だって姉が眩しかったから

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やっぱり娘はおかしくて 母視点

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精霊の愛し子とは異なり、精霊王の愛し子の存在は、いつもある訳ではない。

平和の時は、精霊達で事が足りるから。精霊達の力ではどうしようもなくなった時に、精霊王の愛し子は現れる。

私の娘はただの姉が大好きなだけの普通の子だったのに。精霊王による「覚醒」が行われた後、レイチェルの様子は急に変わってしまった。

傍目には、癇癪を起こさなくなった少し大人になった少女に映るだろう。レイチェル付きの侍女によれば、精霊の姿が見えるようになった為に眩しさが軽減されたらしい。

長年愛娘の顔に浮かんでいた眉間の皺は、あの日を境に見ることは無くなった。


「精霊達があれだけ眩しかったのは、私の所為だったみたい。皆、精霊王にアピールするために、眩しく光を発していたらしいの。私が近くにいると、条件反射で光らせなきゃ、と思っていたのね。」

レベッカにとっては、喜ぶべき成長だといえる。レイチェルも、今では落ち着いて、奇行などは鳴りを潜めている。

「何が不満とかはないのよね。何だか不思議な感じというか……落とし穴があるんじゃないかしら、と勘繰ってしまうのよね。だってレイチェルなのよ。サマンサならいざ知らず、あのレイチェルがおとなしくなるなんて。」

最近本格的にレベッカ付きの侍女になったクロエは笑って、「そろそろ親離れが近づいているんじゃないですか。」などという。

「なら、良いんだけどね。」

使用人達の微笑ましく笑う顔に、子離れを寂しく思う母として、見られている事に気づいている。だけど、多分そう言ったことではなく、何か嫌な予感がしている。

精霊を鷲掴みにして、投げていたレイチェル。考えるよりも先に手の動く彼女はいつも、周りの予想の斜め上を行く。


「侯爵家の力で何とかフォロー出来ることなら良いけれど。」

どちらにしろ、精霊信仰の観点からも、罰当たりには違いない。精霊を慈しみ敬うどころか、暴力的な交流しかしていないのだから。

レベッカの心配をよそにレイチェルは厨房に入り浸っている。

表向きは、「カイにお菓子を作ってあげたい。」「で、本当は?」

「精霊にも食べさせて、私の願いを聞いてもらおうかなって。……前はほら、姿が見えなかったから、手当たり次第に掴んでいたけれど、今なら見えるでしょう?一度でいいから、お姉様との間に彼らをいれずに話してみたいわ。」

「サマンサについている精霊達を力付くで排除する気ね?」

「いいえ、お願いするのよ。……だっていつも邪魔なんだもの。私のお姉様なのに!」

しつこい追求に、レイチェルは本音を見せる。

レベッカはレイチェルの本質が全く変わっていない事にホッとして、侍女と一緒にレイチェルを止める。

やっぱり人間は簡単には変わらない。





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