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当事者⑧
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気がつけば、籠に囚われた小鳥、ではなく檻に囚われていた。あんなに守られていた辺境でそんなことができるのかと、首謀者を見れば、なるほど、と言うべきか。一度しか見たことはないが、しっかりと覚えている顔がそこにはあった。
しかし、彼女がリチャードを捕まえる意味がわからない。まだアーサー殿ならわかるのに。末の妹が懸想している相手として捕まえるならまだわかる。とはいえ彼ならばこんなに簡単に捕らえられる失態を演じることはなかっただろう。
「どうして貴女が。」
「んー、そこはどうして私が?と聞くところですわよ?質問は正しく行わなくては。」
「どうして、貴女が私を、では駄目ですか。」
「私が貴方を捕えたのは、当事者だから、としか言いようがありません。まさか偽物の王女が現れるなんて思わなかったから、どうしても貴方を守りたかったの。恨むならあの嘘つき共を恨んで頂戴。」
こうして見ると王弟殿下にとても良く似ている。イザベル嬢は奥方の遺伝が強いのか王弟殿下とは並んでいなくてはその血を感じられないが、彼女は最初に生まれた所為か王弟の遺伝を感じずにはいられない。どこかで聞いた話に、女の子は男親に男の子は女親に似ると幸せになれると言うものがある。
子供というのは親に少なからず似るのだから、ご都合主義としか思わなかったが、あの一族に生まれて、家長に似ているというのは大きな武器になったろう。
「貴方は、何も知らなくていいの。ちゃんと私が守って差し上げますわ。何も能力があるのはあの女達だけではないのですから。」
セーラ嬢はそう言って、リチャードに微笑みを向ける。
リチャードは彼女と会うのは二度目にも関わらず、何故か懐かしい気持ちがして、先程少し感じた恐怖が薄れていくのがわかった。
「詳しく教えていただけませんか。何があって、どうしてこうなっているのか。」
セーラ嬢はええ、勿論と頷いて、話を始めた。それは俄かには信じがたい話で、だけどリチャードにはすんなりと入って来た為に、彼女の話が実際にあったものだと信じられたのだった。
リチャードは何度も同じ人生をやり直していて、毎回同じ人物に殺されて死んでいると言う。
自分を死に追いやる女の名前はエミリア・デンバーと言い、リチャードを生き返らせる相手は、アルマ嬢だという。彼女達はその持っている能力により記憶が残っているが。リチャードを含む巻き込まれた者達は、記憶を持たないという。ならば何故セーラ嬢に記憶があるかというと。
「私にも同じような能力があるからですわ。」
セーラ嬢は三人の能力の違いについて説明した。エミリアという女性は、リチャードを毎回殺す人物だが、自分が望んだ時間に、戻ることができるという。所謂やり直しで、エミリア嬢がやりたいことを全てやり直すことが出来る。
アルマ嬢は、次に何が起こるか予想し、回避することで、全く別の人生を送ることができる能力。一見エミリア嬢と同じように見えるが、エミリア嬢はエミリア以外のものにもなれるが、アルマ嬢の方は、あくまでもアルマ嬢でしか行動できない。
「私は当初、多分アルマ嬢に巻き込まれて能力を目覚めさせたのではないかと。私の能力は、リセットする際の副作用を軽減すること、なのです。」
やり直しという能力は何も無制限で何の代償もなく行われる訳ではない。それ相応にペナルティは存在する。
エミリア嬢とアルマ嬢のペナルティはそれぞれあって、本来ならそれは当事者が背負うのだが、それが正しく行われていないとセーラ嬢はいう。
「ペナルティを他者に求めているのはエミリア嬢で、その先は貴方なの。彼女は貴方を毎回殺すことで、ペナルティを回避したいみたいね。私は彼女がやりすぎているのを止めるために来たの。貴方を絶対に殺せないようにしたら、多分連鎖は止まると思うの。アルマ嬢も貴方の身内に請われて貴方を助けようとしているけれど、どうしても前の人生の記憶が邪魔をして、素直になれないでいるのよ。」
