初恋は叶わないと知っている

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エミリー

恋人繋ぎ?

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「デートって何をしたらいいの?」
「そんなの、向こうに任せたら良いんじゃない?」
「でも、誘ったのはこちらなのに何もしないのも悪いかなって。」
「じゃあ、これとか、どうかしら。」

キャサリンと話をしていると、もう一人の友人クロエがお芝居のチケットを渡してくれる。

「これ、何?」
「今週末から始まるお芝居のチケットよ。先週までは悲恋物だったけれど、次は純愛物だって聞いたし、デートに丁度良いんじゃない?私、一緒に行きたかった人に振られたから、これ、あげるわ。」
クロエは歳の離れた男性に恋をしていて、あの手この手で婚約をもぎ取ろうとしている。
「ええ?悪いわ。貰えない。」
「良いのよ。貰って。どうやらあの人はお芝居は苦手みたいなの。このままでは、これはただの紙切れになってしまうわ。ね?貰ってくれたら、有り難いわ。後で感想をきかせてくれたら、良いから。」

半ば強引に押し付けられた形で、エミリーは芝居のチケットを手に入れた。

「でも、ルカってじっと座っていられるのかしら。」
「そんな、子どもじゃないから大丈夫よ。学園だって、ちゃんと授業受けてるでしょう。」

まあ、そうなんだけど。

「そもそも、二人だけで出かけたことはないの?」
「二人だけっていうのは、ないわ。やっぱり未婚の男女だし。侍女や護衛は必ずいるのだし。」
「その時はどうしてたの。」
「その時は……どうしてたかしら。ご飯を食べて、買い物して、甘いものを食べて、お互いに行きたい店に行ったり……」
「それ、デートじゃない?」

キャサリンに言われて、たしかに言葉にすると、充分デートだと気づく。けれど、今までのはあくまで友人としての距離感だから、やっぱりデートではないと言えよう。

「でも、恋人同士のものじゃないから、ドキドキもしなかったし、キャサリンに言われるまで、デートだなんて、思いもしなかったわ。」

話を聞いていたクロエが何やら笑っている。

「甘い雰囲気にしたいなら、そのデートの間、ずっと手を繋いでいたら、良いんじゃない?それだけで、友人の距離感ではなくなるでしょう?」
「え?それだけで?でも、手を繋ぐぐらいなら、女の子同士でもよくするじゃない?」
「ええ、でも、相手は男性よ?意識したことはないルカみたいな相手でも、ドキドキするんじゃないかな。」

エミリーは自分の手をじっと見つめた。それでもそれだけでどうにかなるかしら。

「小さい頃は手を繋いで遊んだこともあるわよ?」
「じゃあ、違いがわかるから、よりドキドキできるんじゃない?あ、そうだ。恋人繋ぎって知ってる?より密着した繋ぎ方があるのよ。」

クロエはいつか、好きな人としたい繋ぎ方だと言って、色々な繋ぎ方を教えてくれた。

エミリー自身は半信半疑で聞いていた。そんなことぐらいで友人の壁が取り払われたりするかしら?と。

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