侯爵家に不要な者を追い出した後のこと

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本編

ずっと気にはなっていたこと

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友人はとある貴族令嬢のことを話していた。その令嬢とは、友人の友人の従姉妹の侍女の友人の仕えているお嬢様の友人、というとても遠い存在の人だったのだが。

そのご令嬢は公爵家の一人娘だった。母親の死後、連れてこられた後妻とその連れ子は公爵との血の繋がりはない筈だった。だが、公爵の死後、実は連れ子は実の娘で血の繋がらない方の娘は自分だったという。そして、その後何もかもその親子に奪われてしまった、と。

「養女と連れ子なら、養女の方が我が国では立場が上だけれど、その国では血筋が一番だったから仕方がなかったらしいわ。でも、正直、自分が産まれた経緯のことなんて知らないのが普通じゃない?それを親が亡くなったすぐ後にそんな形で知らされるなんて。私、お父様に隠し子がいるなら仰って、なんて口走って、うっかりお父様を泣かせるところでしたわ。」

友人の父は強面で有名な騎士団長である。溺愛している愛娘に泣かされそうになっている騎士団長を想像してふと笑いそうになってしまった。

彼女は話題の一つとして、話したに過ぎないが、ライラは他人事には思えなかった。寧ろ友人はライラに向けてその話をしたのかと、穿った目線を向けたほど。


それというのも、思い当たる節があったのだ。

義母に話を持って来た、マクレガー家の後妻は、何処からか、ライラが父と血の繋がりがないと言われて、父の血筋が、ソフィアの方なのではないかと思い込んだ。侯爵家を継ぐのはライラではなく、ソフィアの方だと。

ライラは昔から父に似てる、と言われたことがない。母には似てると叔母も言っていたし、父もよく話しているのでそうだとは思うのだが。ライラは父に似ているところが全くないのだ。

対してソフィアは父と並ぶと、顔立ちは違うのだが、ふとした雰囲気がとても似ているのだ。

父はもしかすると、ソフィアにこの家を任せたいのかもしれない。

ライラは一人で想像することは好きでも、悩むことは嫌いだ。父の生きている内に悩みはクリアにしておきたかった。とはいえ、父に尋ねて泣かれても困るので、父に次いで信頼できるシルヴィアに尋ねることにした。

彼女はライラの話を聞いた後、何故か笑い始めた。淑女らしくない笑い方にギョッとする。だけど、どうやらこれが彼女の素のようで、ライラはなんとなく腑に落ちた。

「貴女の疑問に答える前に、マクレガー家の後妻は離縁されたわ。貴女の乳母だった人は根拠のない思い込みにより、身を滅ぼしたのだけれど、後妻はそれをアーサーがやったと思い込んでいたの。アーサーの犯罪を黙ってやるから、と侯爵家を乗っ取る計画を立てていた。息子は知らなかったとは言え、あれは論外。子爵は、後妻から聞いて、その上で貴女に申し込んだみたいだけど、アレはアレで中々の食わせ物だわ。」

「乳母は私の顔に心当たりがあったんじゃないかしら。だから、行動を起こした。」

「と、言われているわね。だけど、私思うのよ、そんなこと無理じゃないかしらって。だって、貴女、赤ん坊の顔、見たことある?産まれたばかりの赤ちゃんって、あんまり可愛くないのよ。と言うか顔がね、こう、なんて言うか、これからどんな顔になっていくのか想像もつかない顔をしているの。産まれて少し経ってくると、可愛くはなってくるのだけど。でもね、人によっては、幼少期に何度も顔が変わっていくのよ。それが普通なの。そんな状態ですぐに誰の顔、ってわかるもの?私は寧ろ決め打ちだったのではないかと思っているの。先入観?そう言うものがあったから、そう見えたのではないか、とね。」

ライラはシルヴィアの言い分に納得してしまった。その話だと、ソフィアが父の子かどうかの疑惑はなくなってはいないのだけど。それでもライラの心のモヤモヤは少し晴れた気がする。

「乳母はライラの顔を見て父が誰かをわかったわけではなく、そうなんじゃないかと思ってたから、そう見えたと言うこと?」

「そう、だって貴女もソフィアが父親に似てるかも、って思って見ているからそう見えているのだもの。残念ながら、ソフィアとアーサーは親子ではないわ。親戚でもない。だから、あの人が亡くなったとしても、侯爵家と私達は何の関係もないの。侯爵家は貴女が継いでいくの。貴女はアーサーの一人娘なのよ。」
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