22 / 25
何で私が
しおりを挟む
「お兄様!」
やっぱり持つべきものは便利な兄である。すぐに出してもらえると思っていたのに、数日かかったのは気に入らないが、兄は憮然としながらも、迎えに来てくれた。
歯切れ悪く兄が話した内容は到底信じられないものだった。
「どうして私が!」
「……元はといえば、お前が!勝手に第一王子に不用意に近づいたからだろうが!何故貴族家に生まれて彼のことを知らないんだ!知らなかったじゃ、許されないんだぞ。騙されたって言っても、システィーナだって俺だって父だって、皆で反対しただろう。そこで調べることだってできた筈だ。やれ、姉が反対しているから、羨ましいんだわ、なんて、本当の馬鹿はお前だと思ったよ。
これはまたシスティーナのせいにするだろうが、残念ながら侯爵家の総意だ。お前がいくら納得しなくても、身分を剥奪し、修道院に送られる。すぐ出てこれる、なんて甘い期待は捨てろ。これは決定事項で父ではない、母が侯爵家当主として決定した。」
兄の剣幕に、聞くことしかできなかったロザリアだが、何度決定したと言われても、そう言って本当は助けてくれるつもりなんでしょ?って思っていた。
だけど、父が勝手に言っていることではなくて、母が言ったことならば、もしかしたら本当に、何もかも終わってしまうんじゃないかと言う気持ちになった。
「嫌よ、そんなの。」
はらはらと涙を流しても前のようにハンカチの一つも出さない兄。兄は兄でそれどころじゃないのだが、ロザリアからは兄がロザリアを見捨てる気であるのだと思った。
「どこの修道院になるか、わかる?」逃げるのは修道院に移送されるその時しかない。こうなったら最後まで足掻いてやるわ。ロザリアは頼りにならない父と兄に捨てられるぐらいなら、こちらから捨ててやる。あの感じでいくと、兄も保身の為に、ロザリアを説得し、修道院に送るまでが、課されているのだろう。
システィーナが相手ならば、こんな気も起きなかったけれど、兄ならば、逃げるチャンスは絶対にある。逃げた先は、ひとまず、私のファンの一人に連絡を取って匿ってもらおう。
ロザリアは自分が花畑脳である自覚がない。第一王子とのことで親切にも、苦言を呈してくれた男性のことを、第一王子に嫉妬した自分のファンだと思い込んでいた。初対面でも、女性については覚えなくとも、男性なら家名と爵位は覚えている。
確か……シイド侯爵家のマルクス様だったわね。顔はぼやんとしか覚えてないけれど中々の美丈夫だった筈。
「最後に迷惑をかけた人に手紙を書きたいの。」
兄にしおらしく伝えると、紙とペンを持って来てくれると言う。
「また来る」と言って、兄が帰って行った後で、ロザリアは未だ気持ち悪い笑みを浮かべていた。
やっぱり持つべきものは便利な兄である。すぐに出してもらえると思っていたのに、数日かかったのは気に入らないが、兄は憮然としながらも、迎えに来てくれた。
歯切れ悪く兄が話した内容は到底信じられないものだった。
「どうして私が!」
「……元はといえば、お前が!勝手に第一王子に不用意に近づいたからだろうが!何故貴族家に生まれて彼のことを知らないんだ!知らなかったじゃ、許されないんだぞ。騙されたって言っても、システィーナだって俺だって父だって、皆で反対しただろう。そこで調べることだってできた筈だ。やれ、姉が反対しているから、羨ましいんだわ、なんて、本当の馬鹿はお前だと思ったよ。
これはまたシスティーナのせいにするだろうが、残念ながら侯爵家の総意だ。お前がいくら納得しなくても、身分を剥奪し、修道院に送られる。すぐ出てこれる、なんて甘い期待は捨てろ。これは決定事項で父ではない、母が侯爵家当主として決定した。」
兄の剣幕に、聞くことしかできなかったロザリアだが、何度決定したと言われても、そう言って本当は助けてくれるつもりなんでしょ?って思っていた。
だけど、父が勝手に言っていることではなくて、母が言ったことならば、もしかしたら本当に、何もかも終わってしまうんじゃないかと言う気持ちになった。
「嫌よ、そんなの。」
はらはらと涙を流しても前のようにハンカチの一つも出さない兄。兄は兄でそれどころじゃないのだが、ロザリアからは兄がロザリアを見捨てる気であるのだと思った。
「どこの修道院になるか、わかる?」逃げるのは修道院に移送されるその時しかない。こうなったら最後まで足掻いてやるわ。ロザリアは頼りにならない父と兄に捨てられるぐらいなら、こちらから捨ててやる。あの感じでいくと、兄も保身の為に、ロザリアを説得し、修道院に送るまでが、課されているのだろう。
