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無知は罪(隔世遺伝)
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父は絶句した。ロザリアの言っている意味がわからない訳ではないのだが、何の話をしているか理解が追いつかないでいた。アレクシスの顔を見るに、息子も今聞いたのだろう。苦々しい表情でさっきまでロザリアを可愛いと思っていたことすら忘れたような顔をしている。
「ロザリアはアラン君が好きなんじゃなかったのかな?」
絞り出せたのはそれだけ。
「ええ。私もクリス様にお会いするまでそう思ってました。だけど違ったのです。第一王子クリス様にお会いして、私は愛を知ることができたのですわ。アラン様に感じていたのは義兄としてのシボですわ。」
「シボ?ああ、思慕ね……」
ロザリアの口から聞きなれない言葉は、全てシスティーナの言葉を繰り返したものだと、最近知った。彼女は頭の良さそうな話し方をシスティーナを参考に真似しているらしいのだが、うまくはいっていない。
話していて気づいた。これまで自分はロザリアが自分に似ていると思い込んでいたのだ。妻に似てしっかり者のシスティーナと違い、要領が悪く努力してもできないロザリアは、自分が守ってやらなくては、と変に意識していた。子を守るという意味ではシスティーナだって同じであったと言うのに。
だがロザリアは自分に似ているのではない。妻の母に似ているのだ。反面教師で子供が皆しっかりしたというあの義母に。
義母との出会いは強烈だった。人のものが欲しいという悪癖があった彼女は、社交界で随分と嫌われていた。政略結婚で侯爵夫人となった後も男女間のトラブルは多かったと聞く。だからこそ自分が婿入りできたのだ。義母の食指が向かない相手こそが、婿の最低限の条件だったからだ。
自分ではなく義母に似ているのだと思うと、急にロザリアが可愛く見えなくなって、寧ろ家を傾ける恐怖の存在に見えてきた。
アレクシスも漸く頭が回り始めたのか、どうにか被害を最小限にしようと考えている。
興奮したロザリアが話すには、第一王子クリストファーと婚約を考えていて、既に二人はそういった関係だと周りには知られているらしい。
「ロザリアは知っているんだよな?知った上で第一王子との縁を望むんだな?」
「勿論です。私は何があってもクリス様と添い遂げますわ。」
そう言い切られてしまうと、残念ながら何を知っているのか、多分勘違いではないのかと、問い詰めたくともできない。今になってシスティーナの言っていた意味がわかった。
「ロザリア、君がそれほどまでに第一王子を愛しているならば私達はそれを否定することはできない。だが侯爵家当主として、彼だけは認めるわけにはいかない。家と彼、どちらを選ぶか、考えなさい。」
「お父様?如何してそんな事を仰るの?」
ロザリアはアレクシスに助けを求めたが、名前だけでも当主だった父には逆らわなかった。彼にはわかっていたのだ。ここでロザリアの味方にでもなれば、自分までも簡単に放り出されてしまうだろうことに。助けがないと理解したロザリアはそれでも恋に夢中になっていたのだろう。
「そんな、酷いわ。二人ならわかってくれると思っていたのに。もしかして、またお姉様なの?私には応援するなんて言っておいて、こんな形で裏切るなんて酷いわ!」
システィーナに文句を言う為か飛び出して行ったロザリアを見ながらほぼ同時に二人のため息が重なった。
「システィーナの言った通りだ。」
「私達は間違えたのですね。」
とはいえ、今更システィーナに擦り寄る真似は許されないだろう。ロザリアを切り捨てたとして、この家に二人の居場所はまだあるだろうか。今になって契約書の内容に思いを馳せるアレクシスと、二人して仲良く途方に暮れた。
「ロザリアはアラン君が好きなんじゃなかったのかな?」
絞り出せたのはそれだけ。
「ええ。私もクリス様にお会いするまでそう思ってました。だけど違ったのです。第一王子クリス様にお会いして、私は愛を知ることができたのですわ。アラン様に感じていたのは義兄としてのシボですわ。」
「シボ?ああ、思慕ね……」
ロザリアの口から聞きなれない言葉は、全てシスティーナの言葉を繰り返したものだと、最近知った。彼女は頭の良さそうな話し方をシスティーナを参考に真似しているらしいのだが、うまくはいっていない。
話していて気づいた。これまで自分はロザリアが自分に似ていると思い込んでいたのだ。妻に似てしっかり者のシスティーナと違い、要領が悪く努力してもできないロザリアは、自分が守ってやらなくては、と変に意識していた。子を守るという意味ではシスティーナだって同じであったと言うのに。
だがロザリアは自分に似ているのではない。妻の母に似ているのだ。反面教師で子供が皆しっかりしたというあの義母に。
義母との出会いは強烈だった。人のものが欲しいという悪癖があった彼女は、社交界で随分と嫌われていた。政略結婚で侯爵夫人となった後も男女間のトラブルは多かったと聞く。だからこそ自分が婿入りできたのだ。義母の食指が向かない相手こそが、婿の最低限の条件だったからだ。
自分ではなく義母に似ているのだと思うと、急にロザリアが可愛く見えなくなって、寧ろ家を傾ける恐怖の存在に見えてきた。
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興奮したロザリアが話すには、第一王子クリストファーと婚約を考えていて、既に二人はそういった関係だと周りには知られているらしい。
「ロザリアは知っているんだよな?知った上で第一王子との縁を望むんだな?」
「勿論です。私は何があってもクリス様と添い遂げますわ。」
そう言い切られてしまうと、残念ながら何を知っているのか、多分勘違いではないのかと、問い詰めたくともできない。今になってシスティーナの言っていた意味がわかった。
「ロザリア、君がそれほどまでに第一王子を愛しているならば私達はそれを否定することはできない。だが侯爵家当主として、彼だけは認めるわけにはいかない。家と彼、どちらを選ぶか、考えなさい。」
「お父様?如何してそんな事を仰るの?」
ロザリアはアレクシスに助けを求めたが、名前だけでも当主だった父には逆らわなかった。彼にはわかっていたのだ。ここでロザリアの味方にでもなれば、自分までも簡単に放り出されてしまうだろうことに。助けがないと理解したロザリアはそれでも恋に夢中になっていたのだろう。
「そんな、酷いわ。二人ならわかってくれると思っていたのに。もしかして、またお姉様なの?私には応援するなんて言っておいて、こんな形で裏切るなんて酷いわ!」
システィーナに文句を言う為か飛び出して行ったロザリアを見ながらほぼ同時に二人のため息が重なった。
「システィーナの言った通りだ。」
「私達は間違えたのですね。」
とはいえ、今更システィーナに擦り寄る真似は許されないだろう。ロザリアを切り捨てたとして、この家に二人の居場所はまだあるだろうか。今になって契約書の内容に思いを馳せるアレクシスと、二人して仲良く途方に暮れた。
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