侯爵家に不要な者を追い出した後のこと

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本編

思考を放棄した後

暴論かもしれないが、若いご令嬢達よりも経験豊富な女性の方が井戸端会議の話は弾む。結婚している女性には話す内容に制約が多くても、嫁入りを期待している二度目を狙うご令嬢というには年齢がいき過ぎている方達は、叔母を含めあまり制約はない。

一箇所に彼女達を集めて話しているのを聞くだけで、真偽不明を問わなければいくらでも情報は集まってくる。


ライラの思った通り、第三王子のお探しの人は第二王子の妻子であった。平和な我が国とは違って、少々きな臭い隣国は第一王子と第三王子が王太子の地位をかけて争っている最中だ。

第二王子は王族に残るつもりはなく、臣籍降下をして幼馴染の公爵令嬢と結婚した。賜った爵位は伯爵位。公爵の地位だと、いつまた継承権争いに担ぎ出されるかおそろしいので、伯爵位を賜ることになったと言う。

王族のことはライラにはよくわからない。ただライラの小さな頭でもわかるのは王になりたい、と願う人って割と強欲だと言うことだけ。彼らは自分があれもこれも欲しいと思うからか、周りもそうだと思い込む。

第二王子が王位継承権を放棄したこともラッキーではなく、何かしらの裏があるのでは、と疑心暗鬼になったのだろう。
第二王子は事故で亡くなり、妻子は行方知れず。

本人は心配だと言ってはいるけれど、本音はどうかわからない。第二王子の元妻を娶り、第二王子の遺志を、などと宣えば公爵家の後ろ盾を手に入れられる。そんな打算が働いたのでは?

それとも見つけた瞬間、何らかの罪でも被せて処刑でもする気かもしれない。

叔母は第三王子に選ばれる気でいる。王太子殿下とのロマンスは彼女に身の丈に合わない自信と、傲慢さを齎した。第三王子の周辺は随分と怪しい匂いがするのに。

ライラは叔母を止めるべきか悩んでいた。だが、此方がどれほど止めたとしても止まる相手でもない。

叔母は過去の成功体験からすっかり自分は選ばれる側だと思ってしまっている。女性の価値は頭の良さでも淑女らしさでもなく、見た目の華やかさだと今でも本気で信じているのだ。叔母はシルヴィアに比べてどうしても芋臭さが抜けない。洗練された所作のシルヴィアと比べると、教養の無さが目立ってしまう。そんな叔母にとって、ライラの母みたいな地味な真面目な女は自分より下の存在として認識しやすかったのだろう。

母と父は政略結婚ではあったが昔からの婚約者でお互いに思い合っていた為に、過度に着飾っていらぬ火種を振り撒かなくても、と地味にしていたようだ。

叔母はそんな母を馬鹿にして、ライラが生まれた時も「母に似てブサイクで可哀想だ」と言ったらしい。

母が死んで何の因果か、ライラに構って来るようになった叔母は、そんなことをいい、下に見ていたライラを可愛がる。フリなのか、あまりよく考えていないのか微妙なところだが、シルヴィアやソフィアのことを話す姿に母や自分のことを蔑む姿を見たようで、気持ち悪くなる。


結局、叔母が第三王子に選ばることなどないだろう、と思考を放棄した。

叔母はライラと同じく勉強が嫌いだ。誰かがやってくれるならそれに任せるぐらいには責任感がない。

そして自分が得をする為なら、どんな手段でも後先考えずに取ってしまうのだ。

義母のドレスと宝石が何者かによって盗まれたのは今朝のことだった。盗んだ人物には心当たりしかない。

十中八九叔母の仕業だ。



朝食の席で若干申し訳なさそうなのは義母シルヴィア。彼女は盗まれた被害者側なのだが、どうしてだろう。

その理由をライラが知るのは割とすぐのことだった。

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