そう言うと思ってた

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侯爵令嬢は言い当てる

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カリナとトラヴィスは考えた結果、たどり着いたのは公爵夫人の元だった。とは言っても、王女を逃がしてあげられる力のある人を思い浮かべて最初に思いついたのが夫人だったから、という単純な理由からだが。

夫人は不敵な笑みを浮かべていて、懐かしむような口調になり、あっさりと王女を逃がしたことを認めた。

夫人曰く、男爵が子供を探し出せたのは、夫人が派遣した護衛が子供を探す男爵に絆された結果らしい。

「護衛に選んだ騎士は、丁度孫が生まれたばかりで、子を思う親の気持ちに絆されたらしいわ。本当かどうかはわからないけれどね?」

「男爵がそれほど必死に訴えたのでしょうか。」

「うーん、あの人の演技力ってほぼないの。割とすぐ本音が出てしまうから、護衛が絆されるなんてことがあるのかは不思議に思うわ。それよりも、」

「夫人の心を煩わせる親子をさっさと処分してしまいたかった?」

「ええ、そう考える方がしっくりくるわよね。」

トラヴィスは基本カリナと夫人の会話には入らない。それは最初の頃に、使用人だったことが影響している。当主夫人と次期当主夫人の会話に割り込むことは許されない、という戒めが身に着いていた。

「トラヴィスと話をしていたんですが、アナスタシア嬢は、男爵の本当の娘なんですか?」

「あら、そこが気になるの?どうして?」

「王女様の行動を追っていくと、どうにもおかしいなと感じてしまうんです。だって自分を害そうとする侍女に洗脳されていたとはいえ、無警戒ということはあるんでしょうか?それに護衛が全くいないとも思えないし。何らかの対策を講じると思うのですが。」

「ええ、そうね。流石カリナね。そう通常なら護衛がいるはず……でもあの時はいなかったのよ。厳密にはいたけど少し離れたところにいたの。王女のたっての願いでね。王女は従姉妹が何かを仕掛けてくるのを知って自ら囮になるつもりだった。だから、油断させたかったみたいね。」

「夫人が協力した理由は何ですか?婚約者だったのでしょう?」

「私が慕っていたのは、今の夫の方よ。だけど婚約したのは弟の方。彼に家督を継がせるのが嫌だった、それだけよ。」

カリナは夫人の言葉を聞きながら心はここにないような、考えこむような態度を見せていた。

「つかぬことをお聞きしますが、夫人はお身内に同盟国の方はいらっしゃいますか。ご両親やご親戚に。」

「どうして?いないわ。」

「そうですか。であれば、貴方が逃がしたのは王女ではなく、公爵夫人?その時はまだご令嬢でしょうか?になりますね。違います?王女様。」

夫人は一瞬、驚いた顔を見せたが、すぐにいつもの笑顔を装備した。

「それは想像力が豊かというべき?突拍子のない話ね。どうして、そんなふうに思ったのか聞かせて?」

夫人の態度が急に変わったように感じて、トラヴィスは咄嗟にカリナを抱き寄せた。

「まあ、警戒しないでちょうだい。怒ってはいないのよ。ちょっと気になっただけ。だって私がどうやったら私を逃がせるの?おかしいじゃない?」


カリナは意識的に夫人に視線をやり、それに気づいた夫人が笑う。

「ああ、知っていたのね。残念。誤魔化されては貰えないようね。」

トラヴィスは今までたくさん夫人の笑顔を見てきたが今のような笑みを見たことがない。これが彼女の本当の笑顔なのだと知り、身が竦んだ。
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