僕はお人形を愛でる

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魔法使い

幽閉された王子 ★

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僕はこの国の第一王子。普通なら王位継承権一位なんだけれど、僕は一度目の試験で脱落してしまったから、もう王様にならなくって良いんだって。良かった。僕はね、出来ることならずっとお人形遊びをしていたいんだ。

お母様もお父様もいないこの塔にはね、王族の人たちを閉じ込める部屋があるの。僕は今そこに住んでいる。結構快適だよ。御飯も美味しいし。お人形はあるし。僕のお人形はね、動くんだよ。僕の魔法でね、色んな動きをするの。

僕が一度目の試験で作った人形は取り上げられてしまってここにはないけれど、動かすだけならできるよ。

この塔にはね、魔封じの塔って名前があるの。魔法を使えなくするって言う意味なんだけれど、僕の前にここに入れられた人がどうやらその魔封じの機能を壊しちゃったみたいで、今は全然使えるの。笑っちゃうよね。

だから寂しくはない。お人形遊びしていたら、楽しいから。

僕はずっとここにいてもいいんだけど、ちょっと飽きてきちゃって、たまに街へ繰り出すんだ。念の為に、僕のお人形を置いておくんだよ。僕にそっくりで、僕より上手に笑うお人形を。一つ増えたぐらいでは気づかないんだ。みんな。

お人形としか思っていないから。

僕が前にいた部屋ではね、お人形遊びをするなんて、女の子みたいだって、言われたんだ。そこには女の子しかいなかったから、一緒に遊ぶ?って声をかけたの。本当は一人で遊びたかったのだけど。そしたらね、怒られちゃったんだ。泣かれちゃって、僕の大切なお人形を壊されちゃったの。こんなひどいことをする子とは遊びたくなかったのに、僕を見かけると、わざわざ声をかけてくるんだ。僕は拒まないと思ってるんだ。

一度、拒んだらね、大声で泣かれて、お母様に叱られた。僕のせいじゃないのに。あの子が僕の大切な人形を壊したせいなのに。

僕はね、ここに閉じこもっているのは、その子をどうにかした、って疑いをかけられてるから、何だって。

あの子は自分で落ちたんだよ。城のバルコニーから、自分で。僕とは距離が離れていたし。どうして僕が何かしたなんて思うんだろうね。

あの子の落ちた先に、僕の人形が転がっていたんだって。多分それで疑われたんだろうけど、それはあの子が先に人形を落として壊したからで、僕のせいではないよ。

僕は嫉妬してるってみんな言うんだ。嫉妬ってどう言う意味なの。あの子が居なくなって世界は変わったんだって。そうかな。僕はお人形を修復していたからわからないけれど、あの子の耳障りな声がもう聞こえないと思うと、笑いを堪えることが難しいと思ったよ。

僕はいつも通り、お人形遊びをする。
あの子のいないこの世界で。

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