笑わない妻を娶りました

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鳥の正体は  ミスティア視点

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「お前、変な笑い声だな。」

幼い頃、王宮の庭でかくれんぼをして遊んでいた私達姉妹にやたらと突っかかってきた金髪の少年は、初対面から失礼だった。

「黙っていたら美人なのに、笑うと気味が悪い。悪魔みたいだな。」

人には誰しも、苦手なことがある。妹のリーゼは、感情を隠すのが、何より苦手。淑女教育を共に受けたのに、腹芸ができないほど手に取るように感情が解られてしまう。

私は一見完璧なので、早い内から、王太子殿下との婚約話が勧められてきた。だけど、王太子殿下が、私の笑い声を悪魔みたいだと称したことから、不仲を噂され、私も嫌なことを言う人には、好意を持てなかったため、婚約には至らなかった。

ある日、王太子殿下に贈り物をいただいた。多分誕生日のプレゼントだったように思う。その頃はまだ辛うじて彼の婚約者候補に名を連ねていたこともあり、プレゼントは受け取った。

が、それは生きていた。当時の自分の背丈よりも大きな鳥は、ただひたすらに怖かった。

「南国に棲む鳥なのだが、鳴き声がお前にそっくりだと思ってな。これでお前がいくら声を上げて笑っても、こやつらのせいにしてしまえるぞ。」


リーゼはこの話に怒っていた。どこまでも失礼な奴だと、他の人が聞いたら不敬だと注意されそうなぐらいには、憤っていた。

「ギャアー、ギャアー」
羽を大きく広げ、全身で主張するような鳴き声を聞いていると、何だか可笑しくなって、一緒に笑ってしまった。

私の笑い声は、鳥の声に似ていなかったし、全く別の鳥と間違えられるほどには、違ったけれど、笑い声をあげられることは、少しずつ溜まったストレスを発散するにはちょうど良い時間だった。



タイロン伯爵家との縁談は、王家とのしがらみのない出世欲のあまりない新興貴族、という振り分けに引っかかった為だ。次期当主であるスタン様は、これまで目立った悪癖はなく、女性関係も問題ない。王太子殿下の婚約者候補だった私を政治利用しようと目論む様子もない。

何より年が離れていることが、穏やかな大人であることが、私は嬉しかった。

話してみると真面目で人の良い性格であることがわかる。リーゼは二人きりになるのを阻止するために、悉く邪魔をしていたが、それは私を思うあまりの行動だとはわかっている。

私はリーゼのように可愛らしく笑えない。悪魔のような笑い声を彼に聞かせることもできない。それでも穏やかに笑って話すスタン様を私はお慕いしている。

試すようで申し訳ないけれど、悪魔の笑い声でも大丈夫と私が胸を張って言えるまでは、彼には秘密。

あの時の鳥の正体を知られるワケにはいかない。彼に変な笑い声、と思われるのは、多分耐えられないから。
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