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エミリー
友人のありがたい助言
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「結局、あれは何だったのかしら?」
「さあ?」
さっきまで、ローエル公爵令息が、こちらを親の仇でも見るように睨みつけていたのだけれど、用事を済ませている間に帰ってしまったようだ。
エミリーは元婚約者のこういった表情を見るのは実は初めてだったりする。婚約期間は短かったが、彼はいつも穏やかな表情を浮かべていたからだ。
あの平民女性のことに関しては感情的にはなっていたが。もしかすると、エミリーに対しては他所行きの顔で、本来なら今の彼が元々の彼なのではないか。少し前までは無駄に傷ついていたけれど今はそうでもない。全く薄情とは思うが、婚約をなかったことにしてからは、一時期であれ、彼を大切に思っていたことすら、おぼろげになるぐらい、彼に対して関心も興味もなくしてしまった。
エミリーとルカが親友だとはいえ、二人にも別々の友人はいる。二人きりでずっといれば婚約者でもないのに、と知らない人から不名誉な噂を流されたりするからだ。それでも今はお試し期間であり、エミリーはルカと一緒にいる時間は前より増えていた。
「最近、よく一緒にいるけれど、とうとう婚約するの?」
「婚約するなら気心の知れた人」論者の、キャサリンは、自身も幼馴染と婚約している。彼女の場合、エミリー達とは違い、初対面から相手側が彼女にずっと愛を囁き続けているため、幼馴染でいられたのも、向こう側の執念の結果のようなものだ。
「うーん、まだそんな気配はないわね。」
「気配…エミリーは恋愛したいの?」
「そんな……我儘を言うつもりはないのよ。ただ政略結婚といえど、後継を作ったりしなくてはいけないから、ルカが相手だと、その、変な感じにならないかな、と思っただけ。」
「嫌いじゃないなら苦痛も、マシだとは思うけれど、確かに甘い雰囲気にはなりそうにないわね。それなら、こちらから仕掛けてみるのはどう?甘い雰囲気を出してみるの。デートでもしてみれば良いんじゃない?それで反応をみれば良いのよ。」
「デートかぁ。それで、何かわかるかしら。」
「勿論よ。デートだっていうのに、緊張感がなかったり、反応がいまいちなら、エミリーは幼馴染との婚約は無理なんだってわかるでしょ?今は互いに候補でしかないんだから、別の誰かを想定して、離れることだってできるわよ?男はルカだけではないのだし。
エミリーさえ良ければ何人か男性を紹介できると思ったのに、ルカとばかり一緒にいるから婚約が決まったのかと、焦ったわよ。」
「紹介?」
「そう。エミリーは人気あるんだよ?私の友人だって言ったら紹介してほしいって人、いたもの。」
キャサリンが言うのは、以前お世話になった先輩の手伝いとして、生徒会の雑用をしていた時のこと。
「あの時、見られていたのね。」
手伝い、と言ったものの、実際は仕事が多すぎて大した戦力にはならなかった。先輩は、喜んでくれていたけれど、申し訳なかったのを覚えている。
「ええ、あの時、一緒に働いていた生徒会の人なんだけどね。一生懸命に働くエミリーが可愛いな、って思ったらしいわよ。」
キャサリンはそう言うが、その可愛いは、子供が背伸びして難しいことをやろうとする時に周りが感じる可愛い、みたいなもので、女性としての魅力とか、そう言う意味ではないと思う。
「そういう他の選択肢もあるのだから、失敗を恐れずにルカに向き合ってきなさい。」
エミリーはキャサリンの言葉に頷いて、どうやってデートをすれば良いか、考えることにした。
「さあ?」
さっきまで、ローエル公爵令息が、こちらを親の仇でも見るように睨みつけていたのだけれど、用事を済ませている間に帰ってしまったようだ。
エミリーは元婚約者のこういった表情を見るのは実は初めてだったりする。婚約期間は短かったが、彼はいつも穏やかな表情を浮かべていたからだ。
あの平民女性のことに関しては感情的にはなっていたが。もしかすると、エミリーに対しては他所行きの顔で、本来なら今の彼が元々の彼なのではないか。少し前までは無駄に傷ついていたけれど今はそうでもない。全く薄情とは思うが、婚約をなかったことにしてからは、一時期であれ、彼を大切に思っていたことすら、おぼろげになるぐらい、彼に対して関心も興味もなくしてしまった。
エミリーとルカが親友だとはいえ、二人にも別々の友人はいる。二人きりでずっといれば婚約者でもないのに、と知らない人から不名誉な噂を流されたりするからだ。それでも今はお試し期間であり、エミリーはルカと一緒にいる時間は前より増えていた。
「最近、よく一緒にいるけれど、とうとう婚約するの?」
「婚約するなら気心の知れた人」論者の、キャサリンは、自身も幼馴染と婚約している。彼女の場合、エミリー達とは違い、初対面から相手側が彼女にずっと愛を囁き続けているため、幼馴染でいられたのも、向こう側の執念の結果のようなものだ。
「うーん、まだそんな気配はないわね。」
「気配…エミリーは恋愛したいの?」
「そんな……我儘を言うつもりはないのよ。ただ政略結婚といえど、後継を作ったりしなくてはいけないから、ルカが相手だと、その、変な感じにならないかな、と思っただけ。」
「嫌いじゃないなら苦痛も、マシだとは思うけれど、確かに甘い雰囲気にはなりそうにないわね。それなら、こちらから仕掛けてみるのはどう?甘い雰囲気を出してみるの。デートでもしてみれば良いんじゃない?それで反応をみれば良いのよ。」
「デートかぁ。それで、何かわかるかしら。」
「勿論よ。デートだっていうのに、緊張感がなかったり、反応がいまいちなら、エミリーは幼馴染との婚約は無理なんだってわかるでしょ?今は互いに候補でしかないんだから、別の誰かを想定して、離れることだってできるわよ?男はルカだけではないのだし。
エミリーさえ良ければ何人か男性を紹介できると思ったのに、ルカとばかり一緒にいるから婚約が決まったのかと、焦ったわよ。」
「紹介?」
「そう。エミリーは人気あるんだよ?私の友人だって言ったら紹介してほしいって人、いたもの。」
キャサリンが言うのは、以前お世話になった先輩の手伝いとして、生徒会の雑用をしていた時のこと。
「あの時、見られていたのね。」
手伝い、と言ったものの、実際は仕事が多すぎて大した戦力にはならなかった。先輩は、喜んでくれていたけれど、申し訳なかったのを覚えている。
「ええ、あの時、一緒に働いていた生徒会の人なんだけどね。一生懸命に働くエミリーが可愛いな、って思ったらしいわよ。」
キャサリンはそう言うが、その可愛いは、子供が背伸びして難しいことをやろうとする時に周りが感じる可愛い、みたいなもので、女性としての魅力とか、そう言う意味ではないと思う。
「そういう他の選択肢もあるのだから、失敗を恐れずにルカに向き合ってきなさい。」
エミリーはキャサリンの言葉に頷いて、どうやってデートをすれば良いか、考えることにした。
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