笑わない妻を娶りました

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ライバル現る ミスティア視点

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結婚式も無事終わり、タイロン家での生活が始まった。とは言え最初の何日かは、ベッドから起き上がれないほどだった為、何の役にも立っていないのだけど。

温室の鳥達は籠に入らなくて良くなって嬉しいのか自由を満喫している。

前伯爵夫人のおかげで、家の雰囲気も良い。若い侍女達も、ミスティアと友好的に接してくれている。

些かそのせいで、スタンの機嫌が悪くなることがあるが、拗ねているそうだ。

温室の管理は、ミスティアに委ねられた。鳥の世話は前と同じアンと、スタンが用意してくれた鳥専門の医師が一人。

彼は国内初の鳥専門の医師だそう。鳥の研究をしているだけあって、南国の鳥に興味津々な彼は、人見知りな鳥に逆らわず、少しずつ友好関係を築いている。

「この鳥に名前などはありますか。」
「ティア、ですわ。私の分身のような気がしていたので、そう名づけたのですが。」
「うーん。さすがにその名前はよびにくいですね。伯爵に殺されちゃいますね。」
「でも、旦那様もご存知だから、大丈夫じゃないかしら。」
「なら、私が旦那様と同じようにティアと発しても大丈夫と言うことですか?」

一瞬、「ティア」と呼ぶスタンの顔が脳内再生され、ミスティアは首をぶんぶんと振る。

「それはダメね。新しい名前を考えるわ。決まったら教えます。」
「はい、よろしくお願いします。」

脳内再生されたスタンは、ここ最近のベッドの上のスタンで、一連のことを思い出してミスティアは顔を赤らめた。

ミスティアは知らなかったが、タイロン家の使用人は皆初々しい反応をするミスティアを密かに愛でている。

同時に噂は当てにならないものだと、実感していた。

彼らはミスティアが「氷の女神」と呼ばれていることも知っているが、スタンとの交流で氷が溶かされつつあってから、会っている為か、氷の部分を感じられることはなかった。

そんな良い雰囲気のタイロン家に我が物顔で居座る男がいる。結婚式から数日間、ミスティアが起き上がれなかった日もその男はわざわざ現れ、スタンに纏わりついていた。

ミスティアの目下のライバルだ。

スタンの執務室にはその男が入り浸っている。仕事の邪魔になったとしても、ミスティアには会わせたくない、と言って矢面に立って下さっている。

「あいつ、どうやら式でミスティアに惚れたらしい。」

スタンには一つ年下の妹さんがいる。平民の男性と恋に落ち、既に伯爵家から出ているがその一人息子のリチャード君(5)が、ミスティアに会いにくるようになった。

ミスティアは可愛い彼と話したいとは思っているが、彼はスタンも大好きらしく、中々執務室から出てこない。

ミスティアとしては、スタンを独り占めされているようで、少しモヤモヤするし、一緒に遊びたいし、で混乱してしまう。

リチャード君の親である妹さんは、新婚家庭にお邪魔するのを申し訳なく思っているが、同時に子供を連れてくることで具体的に子がほしいと思わせたいと思っているようで、あと単純にミスティアと話がしたいようで、結果頻繁に顔を出している。

王太子殿下は、さすがに新婚家庭には来なかった。リーゼが、失恋に泣き崩れているの、とか言っていたけれど、よくわからない。失恋って誰に?

とはいえ、確かにスタンのリチャード君に対する姿を見ていると、子供も早く欲しいなと思う。

それを素直に言うことは妹さんに止められた。兄には刺激が強すぎる、と。


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