43 / 64
第二章『冒険者新人研修会』
二十七話「新人の研修」①
しおりを挟む「よう、クリア、ユーリス。やっと来たか」
はい、もう定期的に来すぎて飾られている絵が変わっているとすぐに気がつくほどになってきている冒険者協会シャルティエ支部の支部長室です。
今回の絵もまた、おどろおどろしすぎてガルスさんのセンスを疑っちゃうね。
本当に怖いんだけどこの絵。なんか、赤と黒が乱雑に混ざり合っているような……それが切り裂かれたような……よく分からないけど、こう……気が狂いそうになるというか……頭痛くなってくる感じの…………
「……ほんと、ガルスさんはこんな絵をよく飾ろうと思いますね」
「おい。だが、俺だって好きで飾ってる訳じゃねぇ。ミカエルの奴が押し付けてくるんだよ」
「あぁ、《シャルティエよろず連合》のミカエル・アチェですね。冒険者兼画家の」
へぇー。変な職業の人がいるものだ。
冒険者なんて大体ガサツで大雑把だから、芸術センスとか壊滅的な人が多いんだけど。
いや……この人も、大概なのか……?
っていうか、押し付けられたからってご丁寧に飾ってあげてるガルスさんもなんだかんだ言ってもいい人だよね。
「ほら、早くこっち来い。座れ」
「はーい」
「それで、今日はどんな要件なんですか?」
ガルスさんは私達の前にお茶を置くと、麩菓子を持ってきた。
麩菓子!いいね、おいしいよね。緑茶に合うね。
お茶を飲んで、麩菓子を食べてほっと一息。
あぁ、心休まる。頭の痛みもどっか行ったわ。
「あぁ。実は、クリアに「新人研修会」について相談と協力を頼みたくてな」
「ふふぁ?」
「姉さん、飲み込んでから話して……」
冒険者協会の新人研修会といえば年に一度、今年あるいは去年星付きに上がった星一、星二冒険者を対象に行われるものだ。
シャルティエ支部の場合は先輩冒険者と協会員の先導のもと帝都近郊にある低レベルの遺跡へ行き、冒険者の基礎知識や戦い方などの指導を受ける。
まぁ参加しない人も多く、かく言う私も研修会は参加しないうちに星三まで上がってしまい参加資格が無くなってしまった。
「ごくん……まさか、研修会で指導しろーとでも言うんですか?私、誰かに何かを教えるとか無理なタイプですよ」
麩菓子を飲み込み、お茶で喉を潤してからガルスさんへと疑問を投げかける。
自分の考えを伝わるように言語化する作業がめっぽう苦手なのだ。「あれ」とか「それ」とか多用しちゃう。実践で教えようにも実践できないし。
そもそも、逆に私が教わりたいくらいに弱いし。
「指導担当は通常星三か星四ですよね?姉さんはこう見えても銀月ですから、協力を得たいと言うのであればそれなりの理由を用意していただきたいです」
そうだね。こう見えても、肩書きだけはね。
「いや、指導役の冒険者はもう決まっているんだ。クリアには別のことを頼みたいんだが……まぁ、とりあえず話を聞いてくれ」
そう言うと、ガルスさんは今回の新人研修会についてと、現在浮上している問題について語り出した。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる