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過去②
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最新版の貴族名鑑にも、ロビン子爵家なる家は存在していなかった。男爵令嬢は勉強は嫌いだが、より良い金蔓を見つける為にこういうことは調べるようにしていた。
「我が国でなければ、隣国?流石にそれは私では調べられないわ。」
何か方法はないかと、第一王子に尋ねてみると、勉強熱心だと褒められて、通常公開してはならない機密事項とやらをここだけの話として教えてくれた。
その話によると、やはりロビン家は隣国の貴族らしいが、子爵家ではなく公爵家だと言う。彼女の姉は王太子妃で、彼女は数年前に行方不明になった兄を探しに来た公爵令嬢だと言う。
「どうして、子爵令嬢だなんて……」
「確か、兄が行方不明になったと言うのは公表されていないらしい。兄と共に出奔したのは、兄の乳兄弟の侍従で、彼が兄を唆したらしいんだ。どうやらその侍従というのがギャンブルで借金をこさえてしまって、兄を同情させて、売ったのではないかと。」
「もしかして、その侍従とやらは」
「この国で姿を目撃されている。だから、彼女は我が国に留学してきたんだ。」
「お一人で、ですか?」
危ないのでは?と心配した素振りで彼女の周辺を探ると、第一王子はまたもや笑みを浮かべつつ、口がどんどん軽くなる。
「いや、流石に一人ではないさ。護衛と子供が一人、一緒に付いて来ている。護衛はまだしも、子供は、一体何の役に立つのかわからないが、まあ気にしなくて良いだろう。」
「護衛、というのは騎士か何かですか?怖い方だったら、どうしましょう。」
怯えるフリを見せると、第一王子は自分が守るから大丈夫だと大口を叩いた上で大切なことを明らかにした。
「彼女は、シューダー公爵家に滞在しているから気にしなくていい。婚約者は私に会いにこないし、君と護衛の男が出会うこともないだろう。」
男爵令嬢は自分に運が向いて来たと思った。自分が第一王子を籠絡しても、婚約者が近づいて来なければ、彼女を陥れることはできない。こうなれば、隣国からの公爵令嬢を利用して、悪役に配置してあげよう。
それはそうと、自分が入れ込んでいる役者は彼女の兄と侍従、どちらなのだろう。男爵令嬢は何となく、どちらにしても何かしらの犯罪を既にし終えた後のように思えた。
彼の様子から単に騙されて連れて来られたような雰囲気は感じ取れなかった。寧ろ、会いに来た令嬢に対して、自分の行いを後悔しているようなそんな様子だった。
彼からはいつも諦めのような、自らを憐れむようなそんな印象を受けていた。それが彼の美しい容貌と相まってあのような色気を醸し出すのだろう。
どちらにしても男爵令嬢は彼を離すつもりはない。
話から察するに、兄の可能性が高いかしら。侍従のフリをして潜んでいた?
それか、兄のフリをして、逃げている途中で本物と逸れ、本物の兄は侍従と間違えられて、殺されたか。
男に確かめるのが一番だが、公爵家の醜聞になるならば、彼女は隠そうとするかもしれない。付け込めるならそこだわ。
障害というと、護衛と子供ぐらいだけど相手が男なら何とかなるだろう、と高を括っていた。
「我が国でなければ、隣国?流石にそれは私では調べられないわ。」
何か方法はないかと、第一王子に尋ねてみると、勉強熱心だと褒められて、通常公開してはならない機密事項とやらをここだけの話として教えてくれた。
その話によると、やはりロビン家は隣国の貴族らしいが、子爵家ではなく公爵家だと言う。彼女の姉は王太子妃で、彼女は数年前に行方不明になった兄を探しに来た公爵令嬢だと言う。
「どうして、子爵令嬢だなんて……」
「確か、兄が行方不明になったと言うのは公表されていないらしい。兄と共に出奔したのは、兄の乳兄弟の侍従で、彼が兄を唆したらしいんだ。どうやらその侍従というのがギャンブルで借金をこさえてしまって、兄を同情させて、売ったのではないかと。」
「もしかして、その侍従とやらは」
「この国で姿を目撃されている。だから、彼女は我が国に留学してきたんだ。」
「お一人で、ですか?」
危ないのでは?と心配した素振りで彼女の周辺を探ると、第一王子はまたもや笑みを浮かべつつ、口がどんどん軽くなる。
「いや、流石に一人ではないさ。護衛と子供が一人、一緒に付いて来ている。護衛はまだしも、子供は、一体何の役に立つのかわからないが、まあ気にしなくて良いだろう。」
「護衛、というのは騎士か何かですか?怖い方だったら、どうしましょう。」
怯えるフリを見せると、第一王子は自分が守るから大丈夫だと大口を叩いた上で大切なことを明らかにした。
「彼女は、シューダー公爵家に滞在しているから気にしなくていい。婚約者は私に会いにこないし、君と護衛の男が出会うこともないだろう。」
男爵令嬢は自分に運が向いて来たと思った。自分が第一王子を籠絡しても、婚約者が近づいて来なければ、彼女を陥れることはできない。こうなれば、隣国からの公爵令嬢を利用して、悪役に配置してあげよう。
それはそうと、自分が入れ込んでいる役者は彼女の兄と侍従、どちらなのだろう。男爵令嬢は何となく、どちらにしても何かしらの犯罪を既にし終えた後のように思えた。
彼の様子から単に騙されて連れて来られたような雰囲気は感じ取れなかった。寧ろ、会いに来た令嬢に対して、自分の行いを後悔しているようなそんな様子だった。
彼からはいつも諦めのような、自らを憐れむようなそんな印象を受けていた。それが彼の美しい容貌と相まってあのような色気を醸し出すのだろう。
どちらにしても男爵令嬢は彼を離すつもりはない。
話から察するに、兄の可能性が高いかしら。侍従のフリをして潜んでいた?
それか、兄のフリをして、逃げている途中で本物と逸れ、本物の兄は侍従と間違えられて、殺されたか。
男に確かめるのが一番だが、公爵家の醜聞になるならば、彼女は隠そうとするかもしれない。付け込めるならそこだわ。
障害というと、護衛と子供ぐらいだけど相手が男なら何とかなるだろう、と高を括っていた。
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