もふもふな義兄に溺愛されています

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新しい名前

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バタバタと音がして、ガラッと扉が開いた。

「あ、起きてる」
背の高い獣人の少年が、子供をじっと見ている。

近くまでよってくると、キラキラした瞳で、ニッコリ笑った。

「お前、名前なんて言うの?」
「743」
「ん?それが名前?」
コクリと頷く。

母親が、「可愛い名前を私たちでつけてあげようね。」
息子は大きく頷いた。

「花の名前とかなら可愛いくない?」
「リリーとかはどう?ローズも可愛い。デイジーもバイオレットも可愛い。」
「どれか気に入ったのはあるかい?」
「リリーがいい。」
子供は獣人の息子が考えていたはじめの名前を気に入った。
「わかった、リリー、よろしく。」
「よろしく。」
「そういえば、私らも名乗って無かったね。私は、エマ。この子はルーカス。で、今いないけど、夫が、ジェームズよ。」

一通り挨拶を終えると、エマがリリーの顔を覗きこんだ。
「あんた、帰るところはあるのかい?」
フルフルと首を横へ振る。
「心配している人はいないのかい?」
同じように首を振る。
「逃げて…きた。…追いかけて…捕まったら、…」呼吸が苦しくなる。
エマがリリーを抱きしめた。
「大丈夫、ゆっくりでいい。大丈夫。」
背中を撫でてくれる。呼吸が落ち着いていく。

「どこも行かなくていいのなら、この家にいれば良いよ。」リリーは、びっくりして、ルーカスを見ると、「やった!もうずっと住めばいいよ!」と喜んでいた。

「年はわかるかい?」
「多分、10才。」
「え?そんなに大きいの?ほんとに?」
目をパチクリさせて驚いた訳は、ルーカスがたったの12才だったからだ。

リリーが小さいのもあるが、体の大きさから見て倍ぐらい年の差があると思われていた。せいぜい6才ぐらいかな、と思われていたところ、10才といわれたので、驚いたのだ。

リリーが年を認識していたのは、閉じ込められていた施設で、10才を超えたら、今までと、別の部屋に隔離されるのを知っていたから。

10才になった途端、他の子供と離され、一人で恐怖と戦わなければならなかったから。それが逃げてくるほんの少し前だったからだ。

ルーカスは、狼の獣人で、体は大きくすらりとしていた。対するリリーは、身長も小さければ、痩せっぽっちで、体に肉が全く付いていない。

「まず、太らせよう。体重が増えたら、縦にも伸びる。」
ルーカスはリリーをじっと見つめた。
「後は風呂だな。一緒に入ろう。」

リリーは生まれてはじめて、お風呂に入った。
いつもは、川に入って、布で擦るだけ。
温かいお湯に入った瞬間、体から力が抜けていき、涙がポロポロ流れた。

ルーカスは、リリーの頭をポンポンと触り、「気持ちいいだろ?」と言った。
頷いて、涙を拭く。

リリーは、今日はじめてのことばかり、経験した。この後も、はじめての石鹸を使い、体を洗い、はじめて一家団欒を経験し、はじめて、誰かと一緒に、ベッドで眠った。

獣人の父親、ジェームズは、可愛いお客様に驚いたものの、ルーカスによく似た笑顔で、リリーを受け入れた。

子供たちが、一緒に寝た後、エマと二人、今後のことを話し合った。

リリーがどこから来たのか、ジェームズは少し心当たりがあった。
間違いならいいのに、と思いながら。
けれど、経験上、嫌な予感はよく当たることを知っていた。







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