望んだことをしてあげただけなのに、妹が烈火のごとく怒り出したのですが

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喧嘩中の婚約者

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アラン・ストック公爵令息は、つい先日喧嘩をしてしまった大切な婚約者からの手紙を前に首を傾げていた。

愛しい婚約者のシスティーナは、素直に謝れなくて、手紙にしたのかと思ったら、書いてあったのは謝罪ではなく、「暫く淑女はお休みにします。」と言った宣言だった。

アランはシスティーナがどう言った心境でこう書いたかわからなくとも、淑女を休むのは賛成だった。完璧で美しい彼女は、少し息抜きを覚えた方が良い。

欲を言えば、アランにも少しは頼ってほしい。弱音を吐くことを嫌うのは、わかるけれど、アランはシスティーナの細部までを知りたいと、常日頃思っているのだから、何でも話して甘えてほしい、と感じている。

今回の喧嘩だって、頑張りすぎる彼女が心配でお節介だとはわかっているが、口を出してしまったのがきっかけだ。運悪く、そこに関係の無い第三者の悪意が入り込み、大袈裟になってしまっただけ。

悪意の元となったどこかのご令嬢は、公爵家からの苦情に、生意気にも口答えして来たが、アランからの最後通告で、黙らざるを得なくなった。

そもそもストック公爵家と、ローレン侯爵家の婚約にたかだか下位貴族のご令嬢が口を挟むこと自体、間違っている。

「私なら、貴方に嫌な思いなどさせません。」

「システィーナではない君には何の魅力も感じないし、嫌悪感しか湧かないから、すでに矛盾しているね。」

システィーナしか要らないアランに、自分を売り込んでどうしようというのだろう。アランには常々疑問が浮かぶ。システィーナと自分を比べて、自分の方が、と思える傲慢さを知れば良い。

アランはシスティーナ以外を目に入れたくはない、どうすればそんなことが可能かを真剣に考え始めた。

アランの元にローレン侯爵家のご令嬢が先触れも無しに来たとの報が入る。

「忙しいので時間が取れない、と追い返してくれ。」

先程淑女はお休み宣言があったとしても、システィーナは無礼な真似をしないから、多分来たのは彼女の妹だろう。

姉の婚約者の家に、何の約束もなく現れる、非常識な妹。アランはシスティーナの妹の顔を思い出せないでいる。

システィーナと似た容姿なら、まだ見栄えはするだろうが、似たぐらいなら、システィーナ本人を眺める方がアランには重要だ。それに今日のシェアード家の茶会で、彼女がやらかした話は聞いている。話によると、アランのことが好きだとほざいているという。

だから、何だ。

システィーナの妹でしかない彼女をアランが望むなどあり得ない。

「お待ちになるそうですが、どうされますか。」

「……ならずっと待たせておけばよい。勝手に帰るだろう。」

勝手に来たのだから勝手に帰れ。アランはシスティーナの妹を放置した。彼女は二時間ほど待ってから、自主的に帰って行った。

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