怖い人だと知っていました

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第一部 ダリアとリュード

黒幕の目的

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「お帰りなさいませ。」
出迎えたダリアの元に一目散に走って来る姿は、まさしく大型犬。

「ちゃんと聞き出せましたわ。」
そう伝えると漸く安心したのか、いつもよりはくっついた状態で歩き始める。ここで歩きにくいとか文句を言うと、恐らく横抱きにされて運ばれてしまうので、何も言わずにいた。

「こちらもヒラリーという女の庶子がどの家にいるか突き止めた。」

「じゃあ、答え合わせですわね?」

まずは食事を済ませることにする。この食事の時間。少し前までは私に餌付けしたい旦那様にたくさん勧められて、食べ過ぎてしまう、ということが多かったのだけど、最近はすこし自重してくれている。

旦那様はソフィーが計画していたことを話すと、鼻で笑った。

「庶子と言うのがコンプレックスだったのでしょうね。あんなに蔑んでいた私になりたい、なんて面白いわ。」

「ダリアには他の誰もなれないさ。唯一無二だからな。そんなに軽い存在ではない。」パクパクと気持ちいいぐらいに料理を平らげていくリュードは、綺麗な所作で食事を終える。二つ名を知らなければ普通にかっこいい男なのだ。

リュードは、ソフィーに会いたいとは言わなかった。それは彼女の尋問をダリアが終えたことに対する尊重と、単に以降のことをダリアに知られないようにと言う意味があるのだが、ダリアはとても嬉しかった。自分の存在価値を、誰でもない夫が認めてくれたような気がして。

疲れていたのか先に寝入ってしまったダリアを起こさないように、リュードはソフィーのいる地下牢に降りる。

解毒剤という名の新たな毒の入手ルートを彼女はオラン公爵家の誰かから渡されたということだが、彼女の母ヒラリーのもう一人の庶子はベネーノ家にいた。

一応オラン公爵家に向かったものの、多分この件とは関わりはなさそうだ。多分ベネーノ家がオラン公爵家を陥れる為にした、ことなのか?

先程ダリアに聞いたように、邪魔な女と想定されたのは誰のことなのか。ヒラリーならその道筋でも違和感はないが、リュードの本能がずっと違和感を訴えている。だからといって、オラン公爵家や、ベネーノがダリアにどうして殺意を持つ?

「やっぱりあの男に聞いてみるしかないのか。」

気が乗らないだの、胡散臭いだの、言っていられない事態に、リュードは目を閉じてイライラを抑え込んだ。ダリアの寝顔を思い出せば、少しは落ち着くかと思ったのに、そのダリアに成り代わろうとしたソフィーにまた苛々した。

「お前がソフィーか。」

リュードの妻に成りたがっていたわりに、此方を見ることもできないようでただ震えている。ダリアは初対面でしっかりと挨拶したというのに。怖がる素振りを一切見せることのなかったダリアに、今思えば、あの場でリュードは彼女に好意を抱いたのかも知れなかった。

ソフィーはやはり庶子なのか、挨拶もしないままに、自分はダリアより有能であるとか、人を殺すことができる、とか支離滅裂な説明をしていたが、ダリアに散々壊された後なのか、これ以上益になる情報は得られなかった。

「そうか、それだけ有能なら、モスカント伯爵家を没落させる方法もすぐに考えられるかな。」

「簡単ですわ。ルチアに愚かな行為をたくさんさせて、社交界に放つのです。」
「愚かな行為?」
「ええ、人を殺させる、とかですね。そうしたら、流石に親も同罪になるでしょう?」

「ああ、良くわかった。君に手を貸した者の狙いがね。」



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