システィーナが相手ならば、こんな気も起きなかったけれど、兄ならば、逃げるチャンスは絶対にある。逃げた先は、ひとまず、私のファンの一人に連絡を取って匿ってもらおう。
ロザリアは自分が花畑脳である自覚がない。第一王子とのことで親切にも、苦言を呈してくれた男性のことを、第一王子に嫉妬した自分のファンだと思い込んでいた。初対面でも、女性については覚えなくとも、男性なら家名と爵位は覚えている。
確か……シイド侯爵家のマルクス様だったわね。顔はぼやんとしか覚えてないけれど中々の美丈夫だった筈。
「最後に迷惑をかけた人に手紙を書きたいの。」
兄にしおらしく伝えると、紙とペンを持って来てくれると言う。
「また来る」と言って、兄が帰って行った後で、ロザリアは未だ気持ち悪い笑みを浮かべていた。
95
あなたにおすすめの小説
能ある妃は身分を隠す
赤羽夕夜
恋愛
セラス・フィーは異国で勉学に励む為に、学園に通っていた。――がその卒業パーティーの日のことだった。
言われもない罪でコンペーニュ王国第三王子、アレッシオから婚約破棄を大体的に告げられる。
全てにおいて「身に覚えのない」セラスは、反論をするが、大衆を前に恥を掻かせ、利益を得ようとしか思っていないアレッシオにどうするべきかと、考えているとセラスの前に現れたのは――。
隣の芝生は青いのか
夕鈴
恋愛
王子が妻を迎える日、ある貴婦人が花嫁を見て、絶望した。
「どうして、なんのために」
「子供は無知だから気付いていないなんて思い上がりですよ」
絶望する貴婦人に義息子が冷たく囁いた。
「自由な選択の権利を与えたいなら、公爵令嬢として迎えいれなければよかった。妹はずっと正当な待遇を望んでいた。自分の傍で育てたかった?復讐をしたかった?」
「なんで、どうして」
手に入らないものに憧れた貴婦人が仕掛けたパンドラの箱。
パンドラの箱として育てられた公爵令嬢の物語。
私の妹…ではなく弟がいいんですか?!
しがついつか
恋愛
スアマシティで一番の大富豪であるマックス・ローズクラウンには娘が2人と息子が1人いる。
長女のラランナ・ローズクラウンは、ある日婚約者のロミオ・シーサイドから婚約解消についての相談を受けた。
メリザンドの幸福
下菊みこと
恋愛
ドアマット系ヒロインが避難先で甘やかされるだけ。
メリザンドはとある公爵家に嫁入りする。そのメリザンドのあまりの様子に、悪女だとの噂を聞いて警戒していた使用人たちは大慌てでパン粥を作って食べさせる。なんか聞いてたのと違うと思っていたら、当主でありメリザンドの旦那である公爵から事の次第を聞いてちゃんと保護しないとと庇護欲剥き出しになる使用人たち。
メリザンドは公爵家で幸せになれるのか?
小説家になろう様でも投稿しています。
蛇足かもしれませんが追加シナリオ投稿しました。よろしければお付き合いください。
婚約者の不倫相手は妹で?
岡暁舟
恋愛
公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。
我慢しないことにした結果
宝月 蓮
恋愛
メアリー、ワイアット、クレアは幼馴染。いつも三人で過ごすことが多い。しかしクレアがわがままを言うせいで、いつもメアリーは我慢を強いられていた。更に、メアリーはワイアットに好意を寄せていたが色々なことが重なりワイアットはわがままなクレアと婚約することになってしまう。失意の中、欲望に忠実なクレアの更なるわがままで追い詰められていくメアリー。そんなメアリーを救ったのは、兄達の友人であるアレクサンダー。アレクサンダーはメアリーに、もう我慢しなくて良い、思いの全てを吐き出してごらんと優しく包み込んでくれた。メアリーはそんなアレクサンダーに惹かれていく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
突然倒れた婚約者から、私が毒を盛ったと濡衣を着せられました
景
恋愛
パーティーの場でロイドが突如倒れ、メリッサに毒を盛られたと告げた。
メリッサにとっては冤罪でしかないが、周囲は倒れたロイドの言い分を認めてしまった。
(完結)あぁ、それは私の彼ではありません!
青空一夏
恋愛
腹違いの妹はなんでも欲しがる『くれくれダコス』。幼い頃はリボンにぬいぐるみ、少し成長してからは本やドレス。
そして今、ダコスが欲しがっているのは私の彼だ。
「お姉様の彼をください!」
これはなんでも欲しがる妹がどうなったかというコメディー。ありがちな設定のサラッと読める軽いざまぁ。全年齢向け。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる