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逃亡の助け
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「クララ、いよいよだわ。いよいよ。もう少しで私達、自由になれるのよ。」
レニエ公爵家の庭園で、二人の令嬢が優雅にお茶を飲んでいる。話の内容は物騒なものだったが、それを聞いている者や、ましてやそれを咎める者などいない。
クララは親友の言葉に、彼女の本気度を理解した。
少し前から囁かれ始めた、彼女と婚約者である王太子殿下の不仲には、殿下が最近お気に入りの男爵令嬢が関わっている。
正直不仲は最初からだが、わざわざ第三者である男爵令嬢を挟むには、噂を流した者にとって、何らかの思惑があるのだろう。
「クララ、私に力を貸してくれて、ありがとう。貴女がいなければ、私はこの国に使い潰されていたわ。貴族の娘の義務ばかり考えて、我慢して我慢して、私が私でなくなっていた。私に多くの可能性を見せてくれてありがとう。貴女に会えて良かったわ。」
クララは出会った頃の彼女の疲れた表情を思い出す。次期王妃として注目を集めていた彼女は、あまりの周りの無能さに心が荒んでしまっていた。
クララは伯爵令嬢とされているが、この国の貴族ではない。叔母が嫁いだ国に留学してきただけで、卒業後は、祖国へ戻る。
クララは、優秀な彼女の可能性を、わかりやすく伝えただけだ。決意したのも、行動を起こしたのも彼女だ。
彼女の能力があれば、この国を離れても充分生きていける。だからこそ、この国の王家に目をつけられ、搾取されて来た。
留学して初めて気がついた。この国に未来はない。クララばかりでなく、留学生は総じて同じ印象を受けるようだ。
まず、王族があまりにも無能だ。何も考えていないだけではなく、考えるのは自分の仕事ではないとさえ、信じている。ここ数年の王家による政策は、全てアレクサンドラ・レニエが発案し、進めたものだ。国王や王妃、王子は仕事をせずに毎日遊んでいて、顔色の悪い王子の婚約者が忙しく駆け回る。
クララは、彼女に、新しい世界を見せてあげた。何より、クララの尊敬する異母兄が、アレクサンドラを気に入ったので、どうにか策を講じたのだった。
とはいえ、男爵令嬢はクララの仕込みではない。あんなに頭の悪い女性は駒になり得ない。あの頭の悪さは害悪にしかならない。
留学が終わったら、すぐに国を出るから男爵令嬢がどちらを選ぶのか、確かめることは叶わないだろう。
誰よりも身を粉にして働いていた彼女を失ったこの国がどうなろうと、知ったことではない。
クララは、近日中に出国できるように、面倒なことを一気に片付けることにし、その場を後にした。
訪れた先には、先客がいた。クララもよく知る男だ。
「褒美はいつ頃いただけるのでしょうか。」
「全てが終わったら。私が出国して、彼女の安全が確保できたならすぐにでも。」
クララが協力を頼んだのは、頭の悪い男爵令嬢ではなく、その婚約者の男爵令息だ。無論、彼に婚約者に対する情はない。
クララは彼を祖国に連れ帰りたい。彼の商才は大したものだ。
「彼女はやはり私の顔すら覚えていなかったようです。弟が相手でもどうにかなりました。
寧ろ、地味な自分より弟の方がタイプではあったのでしょう。未だにどちらと結婚するか悩んでいる、というのですから。」
クララは彼の言う地味が、何を指しているのかわからない。彼は最初から大層美しい顔を隠して生活していたに過ぎないのだから。
「弟さんにも、褒美は必要かしら。」
「いえ、あいつには、既に王家から褒美は頂いていますので、必要ありませんよ。」
「なら、すぐにでも出られるの?」
「ええ、大丈夫です。今からでも出られますか。」
その日を境に、男爵令息と伯爵令嬢は姿を消した。しかし、そのことに気がついた者は誰もいなかった。
レニエ公爵家の庭園で、二人の令嬢が優雅にお茶を飲んでいる。話の内容は物騒なものだったが、それを聞いている者や、ましてやそれを咎める者などいない。
クララは親友の言葉に、彼女の本気度を理解した。
少し前から囁かれ始めた、彼女と婚約者である王太子殿下の不仲には、殿下が最近お気に入りの男爵令嬢が関わっている。
正直不仲は最初からだが、わざわざ第三者である男爵令嬢を挟むには、噂を流した者にとって、何らかの思惑があるのだろう。
「クララ、私に力を貸してくれて、ありがとう。貴女がいなければ、私はこの国に使い潰されていたわ。貴族の娘の義務ばかり考えて、我慢して我慢して、私が私でなくなっていた。私に多くの可能性を見せてくれてありがとう。貴女に会えて良かったわ。」
クララは出会った頃の彼女の疲れた表情を思い出す。次期王妃として注目を集めていた彼女は、あまりの周りの無能さに心が荒んでしまっていた。
クララは伯爵令嬢とされているが、この国の貴族ではない。叔母が嫁いだ国に留学してきただけで、卒業後は、祖国へ戻る。
クララは、優秀な彼女の可能性を、わかりやすく伝えただけだ。決意したのも、行動を起こしたのも彼女だ。
彼女の能力があれば、この国を離れても充分生きていける。だからこそ、この国の王家に目をつけられ、搾取されて来た。
留学して初めて気がついた。この国に未来はない。クララばかりでなく、留学生は総じて同じ印象を受けるようだ。
まず、王族があまりにも無能だ。何も考えていないだけではなく、考えるのは自分の仕事ではないとさえ、信じている。ここ数年の王家による政策は、全てアレクサンドラ・レニエが発案し、進めたものだ。国王や王妃、王子は仕事をせずに毎日遊んでいて、顔色の悪い王子の婚約者が忙しく駆け回る。
クララは、彼女に、新しい世界を見せてあげた。何より、クララの尊敬する異母兄が、アレクサンドラを気に入ったので、どうにか策を講じたのだった。
とはいえ、男爵令嬢はクララの仕込みではない。あんなに頭の悪い女性は駒になり得ない。あの頭の悪さは害悪にしかならない。
留学が終わったら、すぐに国を出るから男爵令嬢がどちらを選ぶのか、確かめることは叶わないだろう。
誰よりも身を粉にして働いていた彼女を失ったこの国がどうなろうと、知ったことではない。
クララは、近日中に出国できるように、面倒なことを一気に片付けることにし、その場を後にした。
訪れた先には、先客がいた。クララもよく知る男だ。
「褒美はいつ頃いただけるのでしょうか。」
「全てが終わったら。私が出国して、彼女の安全が確保できたならすぐにでも。」
クララが協力を頼んだのは、頭の悪い男爵令嬢ではなく、その婚約者の男爵令息だ。無論、彼に婚約者に対する情はない。
クララは彼を祖国に連れ帰りたい。彼の商才は大したものだ。
「彼女はやはり私の顔すら覚えていなかったようです。弟が相手でもどうにかなりました。
寧ろ、地味な自分より弟の方がタイプではあったのでしょう。未だにどちらと結婚するか悩んでいる、というのですから。」
クララは彼の言う地味が、何を指しているのかわからない。彼は最初から大層美しい顔を隠して生活していたに過ぎないのだから。
「弟さんにも、褒美は必要かしら。」
「いえ、あいつには、既に王家から褒美は頂いていますので、必要ありませんよ。」
「なら、すぐにでも出られるの?」
「ええ、大丈夫です。今からでも出られますか。」
その日を境に、男爵令息と伯爵令嬢は姿を消した。しかし、そのことに気がついた者は誰もいなかった。
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