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説教
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「うちの息子はもう少し頭が柔らかいと思っていたわ。」
久しぶりに会ったと言うのに、呆れた様子な母は相変わらず辛辣だ。
「私に会いに来たと言うことは、真相に辿り着いたと言う話かと思えば、違うのでしょう?」
デイビスを乗り越えて、母の視線はアーサーに向けられる。アーサーは肯定を口にはしなかったが、とびきりの笑顔で応え、母は頭を横に振った。やれやれと言うように。
「やっぱり貴方にケイトは勿体なかったわね。彼女ならすぐに理解したと言うのに。」
母の侍女が、お茶を用意してくれる。香りが良くて美味しい。伯爵家でもお茶は出るが、こうしてゆっくりお茶を飲む時間は最近なかった。
「それで、貴方がどこまで到達できたか、教えてもらいましょうか。」
母にはここ最近起こったことと、浮かんだ疑念を話していった。時折挟まれる問いかけにはその都度説明を入れたが、聞き終わった後も、母は微動だにしなかった。
「それで……終わり?なら何もわかっていないのと同じじゃない。別邸の使用人達の背後に誰がいるかも、わかってないのでしょう?貴方の話したことは全て真実よね。実際に起きたことだし、それはわかってる。ただ貴方は人を信じすぎるわね。人にはそれぞれの思惑があって、皆自分の幸せのために生きてるの。何が正しいとか、そんなことは重要じゃない。自分がどうしたら、幸せになれるか、それが判断の基準になる。なら、どうしてあの時あの人はこうしたのか、わかるようになる。
なら、あの人達の行動にも何かの意味があるのよ。何故彼女達は伯爵家の宝を盗み、売ったのか。売った先はどこか。何故王家から物言いが入ったのか。
謎は放置すれば放置するほど、難しくなっていくの。当たり前だと思っていることも勘違いかもしれない。
貴方は前伯爵から爵位を受け継いだだけだけど、そこに落ち着くまでにも、たくさんの取捨選択があって、貴方は伯爵になってるの。
私はね、物事には全て然るべき理由があると思っている。一つ一つは些細に見える出来事も、色々な人の思惑があって、その人の立場によっては、正義も信念も見え方も異なるの。
貴方に今足りないのは、後一歩の行動力と、真っさらな状態で物事を見る目。
気がついているようだけど、アーサーも此方側よ。貴方には酷かもしれないけれど、貴方の側にいる人を怪しむ方がよいかもしれないわ。」
デイビスは母に久しぶりの説教を食らったが、あまりわかっていなかった。それすらも理解されているようで、デイビスは気まずくなってしまう。
「ケイトが前に言っていたのは、仲が良くない人が近づいてきたら、大抵は良くないことが起きる、ってことよ。疎遠だった人に肩を組まれたら気持ち悪いわよね。」
母の説教はそれからも続いたが、デイビスの頭は忙しく動き回っていた。どうして?と考え出したらキリがないと諦めていたこと全てをこの際掘り返しても良いのかもしれない。ケイトに関してのことだけではなく、母や父に関しても。
「王家はどうして伯爵家の宝を特定できたのでしょう。」
何代か前に賜ったものとは言ってもそんな貴族家はたくさんある。その全てを覚えているなんてできるのだろうか。
「それは、アレよ。王家がこの件に絡んでいるからよ。彼女達を唆した黒幕は王家だった、それだけ。」
「は?何故王家が、しがない伯爵家の宝を盗ませるのですか?」
「それは自分で考えなさいな。そのぐらいならすぐにわかるわよ。そうね、貴方の友人に王弟がいらしたわね。彼には多分聞いてもはぐらかされるだろうから、聞いても仕方ないけれど、彼の周りにいる人はどうかしらね。」
久しぶりに会ったと言うのに、呆れた様子な母は相変わらず辛辣だ。
「私に会いに来たと言うことは、真相に辿り着いたと言う話かと思えば、違うのでしょう?」
デイビスを乗り越えて、母の視線はアーサーに向けられる。アーサーは肯定を口にはしなかったが、とびきりの笑顔で応え、母は頭を横に振った。やれやれと言うように。
「やっぱり貴方にケイトは勿体なかったわね。彼女ならすぐに理解したと言うのに。」
母の侍女が、お茶を用意してくれる。香りが良くて美味しい。伯爵家でもお茶は出るが、こうしてゆっくりお茶を飲む時間は最近なかった。
「それで、貴方がどこまで到達できたか、教えてもらいましょうか。」
母にはここ最近起こったことと、浮かんだ疑念を話していった。時折挟まれる問いかけにはその都度説明を入れたが、聞き終わった後も、母は微動だにしなかった。
「それで……終わり?なら何もわかっていないのと同じじゃない。別邸の使用人達の背後に誰がいるかも、わかってないのでしょう?貴方の話したことは全て真実よね。実際に起きたことだし、それはわかってる。ただ貴方は人を信じすぎるわね。人にはそれぞれの思惑があって、皆自分の幸せのために生きてるの。何が正しいとか、そんなことは重要じゃない。自分がどうしたら、幸せになれるか、それが判断の基準になる。なら、どうしてあの時あの人はこうしたのか、わかるようになる。
なら、あの人達の行動にも何かの意味があるのよ。何故彼女達は伯爵家の宝を盗み、売ったのか。売った先はどこか。何故王家から物言いが入ったのか。
謎は放置すれば放置するほど、難しくなっていくの。当たり前だと思っていることも勘違いかもしれない。
貴方は前伯爵から爵位を受け継いだだけだけど、そこに落ち着くまでにも、たくさんの取捨選択があって、貴方は伯爵になってるの。
私はね、物事には全て然るべき理由があると思っている。一つ一つは些細に見える出来事も、色々な人の思惑があって、その人の立場によっては、正義も信念も見え方も異なるの。
貴方に今足りないのは、後一歩の行動力と、真っさらな状態で物事を見る目。
気がついているようだけど、アーサーも此方側よ。貴方には酷かもしれないけれど、貴方の側にいる人を怪しむ方がよいかもしれないわ。」
デイビスは母に久しぶりの説教を食らったが、あまりわかっていなかった。それすらも理解されているようで、デイビスは気まずくなってしまう。
「ケイトが前に言っていたのは、仲が良くない人が近づいてきたら、大抵は良くないことが起きる、ってことよ。疎遠だった人に肩を組まれたら気持ち悪いわよね。」
母の説教はそれからも続いたが、デイビスの頭は忙しく動き回っていた。どうして?と考え出したらキリがないと諦めていたこと全てをこの際掘り返しても良いのかもしれない。ケイトに関してのことだけではなく、母や父に関しても。
「王家はどうして伯爵家の宝を特定できたのでしょう。」
何代か前に賜ったものとは言ってもそんな貴族家はたくさんある。その全てを覚えているなんてできるのだろうか。
「それは、アレよ。王家がこの件に絡んでいるからよ。彼女達を唆した黒幕は王家だった、それだけ。」
「は?何故王家が、しがない伯爵家の宝を盗ませるのですか?」
「それは自分で考えなさいな。そのぐらいならすぐにわかるわよ。そうね、貴方の友人に王弟がいらしたわね。彼には多分聞いてもはぐらかされるだろうから、聞いても仕方ないけれど、彼の周りにいる人はどうかしらね。」
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