15 / 25
醜い争い
しおりを挟む
ロザリアがあれだけ楽しみにしていた夜会に出ることは出来なかった。第一王子クリストファーが彼女にドレスを用意できなかったからだ。彼は王子としての位を剥奪される前に、元婚約者候補に慰謝料を増額され、少しは余裕ある生活だったものがなくなってしまった。
「悪いが、君との関係はこれで最後だ。」
手紙だけを残して、ロザリアの前から去ったクリストファーは、平民として過ごすことを選んだ。
慰謝料を払い終えたので、王子として居座ることすら出来なくなったためだ。夜会に出られなくなったロザリアはクリストファーを追うが、すでに平民になった彼に彼女を養うことはできない。
「言っていることが違うじゃ無い!この嘘つき!」
「君が彼女にいらないことを言ったから悪いのだろう。君に用意したドレスを売らなければ、慰謝料が払えなくなって大変だったんだ。大体、私に色目を使ってきたのはそちらだろう。私が王子でなくなれば、此方を詰るんだから、嘘つきはどちらか、はっきりしているだろう。」
「だって……お姉様が悪いのよ。私に教えてくれなかったから。貴方のことだって、私にお似合いだって言うから。」
「システィーナ嬢の言ったのは嫌味だろうよ。出来損ないの二人だと、揶揄われたんだ。そんなこともわからなくて、よく王妃になりたいなんて願ったな。馬鹿か。」
「酷いわ。私、あのルイーズに勝てたと思ったのに。」
「あー、それが君の本音なんだな。セドリックを随分下に見ていたものね。私は内心ヒヤヒヤしていたよ。いくら平民になる前とはいえ、不敬は貴族にも適応されるのに、ってね。」
「そんなこと、知っていたなら教えてよ。私を見て嘲笑っていたなんて、性格が悪いわよ?」
「そんなことは、常識だから態々言わないよ。本当に君はあの家で何をしていたんだい?システィーナ嬢を見ていれば、周りが悪いとは思わないね。侯爵家の教師はちゃんとしているよ。偶々君に宛てがわれた教師の質が悪かったとはとても思えない。まあ、それをいうなら私も同じだが。結局は本人の質によるんだ。私がセドリックに敵わなかったように、君もシスティーナ嬢には敵わないんだよ。」
「私が姉に勝てないのは貴方のせいでしょう?」
「男を見る目がなかった君のせいだよ。」
ロザリアは語彙がなくなれば、同じ言葉を繰り返し、ひたすらモノを投げる。
「うるさいうるさいうるさい!」
彼女が投げた置物は、運悪くクリストファーではなく、いつの間にか後ろに控えていた男にぶち当たった。
「はい、そこまで。」
二人の醜い争いは、一旦終了した。置物が命中したのは、侯爵家の護衛。後ろにはシスティーナもいる。
「それにしても、こんなに離れているのにシスティーナを狙うなんて本当に君はブレないね。」
偶々だと思うけれど確かにシスティーナの方向に及んだロザリアの攻撃には驚いた。
「悪いが、君との関係はこれで最後だ。」
手紙だけを残して、ロザリアの前から去ったクリストファーは、平民として過ごすことを選んだ。
慰謝料を払い終えたので、王子として居座ることすら出来なくなったためだ。夜会に出られなくなったロザリアはクリストファーを追うが、すでに平民になった彼に彼女を養うことはできない。
「言っていることが違うじゃ無い!この嘘つき!」
「君が彼女にいらないことを言ったから悪いのだろう。君に用意したドレスを売らなければ、慰謝料が払えなくなって大変だったんだ。大体、私に色目を使ってきたのはそちらだろう。私が王子でなくなれば、此方を詰るんだから、嘘つきはどちらか、はっきりしているだろう。」
「だって……お姉様が悪いのよ。私に教えてくれなかったから。貴方のことだって、私にお似合いだって言うから。」
「システィーナ嬢の言ったのは嫌味だろうよ。出来損ないの二人だと、揶揄われたんだ。そんなこともわからなくて、よく王妃になりたいなんて願ったな。馬鹿か。」
「酷いわ。私、あのルイーズに勝てたと思ったのに。」
「あー、それが君の本音なんだな。セドリックを随分下に見ていたものね。私は内心ヒヤヒヤしていたよ。いくら平民になる前とはいえ、不敬は貴族にも適応されるのに、ってね。」
