私が殺した筈の女

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マリッジブルー

プリシラは、ローガンに守られながらも頭の中は忙しなく動いていた。自分が一度殺したカリーナという女は、あの場で殺されなければ、色々な役目があったのではないか、と。

彼女を失ったことで立ち行かなくなったことが沢山あってその皺寄せが今きているのではないか。

夜会ではプリシラにダンスを申し込んだあの男が今もプリシラを探しているというし、あの日流れた映像の中のローガンは全く知らない人のように、プリシラには思えた。あの姿は、あの女に籠絡され、プリシラの元を去ったローガンなのだ。

今の彼とは似ても似つかない、あのローガンはそうなるかもしれなかったローガンだ。

ローガンはプリシラが望んだから、夜会の後からずっとそばにいてくれる。何があったか聞きたいようだけど、プリシラは口にすると、彼があるべき姿になってしまいそうで怖くて言えないと思ってしまった。

ローガンを信じられないなんて、初めてかもしれない。彼はプリシラをいつまでも信じてくれていたのに。裏切りのような感覚になって、ローガンに言えない感情が増えていく。

「ローガン、ずっとそばにいてくれる?」

何度目かの確認をするも、最初の頃の嬉しそうな表情はローガンにはすでにない。戸惑いと少しの怒りと諦めのような感情が入り混じった声で「うん。ずっとそばにいる。」と言うけれど。

彼は夜会で他の男を見つめていたプリシラに怒りを覚えているようだ。

「僕は一瞬にいたいと思ってるよ。」

「本当にそう思ってる?」

「プリシラは……ああ、言わなくて良い。」

そんなどこかいじけたような反応を可愛いとは思えなくてプリシラは焦る。ローガンはカリーナが生きていたら良いと思っているんじゃないだろうか。

あの女は私が殺したのに!私がローガンから引き離したのに!

そのことを恨んでいるのだろうか。


彼がすることが、彼が話すことが、全て疑念に変わる。手放したくないのに。手放すようにできている、みたいなそんな気になって、プリシラは考えるのをやめた。



プリシラの悩みは彼に自分の意志を伝えられないことだ。伝えるとその通りになってしまう、と言う気持ちが強すぎて、彼には言えないことが増えていく。

いっそのこと、彼を自由にしたら良いのでは?

もうすぐ結婚式だと言うのに、一向に纏まらない心を察したのか侍女は、「そう言うのをマリッジブルーって言うんですって。」と教えてくれた。

この人と結婚して本当に良いのか、誰でも悩むんだと言う彼女は、プリシラの心を誰よりも穏やかにしてくれた。



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