黄金と新星〜一般人系ギルドマスターのなるべく働きたくない日々〜

暮々多小鳥

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第二章『冒険者新人研修会』

二十七話「新人の研修」①

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「よう、クリア、ユーリス。やっと来たか」

 はい、もう定期的に来すぎて飾られている絵が変わっているとすぐに気がつくほどになってきている冒険者協会シャルティエ支部の支部長室です。
 今回の絵もまた、おどろおどろしすぎてガルスさんのセンスを疑っちゃうね。

 本当に怖いんだけどこの絵。なんか、赤と黒が乱雑に混ざり合っているような……それが切り裂かれたような……よく分からないけど、こう……気が狂いそうになるというか……頭痛くなってくる感じの…………

「……ほんと、ガルスさんはこんな絵をよく飾ろうと思いますね」

「おい。だが、俺だって好きで飾ってる訳じゃねぇ。ミカエルの奴が押し付けてくるんだよ」

「あぁ、《シャルティエよろず連合》のミカエル・アチェですね。冒険者兼画家の」

 へぇー。変な職業の人がいるものだ。
 冒険者なんて大体ガサツで大雑把だから、芸術センスとか壊滅的な人が多いんだけど。

 いや……この人も、大概なのか……?

 っていうか、押し付けられたからってご丁寧に飾ってあげてるガルスさんもなんだかんだ言ってもいい人だよね。

「ほら、早くこっち来い。座れ」

「はーい」

「それで、今日はどんな要件なんですか?」

 ガルスさんは私達の前にお茶を置くと、麩菓子を持ってきた。
 麩菓子!いいね、おいしいよね。緑茶に合うね。

 お茶を飲んで、麩菓子を食べてほっと一息。
 あぁ、心休まる。頭の痛みもどっか行ったわ。

「あぁ。実は、クリアに「新人研修会」について相談と協力を頼みたくてな」

「ふふぁ?」

「姉さん、飲み込んでから話して……」

 冒険者協会の新人研修会といえば年に一度、今年あるいは去年星付きに上がった星一、星二冒険者を対象に行われるものだ。
 シャルティエ支部の場合は先輩冒険者と協会員の先導のもと帝都近郊にある低レベルの遺跡へ行き、冒険者の基礎知識や戦い方などの指導を受ける。

 まぁ参加しない人も多く、かく言う私も研修会は参加しないうちに星三まで上がってしまい参加資格が無くなってしまった。

「ごくん……まさか、研修会で指導しろーとでも言うんですか?私、誰かに何かを教えるとか無理なタイプですよ」

 麩菓子を飲み込み、お茶で喉を潤してからガルスさんへと疑問を投げかける。

 自分の考えを伝わるように言語化する作業がめっぽう苦手なのだ。「あれ」とか「それ」とか多用しちゃう。実践で教えようにも実践できないし。
 そもそも、逆に私が教わりたいくらいに弱いし。

「指導担当は通常星三か星四ですよね?姉さんはこう見えても銀月ですから、協力を得たいと言うのであればそれなりの理由を用意していただきたいです」

 そうだね。こう見えても、肩書きだけはね。

「いや、指導役の冒険者はもう決まっているんだ。クリアには別のことを頼みたいんだが……まぁ、とりあえず話を聞いてくれ」

 そう言うと、ガルスさんは今回の新人研修会についてと、現在浮上している問題について語り出した。
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