「そんなこと、知っていたなら教えてよ。私を見て嘲笑っていたなんて、性格が悪いわよ?」
「そんなことは、常識だから態々言わないよ。本当に君はあの家で何をしていたんだい?システィーナ嬢を見ていれば、周りが悪いとは思わないね。侯爵家の教師はちゃんとしているよ。偶々君に宛てがわれた教師の質が悪かったとはとても思えない。まあ、それをいうなら私も同じだが。結局は本人の質によるんだ。私がセドリックに敵わなかったように、君もシスティーナ嬢には敵わないんだよ。」
「私が姉に勝てないのは貴方のせいでしょう?」
「男を見る目がなかった君のせいだよ。」
ロザリアは語彙がなくなれば、同じ言葉を繰り返し、ひたすらモノを投げる。
「うるさいうるさいうるさい!」
彼女が投げた置物は、運悪くクリストファーではなく、いつの間にか後ろに控えていた男にぶち当たった。
「はい、そこまで。」
二人の醜い争いは、一旦終了した。置物が命中したのは、侯爵家の護衛。後ろにはシスティーナもいる。
「それにしても、こんなに離れているのにシスティーナを狙うなんて本当に君はブレないね。」
偶々だと思うけれど確かにシスティーナの方向に及んだロザリアの攻撃には驚いた。
108
あなたにおすすめの小説
我慢しないことにした結果
宝月 蓮
恋愛
メアリー、ワイアット、クレアは幼馴染。いつも三人で過ごすことが多い。しかしクレアがわがままを言うせいで、いつもメアリーは我慢を強いられていた。更に、メアリーはワイアットに好意を寄せていたが色々なことが重なりワイアットはわがままなクレアと婚約することになってしまう。失意の中、欲望に忠実なクレアの更なるわがままで追い詰められていくメアリー。そんなメアリーを救ったのは、兄達の友人であるアレクサンダー。アレクサンダーはメアリーに、もう我慢しなくて良い、思いの全てを吐き出してごらんと優しく包み込んでくれた。メアリーはそんなアレクサンダーに惹かれていく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
隣の芝生は青いのか
夕鈴
恋愛
王子が妻を迎える日、ある貴婦人が花嫁を見て、絶望した。
「どうして、なんのために」
「子供は無知だから気付いていないなんて思い上がりですよ」
絶望する貴婦人に義息子が冷たく囁いた。
「自由な選択の権利を与えたいなら、公爵令嬢として迎えいれなければよかった。妹はずっと正当な待遇を望んでいた。自分の傍で育てたかった?復讐をしたかった?」
「なんで、どうして」
手に入らないものに憧れた貴婦人が仕掛けたパンドラの箱。
パンドラの箱として育てられた公爵令嬢の物語。
私の妹…ではなく弟がいいんですか?!
しがついつか
恋愛
スアマシティで一番の大富豪であるマックス・ローズクラウンには娘が2人と息子が1人いる。
長女のラランナ・ローズクラウンは、ある日婚約者のロミオ・シーサイドから婚約解消についての相談を受けた。
能ある妃は身分を隠す
赤羽夕夜
恋愛
セラス・フィーは異国で勉学に励む為に、学園に通っていた。――がその卒業パーティーの日のことだった。
言われもない罪でコンペーニュ王国第三王子、アレッシオから婚約破棄を大体的に告げられる。
全てにおいて「身に覚えのない」セラスは、反論をするが、大衆を前に恥を掻かせ、利益を得ようとしか思っていないアレッシオにどうするべきかと、考えているとセラスの前に現れたのは――。
メリザンドの幸福
下菊みこと
恋愛
ドアマット系ヒロインが避難先で甘やかされるだけ。
メリザンドはとある公爵家に嫁入りする。そのメリザンドのあまりの様子に、悪女だとの噂を聞いて警戒していた使用人たちは大慌てでパン粥を作って食べさせる。なんか聞いてたのと違うと思っていたら、当主でありメリザンドの旦那である公爵から事の次第を聞いてちゃんと保護しないとと庇護欲剥き出しになる使用人たち。
メリザンドは公爵家で幸せになれるのか?
小説家になろう様でも投稿しています。
蛇足かもしれませんが追加シナリオ投稿しました。よろしければお付き合いください。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる