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おかしい マリア視点
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おかしい。いつもならもう暫くしたら、第一王子アーノルドが病に倒れるの。実際には病ではなく、カート第二王子による毒が原因なのだけど。
いくら待っても、倒れるどころか、ピンピンして、公務を執り行っている。何かがうまくいっていないのかしら。直接絡みがある訳でもないから、詳細はわからないけど、嫌な予感ってのは当たるのよ。
うまくいっていないとわかるからか、アーノルドではなくて、カートの方が体調を崩してる。多分今度は先手を取られたんだと思う。思い当たる節があるからって、此方を恨めしく睨むのはやめてほしい。私が貴方を殺して何の得があると思うわけ?
アーノルドの暗殺がうまくいかないからって、隣国の王女を狙ったらしいけどうまくは行くはずもなく。返り討ちに遭って、カートの手駒は見る見るうちに削られていく。
これはアーノルド側に同じく巻き戻りがいるんじゃない?確かめる術なんてないわよ。勝手な思い込みなんだし。何せ巻き戻りだ、やり直しだって口にして頭のおかしい人認定されても困るのよ。
男爵令嬢はあっけらかんとしていたけれど、空気を読むのは得意だったみたいでカートの周りからいつのまにか姿を消していた。
「あいつが、スパイだったんだ。」なんてカートは喚いているけれど、そんなこと誰も信じない。だってあんなお気楽なスパイ、いないでしょ。楽しく生きられることだけに、命を賭けていたようなあんな女が。伯爵令嬢は何も写していないような曇り切った瞳で、不機嫌なカートの前でニコニコしている。
「いなくなった人なんてどうでも良いじゃありませんか。」
伯爵令嬢はとても呑気にそんなことを言っていて、カートは黙り込んでしまった。
裏工作してまで欲しがった彼女に対しては強く言えないところがある。カートは伯爵令嬢に対してはまるでヘタレで、情けない男なのだ。
マリアは、また次の死が近づいているような予感に囚われる。気がついたらまた鉱山にいて、新しい名を貰うのだと、寝るたびに考える。今度はどんな人間になるのだろう。次は正義側に生まれ変わることができるかもしれない。だって漸く悪を打ち倒したんでしょう。でもいくら願っても新しい人生を貰えることも、今の人生が終わることもマリアには訪れなかった。
そうしているうちに、カートが死んだ。愛しのリリアーナに寝首を掻かれたらしい。
何がどうして、と考えたところで、マリアは忘れていたことを思い出した。どうして忘れていたのか全く信じられないこと。
ああ、そういうことね。最初から、間違えていた。マリアはこの世界の主人公が誰かを思い出したのだ。
いや、無理でしょう。無理よ、無理。
あんな小さなヒントで気づけという方が無理よ。
マリアは全て知ってしまった。多分これが罪だった。罪を贖う方法が巻き戻りだったのだ。
懐かしい声がマリアに語りかける。
「シェリー・シェルドン、起きなさい。今から貴女への罰を言い渡します。」
彼女は声のする方へ座ったまま一礼すると、現実に戻された。
伯爵家の女騎士、シェリー・シェルドンは、二つ前の人生ではない。マリアの身体を通して記憶を彷徨い、自分の行いを見せつけられたのだった。彼女は罪を理解する為に自分の過去の行いを見させられていた。これまでの一連の巻き戻りは自分のものではない。だから、名前が度々変わったし、いつも悪さの内容が違った。彼女達はすでに生身の身体を持たない。それでも彼女達には意思が残っていた。罪人を逃さない為に、殺された無念をわかって貰いたくて。
「私は第二王子を殺していません。」
それは真実で、ある意味間違いだ。それが誰を意味するかをわかっていたらの話だが。
いくら待っても、倒れるどころか、ピンピンして、公務を執り行っている。何かがうまくいっていないのかしら。直接絡みがある訳でもないから、詳細はわからないけど、嫌な予感ってのは当たるのよ。
うまくいっていないとわかるからか、アーノルドではなくて、カートの方が体調を崩してる。多分今度は先手を取られたんだと思う。思い当たる節があるからって、此方を恨めしく睨むのはやめてほしい。私が貴方を殺して何の得があると思うわけ?
アーノルドの暗殺がうまくいかないからって、隣国の王女を狙ったらしいけどうまくは行くはずもなく。返り討ちに遭って、カートの手駒は見る見るうちに削られていく。
これはアーノルド側に同じく巻き戻りがいるんじゃない?確かめる術なんてないわよ。勝手な思い込みなんだし。何せ巻き戻りだ、やり直しだって口にして頭のおかしい人認定されても困るのよ。
男爵令嬢はあっけらかんとしていたけれど、空気を読むのは得意だったみたいでカートの周りからいつのまにか姿を消していた。
「あいつが、スパイだったんだ。」なんてカートは喚いているけれど、そんなこと誰も信じない。だってあんなお気楽なスパイ、いないでしょ。楽しく生きられることだけに、命を賭けていたようなあんな女が。伯爵令嬢は何も写していないような曇り切った瞳で、不機嫌なカートの前でニコニコしている。
「いなくなった人なんてどうでも良いじゃありませんか。」
伯爵令嬢はとても呑気にそんなことを言っていて、カートは黙り込んでしまった。
裏工作してまで欲しがった彼女に対しては強く言えないところがある。カートは伯爵令嬢に対してはまるでヘタレで、情けない男なのだ。
マリアは、また次の死が近づいているような予感に囚われる。気がついたらまた鉱山にいて、新しい名を貰うのだと、寝るたびに考える。今度はどんな人間になるのだろう。次は正義側に生まれ変わることができるかもしれない。だって漸く悪を打ち倒したんでしょう。でもいくら願っても新しい人生を貰えることも、今の人生が終わることもマリアには訪れなかった。
そうしているうちに、カートが死んだ。愛しのリリアーナに寝首を掻かれたらしい。
何がどうして、と考えたところで、マリアは忘れていたことを思い出した。どうして忘れていたのか全く信じられないこと。
ああ、そういうことね。最初から、間違えていた。マリアはこの世界の主人公が誰かを思い出したのだ。
いや、無理でしょう。無理よ、無理。
あんな小さなヒントで気づけという方が無理よ。
マリアは全て知ってしまった。多分これが罪だった。罪を贖う方法が巻き戻りだったのだ。
懐かしい声がマリアに語りかける。
「シェリー・シェルドン、起きなさい。今から貴女への罰を言い渡します。」
彼女は声のする方へ座ったまま一礼すると、現実に戻された。
伯爵家の女騎士、シェリー・シェルドンは、二つ前の人生ではない。マリアの身体を通して記憶を彷徨い、自分の行いを見せつけられたのだった。彼女は罪を理解する為に自分の過去の行いを見させられていた。これまでの一連の巻き戻りは自分のものではない。だから、名前が度々変わったし、いつも悪さの内容が違った。彼女達はすでに生身の身体を持たない。それでも彼女達には意思が残っていた。罪人を逃さない為に、殺された無念をわかって貰いたくて。
「私は第二王子を殺していません。」
それは真実で、ある意味間違いだ。それが誰を意味するかをわかっていたらの話だが。
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