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追い詰められていたのは ケヴィン視点
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アクト公爵家では、一人の男が途方に暮れていた。
一体全体どうしてこんなことになっているのか、理解が追いつかない。幼馴染以上の気持ちを持たないあのアリスと自分が不貞したと言う噂を親友であるジュリアスが疑いもせず信じたこと。不貞など何もしていないのに、それらしい証拠がみつかっていること。ジュリアスはアリスとの婚約を破棄したこと。それに伴いポートン侯爵家から婚約破棄の申し出が出ていること。それを王家と父が了承したこと。
など、全てに理解できない、理解したく無い光景が広がっている。
アリスについての、下位貴族からの虐めの件はアリスから単なる僻みだと聞いていたが、違うのか?
グレイスに嫌がらせ?仲が良かったのではないのか?
グレイスの友人に、グレイスの名で誤解されるような下品な手紙を送った?
一体彼女は何がしたかったんだ?
背中がうすら寒くなる。友人だと思って大切にしていた人に、そう思われていなかったなんて。彼女はいつも、ジュリアスの話ばかりだったじゃないか。私達が常に一緒にいたのは、ただのフリだったじゃないか。
頭ではわかっている。アリスの言うことを無条件に信じすぎた自分が悪いのだと。彼女の傲慢な性格を知らない訳がない。幼馴染として、友人として、あれだけそばに居たのだから、彼女が自分とジュリアスの間にいることを望み、二人ともに良い顔を見せていたのにも気がつくべきだった。
「選んだ後にそれが間違いだって気がついたなら、いつでも間違いを正してもらって良いんだ。」
アリスから、グレイスに宛てた手紙には、アリスの本音が全て書かれていた。前の自分ならアリスを陥れる為に嵌められたと言われれば信じるレベルの言葉の数々に。自分はアリスにまんまと騙されていたと知る。
「グレイスと婚約破棄をして、どうするのですか。私にアリスの後始末をしろ、と?」
「そんなことをしたら、公爵家は終わる。心中したい程にアリス嬢に溺れている、とそう言うことか?違うなら口を噤め。愚か者が。」
父は見たこともない冷たい表情で、息子の言葉を切り捨てた。
「お前は、アリス・ロゼットに騙された愚か者として、生きるんだ。社交界で馬鹿にされながら。それでも貴族としては生きられるし、結婚もできる。妻には頭が上がらんだろうが、優秀な妻が出来るのだから、彼女に任せておけばよい。まさか、我が公爵家が下位貴族に頼らなければいけない日が来るなんてな。笑うに笑えない。」
笑えないと言いながら乾いた笑い声をあげて、父は天を仰いだ。王家からの提案で、ケヴィンの妻はすでに決められているらしい。
その相手が一度見たことがあるだけの、子爵令嬢だなんて、思いもせず。
一体全体どうしてこんなことになっているのか、理解が追いつかない。幼馴染以上の気持ちを持たないあのアリスと自分が不貞したと言う噂を親友であるジュリアスが疑いもせず信じたこと。不貞など何もしていないのに、それらしい証拠がみつかっていること。ジュリアスはアリスとの婚約を破棄したこと。それに伴いポートン侯爵家から婚約破棄の申し出が出ていること。それを王家と父が了承したこと。
など、全てに理解できない、理解したく無い光景が広がっている。
アリスについての、下位貴族からの虐めの件はアリスから単なる僻みだと聞いていたが、違うのか?
グレイスに嫌がらせ?仲が良かったのではないのか?
グレイスの友人に、グレイスの名で誤解されるような下品な手紙を送った?
一体彼女は何がしたかったんだ?
背中がうすら寒くなる。友人だと思って大切にしていた人に、そう思われていなかったなんて。彼女はいつも、ジュリアスの話ばかりだったじゃないか。私達が常に一緒にいたのは、ただのフリだったじゃないか。
頭ではわかっている。アリスの言うことを無条件に信じすぎた自分が悪いのだと。彼女の傲慢な性格を知らない訳がない。幼馴染として、友人として、あれだけそばに居たのだから、彼女が自分とジュリアスの間にいることを望み、二人ともに良い顔を見せていたのにも気がつくべきだった。
「選んだ後にそれが間違いだって気がついたなら、いつでも間違いを正してもらって良いんだ。」
アリスから、グレイスに宛てた手紙には、アリスの本音が全て書かれていた。前の自分ならアリスを陥れる為に嵌められたと言われれば信じるレベルの言葉の数々に。自分はアリスにまんまと騙されていたと知る。
「グレイスと婚約破棄をして、どうするのですか。私にアリスの後始末をしろ、と?」
「そんなことをしたら、公爵家は終わる。心中したい程にアリス嬢に溺れている、とそう言うことか?違うなら口を噤め。愚か者が。」
父は見たこともない冷たい表情で、息子の言葉を切り捨てた。
「お前は、アリス・ロゼットに騙された愚か者として、生きるんだ。社交界で馬鹿にされながら。それでも貴族としては生きられるし、結婚もできる。妻には頭が上がらんだろうが、優秀な妻が出来るのだから、彼女に任せておけばよい。まさか、我が公爵家が下位貴族に頼らなければいけない日が来るなんてな。笑うに笑えない。」
笑えないと言いながら乾いた笑い声をあげて、父は天を仰いだ。王家からの提案で、ケヴィンの妻はすでに決められているらしい。
その相手が一度見たことがあるだけの、子爵令嬢だなんて、思いもせず。
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