巻き戻りの人生は幸せになれるはずだったのに

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とんだ食わせ者

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第二王子の周辺には女が三人。ベアトリス嬢の時もそうだったかはわからないが、その三人ともがどういう訳か、マリーとの縁談を支持していた。

第二王子カートは側妃腹だが、王妃の子である第一王子アーノルドより優しげな容貌から女性に人気があった。

ベアトリス嬢は自分に自信があった為に知らなかったのか、全てを潰していたのかはわからないが、彼女のいない今、カートの周りの女達はやりたい放題だった。

マリーとの仲は、自分達の代わりに矢面に立って貰う為、応援する、と言うことらしい。所謂お飾りの妻にする気だということだ。

公爵令嬢に対して随分な態度だと思うが、それは彼女達が無知な故に吐かれた言葉であり、そんなところも王子は気に入っているという。

三人の素性は一番上の身分で伯爵令嬢。次に男爵令嬢、最後は王宮メイドを馘になった平民落ちの元子爵令嬢だった。

この中でカート王子の一番のお気に入りは元メイドの女らしい。どこが良いのか全くわからないが、彼女の顔を見て驚いた。彼女はベアトリス嬢によく似ていた。もしかすると、前の公爵夫人の婚姻相手が子爵だったのかもしれない。ベアトリス嬢は夫人に似ていたので、父が違えど似た顔が生まれることもあるのだと、ヘルマンは納得した。

ベアトリス嬢と婚約していた時は、マリーばかりを気にしていたのに、今回はベアトリス嬢によく似た女の為にマリーを利用しようとしている。

カートの身勝手さに、ヘルマンは自らの行いを重ねて、気分が悪くなった。

ベアトリス嬢によく似た女は名前をマリアと言った。名前が似ているのは偶然か。マリーが選ばれ、目をつけられたのは彼女の名前に似ているから、というのもあったのかもしれない。

カート王子と最も歴史が長いのは、リリアーナ・グラント伯爵令嬢。彼女は所謂幼馴染という話だが、以前にはいなかった存在だ。会って早々ベアトリス嬢に潰されたのか、前回には会ったことがなかった。

彼女は、その昔危ない目に遭ったところをカート王子に助けられたとかで彼に心酔しているような様子だった。マリーとの縁談も、悲しいけれど仕方ないと思っているらしい。彼女は愛する人と言うよりはまるで「神」でも崇めるようにカート王子を見ている。彼が望むことは、辛いことでも、自分は試練として乗り越えないといけない。それは恋人というよりは修行僧のように思えて、気味悪く感じた。

三番目の女、男爵令嬢シェリーは、わかりやすい子だった。お金持ち大好き!チヤホヤしてくれる人大好き!綺麗な男大好き!権力者大好き!

こういう裏表の無さが、愛玩動物のように可愛がられる所以だろう。邪魔になればすぐに切られる後腐れのない彼女はこの中では一番愛人向きであると言える。

こう言っては何だが確かにどの女性も第二王子の相手としては不足だと思う。

第一王子アーノルドはすでに隣国の王女と婚約していることから、カートが公爵家に打診をしてくることは分かり切っていた。

もしかしたら、前もって公爵はこのことに気がついていて、苦肉の策でヘルマンとの婚約を打診したのかもしれない。

調べたのは失敗だった。知ってしまうと、このままにはしておけない。

ヘルマンはつくづく自分が学べない男だと自覚した。
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