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襲撃
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それは突然のことだった。
失意の中、屋敷に帰ろうと歩を進める私達は襲撃にあった。護衛はたくさんいたにもかかわらず。お粗末なことに、この護衛達は、私よりも強かったが、他には弱く、戦闘用ではないことが判明した。
要は、私が逃げ出した時の、対策だっただけで襲われるのを想定していなかったようだ。私は抵抗するのも諦めて、荷物のように馬車に積まれていく。
護衛達は、その場でバタバタと倒れてしまい、役に立たないことこの上ない。
私を攫った者達は、知り合いかと思ったがどうやら違うらしい。
「お前の名前はエドワード・ラードンで合っているか?」と聞かれたが、エドワードはエドワードだが、ラードンに聞き覚えはなく、違うとも言えないから頷いておいた。
もし人違いで殺されるなら、仕方がない。今殺されるか後で殺されるかの違いだ。
私達を襲った者達の手際は良く、攫い慣れているように思われた。プロの人攫いだ。
「口を閉じておけ。舌を噛むぞ。」
必要以上に乱暴な扱いを受けないことといい、こちらの事情をわかっているようだ。
縛られて転がされたものの、屈強な兵士のような男が、世話を焼いてくれる。
アレックスにつけられた護衛が、追ってこられないぐらい離れると、馬車は急に止まり拘束を解かれる。
馬車の外で、引き渡しが行われているようだ。今の自分には、その相手が誰かなどわかるはずもないが、気になってしまう。
懐かしい匂いがして目を凝らすと、多分前に会ったことのあるような少年が泣きそうな顔で見下ろしている。
「兄様。きっと、きっと生きていらっしゃると思っていました。」
大きな澄んだ瞳から大粒の涙が溢れる。私の体に抱きついた彼の頭を撫でると、ふっと、体の力が抜ける。
ああ、やっと帰ってこれた。
彼の名前も自分との関係も思い出せないくせに、そう感じる。
「君は……」
「兄様、本当に何もかもお忘れになってしまわれたのですね。」
彼は涙を拭いて、それでも、力強い目をしている。
「兄様、私のことは、シャルとお呼びください。後の者は、着いてから紹介いたします。」
さっきまで、一緒にいた屈強な兵士風情の男は、穏やかな笑みを浮かべている。
「アーロン」
男は、こちらを驚きの表情を浮かべ見つめると、顔を顰めて、臣下の礼をとる。
「エドワード様、おかえりなさいませ。すぐに助けに行くことができず、申し訳ありませんでした。」
シャルは、私達二人を眺めていたが、納得のいかない様子で呟いた。
「兄様、アーロンはわかったのに、僕は覚えていないなんて、そんなことあるわけがない。おかしい。本当に兄様か?……いや、今記憶が…」
「シャル、今からどこに行くのか教えてくれるか。」
自分でも、どうしてか説明できない。アーロンは何故わかったのか。そんなに仲が良かったのか。それとも記憶が戻りつつあるのか、さっぱり自分ではわからない。
シャルは嬉しそうにこちらを見上げると、勢いよく返事をする。
「兄様、今からエリー姉様に会いに行くのです。姉様に会えたら、きっと記憶も、戻るはずです。」
失意の中、屋敷に帰ろうと歩を進める私達は襲撃にあった。護衛はたくさんいたにもかかわらず。お粗末なことに、この護衛達は、私よりも強かったが、他には弱く、戦闘用ではないことが判明した。
要は、私が逃げ出した時の、対策だっただけで襲われるのを想定していなかったようだ。私は抵抗するのも諦めて、荷物のように馬車に積まれていく。
護衛達は、その場でバタバタと倒れてしまい、役に立たないことこの上ない。
私を攫った者達は、知り合いかと思ったがどうやら違うらしい。
「お前の名前はエドワード・ラードンで合っているか?」と聞かれたが、エドワードはエドワードだが、ラードンに聞き覚えはなく、違うとも言えないから頷いておいた。
もし人違いで殺されるなら、仕方がない。今殺されるか後で殺されるかの違いだ。
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「口を閉じておけ。舌を噛むぞ。」
必要以上に乱暴な扱いを受けないことといい、こちらの事情をわかっているようだ。
縛られて転がされたものの、屈強な兵士のような男が、世話を焼いてくれる。
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懐かしい匂いがして目を凝らすと、多分前に会ったことのあるような少年が泣きそうな顔で見下ろしている。
「兄様。きっと、きっと生きていらっしゃると思っていました。」
大きな澄んだ瞳から大粒の涙が溢れる。私の体に抱きついた彼の頭を撫でると、ふっと、体の力が抜ける。
ああ、やっと帰ってこれた。
彼の名前も自分との関係も思い出せないくせに、そう感じる。
「君は……」
「兄様、本当に何もかもお忘れになってしまわれたのですね。」
彼は涙を拭いて、それでも、力強い目をしている。
「兄様、私のことは、シャルとお呼びください。後の者は、着いてから紹介いたします。」
さっきまで、一緒にいた屈強な兵士風情の男は、穏やかな笑みを浮かべている。
「アーロン」
男は、こちらを驚きの表情を浮かべ見つめると、顔を顰めて、臣下の礼をとる。
「エドワード様、おかえりなさいませ。すぐに助けに行くことができず、申し訳ありませんでした。」
シャルは、私達二人を眺めていたが、納得のいかない様子で呟いた。
「兄様、アーロンはわかったのに、僕は覚えていないなんて、そんなことあるわけがない。おかしい。本当に兄様か?……いや、今記憶が…」
「シャル、今からどこに行くのか教えてくれるか。」
自分でも、どうしてか説明できない。アーロンは何故わかったのか。そんなに仲が良かったのか。それとも記憶が戻りつつあるのか、さっぱり自分ではわからない。
シャルは嬉しそうにこちらを見上げると、勢いよく返事をする。
「兄様、今からエリー姉様に会いに行くのです。姉様に会えたら、きっと記憶も、戻るはずです。」
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