌエラさんの最初のお友達というわけね」と手を差し出された。
おずおずと手を重ねれば、ぎゅっと握られて「はい、握手」と言われる。
「よろしくね!」
「う、うん! こちらこそ、よろしくおねがいします」
初めての友だちに泣きそうになりながら、マヌエラは何度も頷いたのだった。
415
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(75件)
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。
婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?
鶯埜 餡
恋愛
バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。
今ですか?
めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?
【本編完結】真実の愛を見つけた? では、婚約を破棄させていただきます
ハリネズミ
恋愛
「王妃は国の母です。私情に流されず、民を導かねばなりません」
「決して感情を表に出してはいけません。常に冷静で、威厳を保つのです」
シャーロット公爵家の令嬢カトリーヌは、 王太子アイクの婚約者として、幼少期から厳しい王妃教育を受けてきた。
全ては幸せな未来と、民の為―――そう自分に言い聞かせて、縛られた生活にも耐えてきた。
しかし、ある夜、アイクの突然の要求で全てが崩壊する。彼は、平民出身のメイドマーサであるを正妃にしたいと言い放った。王太子の身勝手な要求にカトリーヌは絶句する。
アイクも、マーサも、カトリーヌですらまだ知らない。この婚約の破談が、後に国を揺るがすことも、王太子がこれからどんな悲惨な運命なを辿るのかも―――
婚約破棄されたから、とりあえず逃げた!
志位斗 茂家波
恋愛
「マテラ・ディア公爵令嬢!!この第1王子ヒース・カックの名において婚約破棄をここに宣言する!!」
私、マテラ・ディアはどうやら婚約破棄を言い渡されたようです。
見れば、王子の隣にいる方にいじめたとかで、冤罪なのに捕まえる気のようですが‥‥‥よし、とりあえず逃げますか。私、転生者でもありますのでこの際この知識も活かしますかね。
マイペースなマテラは国を見捨てて逃げた!!
思い付きであり、1日にまとめて5話だして終了です。テンプレのざまぁのような気もしますが、あっさりとした気持ちでどうぞ読んでみてください。
ちょっと書いてみたくなった婚約破棄物語である。
内容を進めることを重視。誤字指摘があれば報告してくださり次第修正いたします。どうぞ温かい目で見てください。(テンプレもあるけど、斜め上の事も入れてみたい)
【短編完結】婚約破棄ですか?了承致いたしますが確認です婚約者様
鏑木 うりこ
恋愛
マリア・ライナス!お前との婚約を破棄して、私はこのリーリエ・カント男爵令嬢と婚約する事にする!
わたくしの婚約者であるサルトル様が声高に叫びました。
なるほど分かりましたが、状況を良く確認させていただきましょうか?
あとからやはりなかった、間違いだったなどと言われてはたまったものではございませんからね?
シーン書き2作目です(*'ω'*)楽しい。
【完】今流行りの婚約破棄に婚約者が乗っかり破棄してきました!
さこの
恋愛
お前とは婚約を破棄する! と高々と宣言する婚約者様。そうですね。今流行っていますものね。愛のない結婚はしたくない! というやつでわすわね。
笑顔で受けようかしら
……それとも泣いて縋る?
それではでは後者で! 彼は単純で自分に酔っているだけで流行りに乗っただけですもの。
婚約破棄も恐らく破棄する俺カッコいい! くらいの気持ちのはず! なのでか弱いフリしてこちらから振ってあげましょう!
全11話です。執筆済み
ホットランキング入りありがとうございます
2021/09/07(* ᴗ ᴗ)
【完結】婚約破棄されたユニコーンの乙女は、神殿に向かいます。
秋月一花
恋愛
「イザベラ。君との婚約破棄を、ここに宣言する!」
「かしこまりました。わたくしは神殿へ向かいます」
「……え?」
あっさりと婚約破棄を認めたわたくしに、ディラン殿下は目を瞬かせた。
「ほ、本当に良いのか? 王妃になりたくないのか?」
「……何か誤解なさっているようですが……。ディラン殿下が王太子なのは、わたくしがユニコーンの乙女だからですわ」
そう言い残して、その場から去った。呆然とした表情を浮かべていたディラン殿下を見て、本当に気付いてなかったのかと呆れたけれど――……。おめでとうございます、ディラン殿下。あなたは明日から王太子ではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
マヌエラの実家が陞爵というのが納得できませんね。
マヌエラが被害者?そんな訳ないでしょ!だってパトリツィアが別人と分かっても、結局他国の皇族や自国の王家がいる場所で公爵令嬢を一男爵令嬢が貶めたのですよ。何故無罪放免になっているのかが全く理解できません。よくある頭が悪くて高位貴族の子息ばかり追いかけるぶりっ子ヒロインじゃなく、大人しそうで外面のいい勉強家だからですか?ヘルムートに巻き込まれたというには、自らしっかり巻き込まれにいってますよね。
マヌエラの実家も罰受けていないし訳わかんない。
ヘルムートも立太子できなかったくらいで、たいして罰になってないよね。長年国交の無かった国の皇族が来賓できたパーティーでの所業ですよ。軽い罪で済ませて仕舞えば、その国を軽視したことになるので国賓だけの時よりも通常であれば罪は重くなるはずですが…。
全体的に中途半端なイメージを受けました。
退会済ユーザのコメントです
マヌエラちゃんも幸せになれそうで良かったよかった(゜-゜)(。_。)(o⌒∇⌒o)王子は王様にならなくて国にとってはラッキーかも(-_-;)あまりにも思い込みが酷い( ;゚皿゚)ノシ不向きだと思います。楽しいお話をありがとうございました❤️
楽しかったといっていただけて嬉しいです。
国としては前代未聞の臣籍降下でしたが将来的には良かったでしょうね~。
マヌエラもヘルムートが夫になったことで色々と苦労する点もあると思いますが、家の外での人間関係も学んでいくと思います。
こちらこそ読んでいただいてありがとうございました!