そう言うと思ってた

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公爵夫人は微笑む

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「ようやく終わった……いや始まったのか?」

「終わった、で良いんじゃない?面倒ごとはもう御免だわ。」

公爵家には爵位を継いだトラヴィスとカリナがいた。あれから第三王子とルシアは婚姻したが、ルシアの此方での後ろ盾に協力したのはカリナの実家であるクィール侯爵家。カリナとルシアは義姉妹となった。この間までカリナに無関心でいたルシアはその後ようやく心を開くようになって来た。

野良猫が懐いてくるようなそんな感覚に襲われるが、あまりにも不敬かと口には出さなかった。

ルシアは侯爵家でマナーを学び、第三王子とは案外仲良くやっていけているようで安心だ。第三王子と言えば、ルシアと結婚したからにはカリナにちょっかいを出さなくなると思ったのに、そうはならなかった。残念ながら、ルシアに会いに来て欲しいと頻繁に手紙がくるようになってしまった。

カリナは公爵家だけでなく、侯爵家の領地の管理もあるので、時間がなく、誘われても毎回はお断りしている。


「それにしても、長年信じてた相手が実は別人だったなんて、悪夢もいいところだよな。」

「誰でも近くにいればいるほど、こんな人だって思い込んでしまうもの。それを利用されただけでしょう?」

トラヴィスは言おうか迷ったがカリナに聞いてみたいことがあった。それは随分と前、自分がこの地についた時に感じた違和感。

「夫人のやろうとしていることに気がついたのは、自分も同じだから?」

「ん?ああ、気がついていたのね。貴方腹芸が苦手だと思っていたのに。」

「偶然だよ。こんなに忙しいのに、いろんな仕事に精を出して、なのに、侯爵領には何も問題なく、どちらかというと前よりもぐんと発展している。そして、あのルシア嬢が何かのタイミングで、君に急に懐いた。ルシア嬢が話すのは第三王子かカリナだけだ。そう言うことをうつらうつらと考えていたら一つの可能性に辿り着いただけ。

それに凄く薄いけれど背中に痣もあった。」

「あんなに薄いのに良く見つけたわね。」

「ああ、だってようやくカリナが俺のものになったんだ。隅から隅まで堪能しなきゃ。」

「流石と言うべきか、何というか。ちょっと気持ち悪いというか。

本物のカリナは元気に侯爵家で働いているわ。アランとの繋がりがなくなって彼女の気分は「最高!」だそうよ。貴方が望むなら本物のカリナを呼び寄せるけど?彼女はとても良い子よ。」

トラヴィスはその提案を微笑みながら、断った。

「あの時俺は凄く嬉しかったんだ。私にはトラヴィスが良いんだって、夫人に言ってくれただろ?俺だって、君がいい。この場にいるカリナが。」

カリナは泣きそうな顔で微笑んだ。

「そうね。貴方ならきっと、そう言うと思ってたわ。」



おわり

読んでいただきありがとうございました。番外編が一話あります。
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