黄金と新星〜一般人系ギルドマスターのなるべく働きたくない日々〜

暮々多小鳥

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第一章『大規模盗賊団討伐作戦』

十話「黄金と憧憬」②

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 クリアと別れた後、シーラはある場所へと向かった。

「ジェーン、みんなも、ちょっと話があるんだけど」

「あ、シーラ。おかえり。どうした?」

 ギルドハウスの裏手側にあるギルドメンバー専用の宿舎の一室。〈幸運を呼ぶ星〉パーティリーダーの星三冒険者、ギルガメッシュ・ジェーンが滞在するその部屋に、彼のパーティメンバーは集まっていた。

 二週間前の遺跡探索中に右足が崩れた瓦礫の下敷きになったジェーンは、ポーションを使うのが遅くなったためか傷の治りが遅く、冒険者活動を休んでいた。今日はその傷がだいぶ良くなったため、そろそろ活動に参加しようと話していたところであった。
 ちなみに、彼が「ジェーン」と呼ばれているのは同じギルドにいる「ギル」と愛称が被るためであった。本人は女性っぽく聞こえると嫌な顔をしている。

「さっきマスターと話していたんだけど、次回の討伐作戦の際に星一冒険者のシュウ・ケーネス君と一緒に行動してくれないかって言われたの。みんな的にはどう?」

「この間のやつか。マスターがそう言うなら、いいんじゃないか?」

 魔道士のサミュが答える。他のメンバーも頷いて同意する。

「そうよね、私もいいと思う。それで、もう一つお願いされたことがあって……」

 シーラは複雑そうな表情を浮かべる。

「そのシュウ君と、ちょっと前にギルドに入った星二パーティの〈春のそよ風〉の指導役をしてくれないかって……」

「……俺たちに?」

 ジェーンが呆けた顔で聞き返す。

 〈幸運を呼ぶ星〉はパーティ総合ランク星四と実力派ではあるが、活動歴はまだ浅くベテランとは呼べない。またジェーンの度重なる怪我と不在によりそのランクも危うくなってきている。
 指導役となれば自分達よりもっと適任者がいるはずである。

「えぇ、マスターが直接私に言ったの。一応、前向きに検討するとは答えたんだけど……」

 ジェーンも復帰したばかりだ。正直ルーキー達の面倒を見る余裕があるかは分からない。それに、指導経験も皆無だ。必要なことを上手く教えられる自信もあまりない。

「えーと……なんで私達なのかな?」

「さぁな……だが、マスターが俺たちを指名したってことは俺たちが適任だってことなのかもな。俺はいいと思う」

 シーフのムゥラは疑問を口にしたが、ジェーンは賛成のようだった。
 他の二人もおおむね賛成の意を示す。

「どうしてまだ指導なんてできなさそうな私達が選ばれたのかは分からないけれど、マスターが指導役にと言うならそれは私達の成長にも繋がることになるはず……じゃあ、引き受けるってことでシーファさんに伝えてくるね」

 銀月冒険者のギルドマスターが直々に自分達に依頼したのだ。きっと、星四程度では見当もつかないことを考え、自分達の相性を導き出し、最大限の成長が見込めるように手配をしてくれているのだろう。
 そんな機会を逃すわけにはいかない。

 〈幸運を呼ぶ星〉だって、このギルドに入った理由はさらなる成長のためだ。若く優秀な冒険者達が多いこのギルドに入れば、きっと成長のための機会や鍵を掴めると思った。
 正直、ギルド幹部や初期メンバーあたりの面子はレベルの高さが異次元だ。年齢的にはそう大きくは変わらないのにもかかわらず、〈幸運を呼ぶ星〉では生涯絶対に届かない高みにすでに彼らはいる。同じギルドに所属していても、彼らは憧れの存在だ。共に高め合うことはできない。

 だが、だからこそ、そんな「天才」達に学びを乞い、成長の手立てを示してもらうことは非常に価値のあることであり、このギルドに入る最大の利点であった。

「ソロとパーティを同時に指導することとか、遺物を持っていない冒険者が遺物持ちの冒険者の指導をすることとか、普通はしないようなことでも、マスターが言うのであれば何か意味があるはず。そうですよねマスター!」
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