美少年は男嫌い

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楽しい(隼人)

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家には帰らないと聞いた時、言いたくなさそうで、だから聞かなかった。
必要な書類を預かり、家に帰ると、母親はまだ帰っていない。多分当分帰らないのだろう。今度こそうまくいけば良いけれど。

いつもの洋食屋さんは、おばさんの性格含めて、連れて行きたかったので、気に入ってくれてよかった。

少しでも、温かい気持ちになってもらえれば良い。

大澤君の周りは殺伐としていて、何か温かみに欠ける。人間らしさ、というか何か足りない気にさせる。欠けたものを自分が与えられるとは思ってはいないものの、欠けた部分を少しでも埋める存在ではありたい。

それが、味方であろうと思う自分の役割だと思うから。

大澤君は部屋に入るとキョロキョロしていたが、人の家は落ち着かないよな。
とりあえず、熱いお茶を入れる。
じじ臭いかもしれないけれど、これが一番落ち着く。

「パジャマ、これで良いか?」
Tシャツとスウェットを出して渡す。
渡す前に匂いを嗅いで、洗ってあるのを確認する。ちゃんと、良い匂いがする。
大丈夫だ。

「あ、ありがとうございます。」
自分のサイズだから少し大きめだ。

「先、風呂入る?それなら、眠くなるまで話せるけど。」
「じゃあ、いただきます。」
タオルを出しておく。
大澤君が笑ったようだ。
不思議に思っていると、
「いや、お母さんみたいだなって。」
よく言われる。実の母にも。

「熱かったら水入れて。」
うちの風呂は温度調節ができない。
古い家だし、仕方がない。

大澤君がお風呂に入っている間に、布団を敷いておく。敷きながら案外自分がワクワクしてることに気がついた。

家にだれかが泊まるなんて久しぶりだ。

ふと、前に泊まったやつのことを思い出して、暗くなる。
忘れようとしているので、普段は出てこない。こうやって楽しいときに、いきなりでてきて、自分を困惑させるのだ。

せっかくの楽しい気持ちが萎んでいく。
顔を両手で挟んで、叩く。
気合いを入れる。
大澤君の前で悲しい顔なんてできない。
彼の方が大変なのだ。彼の方が泣きたいのだから。

自分はまだ大丈夫。あんなの、トラウマでもなんでもない。

大澤君が上がったみたいだ。
「ちゃんと温まった?」
そこには妙にスッキリとした顔の大澤君がいた。

「ちゃんと入りました。気持ちいいですね。湯船。」
一人暮らしだと、入らないよな。
水を渡すとゴクゴクと良い音をさせて飲んでいる。

「俺もザッと入ってくるわ。」
「はーい。ごゆっくり」

お風呂に入っていると、たしかに湯船は久しぶりで、凄く気持ちが良い。お腹が膨れているから、気を抜くと寝そうだな、と思った。






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