セーラ嬢はこれまでのリチャードの人生を振り返るために長い話を始めた。
しかし、彼女がリチャードを捕まえる意味がわからない。まだアーサー殿ならわかるのに。末の妹が懸想している相手として捕まえるならまだわかる。とはいえ彼ならばこんなに簡単に捕らえられる失態を演じることはなかっただろう。
「どうして貴女が。」
「んー、そこはどうして私が?と聞くところですわよ?質問は正しく行わなくては。」
「どうして、貴女が私を、では駄目ですか。」
「私が貴方を捕えたのは、当事者だから、としか言いようがありません。まさか偽物の王女が現れるなんて思わなかったから、どうしても貴方を守りたかったの。恨むならあの嘘つき共を恨んで頂戴。」
こうして見ると王弟殿下にとても良く似ている。イザベル嬢は奥方の遺伝が強いのか王弟殿下とは並んでいなくてはその血を感じられないが、彼女は最初に生まれた所為か王弟の遺伝を感じずにはいられない。どこかで聞いた話に、女の子は男親に男の子は女親に似ると幸せになれると言うものがある。
子供というのは親に少なからず似るのだから、ご都合主義としか思わなかったが、あの一族に生まれて、家長に似ているというのは大きな武器になったろう。
「貴方は、何も知らなくていいの。ちゃんと私が守って差し上げますわ。何も能力があるのはあの女達だけではないのですから。」
セーラ嬢はそう言って、リチャードに微笑みを向ける。
リチャードは彼女と会うのは二度目にも関わらず、何故か懐かしい気持ちがして、先程少し感じた恐怖が薄れていくのがわかった。
「詳しく教えていただけませんか。何があって、どうしてこうなっているのか。」
セーラ嬢はええ、勿論と頷いて、話を始めた。それは俄かには信じがたい話で、だけどリチャードにはすんなりと入って来た為に、彼女の話が実際にあったものだと信じられたのだった。
リチャードは何度も同じ人生をやり直していて、毎回同じ人物に殺されて死んでいると言う。
自分を死に追いやる女の名前はエミリア・デンバーと言い、リチャードを生き返らせる相手は、アルマ嬢だという。彼女達はその持っている能力により記憶が残っているが。リチャードを含む巻き込まれた者達は、記憶を持たないという。ならば何故セーラ嬢に記憶があるかというと。
「私にも同じような能力があるからですわ。」
セーラ嬢は三人の能力の違いについて説明した。エミリアという女性は、リチャードを毎回殺す人物だが、自分が望んだ時間に、戻ることができるという。所謂やり直しで、エミリア嬢がやりたいことを全てやり直すことが出来る。
アルマ嬢は、次に何が起こるか予想し、回避することで、全く別の人生を送ることができる能力。一見エミリア嬢と同じように見えるが、エミリア嬢はエミリア以外のものにもなれるが、アルマ嬢の方は、あくまでもアルマ嬢でしか行動できない。
「私は当初、多分アルマ嬢に巻き込まれて能力を目覚めさせたのではないかと。私の能力は、リセットする際の副作用を軽減すること、なのです。」
やり直しという能力は何も無制限で何の代償もなく行われる訳ではない。それ相応にペナルティは存在する。
エミリア嬢とアルマ嬢のペナルティはそれぞれあって、本来ならそれは当事者が背負うのだが、それが正しく行われていないとセーラ嬢はいう。
「ペナルティを他者に求めているのはエミリア嬢で、その先は貴方なの。彼女は貴方を毎回殺すことで、ペナルティを回避したいみたいね。私は彼女がやりすぎているのを止めるために来たの。貴方を絶対に殺せないようにしたら、多分連鎖は止まると思うの。アルマ嬢も貴方の身内に請われて貴方を助けようとしているけれど、どうしても前の人生の記憶が邪魔をして、素直になれないでいるのよ。」
セーラ嬢はこれまでのリチャードの人生を振り返るために長い話を始めた。
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